私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「在来植物 高知嶺北F 」 山中直秋

いつもお世話になっている山中直秋さんが作った本「在来植物 高知嶺北F」。

山中さんが、高知県嶺北地域の野山に根を張る在来植物を探して道々を歩き、コツコツと撮影した写真が全5冊にまとめられています。これはそのうちの4冊目、8月から9月編です。ちょうど今の季節にいいなあと思い、こちらを購入しました。

ページを開くと「星みたいな形のあの黄色い花は、“ヒメキンミズヒキ”という名前だったのか!」とか「地面を這うように葉を巡らせていたのは、“スベリヒユ”っていうのか!」と、まるで大発見をしたような、懐かしい友達に会ったような気持ちになります。

これだけの植物と出会うために、山中さんは一体どれだけの時間を費やしてきたのでしょう。

いつも庭先から、新しく見つけた植物のことや今取り組んでいることを話してくれる山中さん。それはそれは楽しそうで、私は元気をもっています。

山中さん、素敵な本をありがとうございます!

 

*山中さんのこの本は、土佐町の青木幹勇記念館で購入することができます。
(青木幹勇記念館:〒781-3401 高知県土佐郡土佐町土居437 TEL.0887-82-1600)

 

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ポリぶくろ、1まいすてた」 ミランダ・ポール文 エリザベス・ズーノン絵  藤田千枝訳 さ・え・ら書房

7月1日から始まったレジ袋有料化。大量のプラスチックごみ削減に対する貢献度はささやかなものだとも聞きますが、意識改革のとっかかりとしては有効なのではないかな、と思います。

ポリぶくろ(プラスチックバッグ)は便利なふくろです。けれどもすてられたポリ袋を食べた動物が死んでしまったり、庭に埋めたら草が生えなくなったり、大量の蚊の発生の原因になったりと様々な問題を引き起こしています。できるだけ使用しないことはもちろんですが、すでにあるポリ袋はどうすればよいのか?

ゴミにするのではなく、リサイクルすることで、環境改善に貢献するだけでなく、女性の収入の道を切り開き、女性の地位の向上の一助となった活動がありました。

ガンビア共和国(西アフリカ)のンジャウ村から始まったポリ袋のリサイクル活動は、近隣の住民の環境問題への関心を喚起し、公共図書館開館にも繋がったそうです。 小さな取り組みが、大きな流れを生み出すことにつながることを示してくれる絵本です。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「シュナの旅」 宮崎駿 徳間書店

「シュナの旅」は、宮崎駿さんがチベットの民話「犬になった王子」を元に描いた短編漫画。「風の谷のナウシカ」と同時期、1983年に出版されています。どうしてもナウシカと重ねて読んでしまうのですが、宮崎さんの根底に流れるものは、いつも揺るぎないのだとあらためて感じます。

黄金色の穀物の種を探して西の果てへと旅に出たシュナが、人の愚かさや醜さ、生きる厳しさと出会いながら何度も立ち上がり、自分の信じるものへと向かって歩いていく。

市場で売られていた少女・テアに出会い、最後、生きる希望を見出すシュナの姿は静かに胸に響いてきます。

「行くか 行かぬか それは そなたが決めることだ」

旅の途中に出会った老人が話す一言が心に残ります。

宮崎駿さんにとってこの漫画をアニメーション化するのがひとつの夢だったそうですが、今からでもぜひその夢を実現させてほしいです。

 

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私の一冊

川村房子

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「嘘をつく器  死の曜変天目」 一色さゆり 宝島社

ミステリーはあまり読まないけれど、NHKの朝ドラの影響で「曜変天目」の器ってどんなものだろうと思って読んでみた。

「曜変天目」とは、鉄分を多く含んだ釉薬を鉄釉というが、なかでも黒、黒褐、茶色といった釉調を持つ焼き物は、一般的に天目と呼ばれる。天目という名前は、中国浙江省天目山の禅院で使われていた什器を日本の禅僧が持ち帰ったというところから由来するらしい。うーん、なるほど、と思いながら読んでいくけれど、ひと月もすると、中国からきた焼き物位にしか覚えてないのが悲しい…。

京都鞍馬の山中にて、人間国宝間近と目された陶芸家西村世外の他殺体が見つかった。世外は「曜変天目」を完璧に作っていた。この幻の焼き物を巡る殺人事件を、世外の弟子である町子と保存科学の専門家大学助教授の馬酔木で、一転二転する殺人犯を追ってゆく。

ミステリーは、結果が知りたくて最後が一気読みとなり、夜のふけるのも忘れてしまう。

ちなみに「馬酔木と書いてアシビと読む」。はじめて見る名字で、何度もページを前に戻して確認した。パソコンですぐに漢字がでるのでスマホで調べると、あせびの木の事でした。

 

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私の一冊

川村房子

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「流浪の月」 凪良ゆう 東京創元社

2020年本屋大賞受賞作品。

普通ではなかったけれど、楽しく幸せに暮らしていた更紗。父親が亡くなり、誰かに頼らなければ生きていけない母親は出て行った。伯母の家に引き取られ、言葉にだして訴えることもできない窮屈な暮らし。

更紗9才、公園で時間をつぶす毎日。その公園には、いつも本をよんでいる大学生の文(フミ)がいた。帰りたくなくて、アパートについて行った。自分というものをわかっていて、理性で必死に抑えているフミ。自分が自分らしくいられる毎日に癒されていく更紗。

何をされたわけでもないのに、誘拐事件となりつかまってしまい「フミー、フミー」と叫ぶ姿がネットで流され、大人になってもつきまとう。

世間の片隅でひっそりと暮らす、フミとの運命のような再会。

慎ましやかな女性がいいと云われていた昭和世代に育った私。「私らあにはわからんけんど、今の時代こういう生き方もあるんじゃねえ」と友人は言う。

心に残る作品です。

 

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私の一冊

川村房子

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「少年と犬」 馳星周 文藝春秋

2020年直木賞受賞。新聞をみて買おうと思っていたら、大大大の犬好き友人から「欲しい」とラインがあり、それならと私は本屋大賞を買って、交換して読むことにした。

傷つき、悩む人々と、彼らに寄り添う犬を描く感涙作!

東日本大震災のあと、岩手県から西へ西へと向かう一匹の犬。

男と犬  犯罪に手を染めた男性
泥棒と犬 窃盗団の外国人男性
夫婦と犬 壊れかけた夫婦
娼婦と犬 体を売って男に貢ぐ女性
老人と犬 元猟師で死期まじかの老人
少年と犬 震災のショックで言葉も出なくなった少年

その時々に出会う人々に寄り添い心癒すが、目はいつも西の方角をむいている。

読む章ごとに胸がつまり泪を誘います。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「神社に秘められた日本史の謎」 古川順弘  宝島社

「金刀比羅宮が神社本庁を離脱」

しかも理由が神社本庁に不信感を抱いたのが原因だというニュースを新聞で読み、信仰って何?神社って何?と思っていた時にこの本が目に留まり、買ってみました。

一回サーッと読んだだけなので、深く理解した確信はありませんが、仏教とも関わりを持ちつつ、秩序を作り上げる為に利用されてきた歴史が綴られています。

そして昭和戦後、国立的だった神社組織の解体、自らが利益追求をしなくてはならない民間企業のような立場に突然追い込まれた歴史。そのような経緯で組織されたのが神社本庁。全国の神社(一部の有力神社は属さず)を包括する宗教法人・神社の頂点です。

聖書を基準とする信仰との歴史の違い・遺伝子レベルに組み込まれた信仰との差を実感しました。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治 新潮社

「境界知能」ということ言葉を知っていますか?

これはIQ(知能指数)70~84のことをさす言葉です。現在「IQ70未満」を知的障害とされていますが、1950年代の一時期「85未満」とされていた時期もあったそうです。けれどもIQ85未満の人の人口比率が16%と多くなるため「IQ70未満を知的障害とする」ということになりました。

現代の社会生活を営むには100前後のIQがないとしんどいそうです。IQ70~84に相当する人たちは「知的障害」ではないので支援される対象にはありませんが、実際の社会生活では様々な困難に直面します。

本書では、児童精神科医でもある著者が非行少年たちと出会う中での気づきを「境界知能」に焦点を当て、そこから導き出された考察と支援の方法が記されています。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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この本には日本を代表する詩人の方々のうたが収められているのですが、そのうちのひとつ、谷川俊太郎さんの「生きる」という詩がとても好きです。

私が初めてこの詩に出会ったのは、確か小学校6年生のときでした。ページの上に並んだ日本語の奥向こうに、どこまでも澄んだ空が続くような清々しさを感じたことを覚えています。(そのときは何と表現したらよいかわからなかったのですが、今思えば、こういう気持ちでした。)

知っている方も多いと思うのですが、ここに紹介します。

 

生きる  谷川俊太郎

生きているということ
今生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

 

それから過ごした何十年という時間のなかで、ふと、このページを開くときが何度かあり、そのたびに私は6年生のときに感じた気持ちを思い出していました。これまでの道のりにあったのは清々しさだけではありませんでした。でもそれでも、今、自分は生きている。生きていることはやっぱり素晴らしいことなのだ、という実感をこの詩は与えてくれます。

 

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私の一冊

川村房子

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「さよなら、ビー玉父さん」 阿月まひる 角川文庫

今年4度目の宝塚。孫の夏休みのフォローで10日間。今回も嫁さんの本棚から借りました。

奥田狐(コン)の安アパートに、離婚で別れた息子の遊が訪ねてきた。妻と離婚した時、テレビ、ネット、携帯すべての娯楽品と縁を切って、大阪から奈良に引っ越したのだった。

2年後、8歳になった遊が1人で、電車を乗り継ぎ、たずねてきた。自分しか愛せない、とことんダメな父と、その父親を好きで子どもでいることを諦めきれない健気な息子。

他にも味のある登場人物の中で、親子のきずなを深めていく。

ダメ親父にこんな思いがあるのかと思わされたり、「あーあ」と落胆したりですが、どこまでもいい子の遊に心あたたまります。

 

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