私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

石川拓也

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「べリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く」 エリオット・ヒギンズ 筑摩書房

 「国家は平然と嘘をつく。
その虚偽を真っ先に暴いたのは大手メディアではなく、
オンラインに集う無名の調査報道集団だった。
世界中が注目する彼らの活動を初公開する。」

これがこの本の謳い文句。

べリング・キャットとは「猫に鈴をつける」という意味。ネットが趣味で、平凡なサラリーマンだった著者のエリオット・ヒギンズは、ある時「アラブの春」の現地映像を見て疑問に思う。

写っているのは反政府軍のメンバーで、だがしかしその町は政府軍・反政府軍が共に「制圧した」と宣言していた場所だったのだ。

嘘をついているのはどっち?

そこでヒギンズはネットを駆使して真実に迫っていく方法をひとつづつ試していく。反政府軍の映像を丹念に見て、それを地図に書き起こし、双方が制圧を主張する町の地図と丁寧に比較していく。

武器はyoutube, facebookなどのSNS, そしてGoogle map や Google Earth。彼の調査は全てネットの中で進行していく。

結果は、Google 上で確認した地図から反政府軍の映像は間違いなく本物であるということが証明され、政府軍の嘘が明るみに出ることになりました。

これを皮切りに、ヒギンズはネット調査報道という手法を確立していきます。

極めつけは、2014年に起きた「マレーシア航空17便撃墜事件」。

旅客機がウクライナ上空で何者かに撃墜され乗客283人と乗組員15人の全員が死亡した事件です。

撃墜したのは何者か?

ウクライナは「自国ではない。犯人はロシアまたは親ロシア派軍部である」と主張。

ロシアは「犯人はウクライナである。ウクライナ軍戦闘機2機が旅客機の周囲をまとわりつくように飛行していたという証拠がある」と主張。

真っ向から対立するものとなりました。

この争いは国際的に大きなニュースになったものですし、結論をご存知の方も多いと思いますので敢えて書きません。

しかしこの事件の真実を追及する数多くの手の中に、このべリング・キャットがとても重要な役割を果たしていたのです。

本書はその一部始終が明らかにされていきますが、その手法は言うまでもなく非常に現代的・最先端のものであります。

詳細はもちろん読んでいただきたいのですが、時代の変化を如実に感じられる一冊です。

 

 

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私の一冊

石川拓也

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「本屋で待つ」 佐藤友則/島田潤一郎 夏葉社

 広島県庄原市の書店「ウィー東城店」。

著者の佐藤さんはこの町の本屋さんの店主さんです。

お父さんから受け継いで店長に就任し、赤字続きだったこのお店を「どうしたら黒字化できるか」というところから奮闘がスタート。

その奮闘の中、佐藤さんは気づいていく。黒字化するということは地域のお客さまにどれだけ求められるかということであって、地域の本屋さんの本質とは「地域の頼みごとが集まる場所」だということ。

その頼みごとを可能な限り解決することこそが書店の役割であり、そういう場所として書店が機能した時には、お店は地域コミュニティのハブのような場所になっていく。

その結果として、引きこもりの若者や心が弱った人などが、「ここで仕事ができないだろうか」と相談に来る場所となり、そしてそこで仕事を始める若者たちは、社会との接点を「ウィー東城店」の仕事の中で取り戻していく。

店長の佐藤さんは、教えたり指導したりというよりかは、彼ら若者が自分のペースで立ち上がるのを「待つ」ことを大事にしている。

だからタイトルは「本屋で待つ」なのです。

巻末にも書かれていたことですが、僕自身もここ10年ほどで感じている仕事の質の変化を感じさせる一冊です。

つまり、より早くより多く仕事し稼いだものが勝つという旧来の資本主義的弱肉強食の世界から、「周りをどれだけ幸せにできるか」という競争に世界はシフトしてきている。見えない速度で、だが着実な変化です。

ここにもひとつその証左が。そしてそれを実践している人たちがいる、それを実感できる物語です。

 

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私の一冊

山門由佳

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「日本百名宿」 柏井壽 光文社

旅行好きの両親の影響で、幼い頃から旅行が好きです。最近は好きというよりも、安定した日常生活を送るためには不安定な旅は必要不可欠なようにも思われます。

旅にでると、鈍っていた感性や感覚、細胞までが一気に目を覚まし、見聞きするすべてのものに敏感に反応し、吸収するのを実感します。

旅を彩る重要要素のひとつにどこに泊まるかの『宿』の存在。 行き先を決めてから宿を決めることが多いかもしれませんが、まず『宿』を決めて行き先が決まる、そんな旅もいいかもしれません。

年間250日以上ホテルや宿に滞在する著者の宿の率直な感想は『宿』へのあふれる愛を感じずにはいられません。 そして情景がありありと浮かぶ文章はまるでわたし達も同行しているような…。そんな気分にさせてくれます。 あぁ旅って、いいなぁ〜

 

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私の一冊

田岡三代

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「食べてうつぬけ鉄欠乏女子」 奥平智之 主婦の友社

「僕、サプリ飲んでるんですよ~」

久しぶりに会ったら、生き生きと顔色もとても良くなった、若い方にこの本を教えて頂きました。

「テケジョ」?何それ?

「鉄欠乏女子」のことを、省略して「テケジョ」。今時ですねぇ~。先ずそこから、時代の流れについていけてない自分を振り返ります。

いかに「鉄分」が足りていないか、「鉄分」が足りないとどうなるのか、分かりやすく教えてくれているこの本に刺激され、食事作りを改善しているところです。

もうそろそろ、効果が出るはず!

 

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私の一冊

山門由佳

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「ワンピースのおんな」  宇壽山貴久子,写真  すまあみ,文   草思社

ワンピース。 少女の頃、夏は毎日ワンピースを好んで着ていました。

今でもはっきり憶えているフルーツの柄のワンピース、リボンのついた水色のストライプのワンピース、うすい黄色の水玉のワンピース…ワンピースは女の子をかわいくみせる。ワンピースは女の人を綺麗にみせる。ワンピースは女性を包み込んで優しい気持ちにさせてくれる。かわいくも、かっこよくも、フォーマルにも、リラックスにも。 おなじワンピースでも、着るひとがちがえばその姿は全然ちがった印象になる。ワンピースは百変化する魔法のお洋服かもしれません。

子どもが生まれてからワンピースを着ていると、子どもたちはワンピースの中に潜り込もうとしてくる。 ワンピースをめくられたら…えらいこっちゃになるので、今はしばし素脚にワンピースはおあずけです。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「のせてのせて」 松谷みよ子 著,  東光寺啓 絵 童心社

1969年に出版され、もう50年以上読み継がれている「のせてのせて」。私が子供の時、母に何度も読んでもらい、私も3人の子供たちに繰り返し読んだ一冊です。

「まこちゃん」が赤い自動車に乗って出発、途中で「ストップ!のせてのせて」とうさぎやくま、ネズミの大家族が加わっていきます。その姿が何とも楽しげ。

ところが一転、ページは真っ暗。トンネルに突入して…さあ、どうなるか?

トンネルを抜けた先、「でた!おひさまだ!」という言葉に子供たちが笑顔になるのが好きでした。その顔見たさにこの本を読んでいたくらい。

何回も読んで知っているはずなのに、お話の世界を何度も行ったり来たりできる子供の姿が何とも愛おしい。

大切な一冊です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「六人の噓つきな大学生」 朝倉秋成  KADOKAWA

優秀な就活生六人の関わりを描いた作品。それぞれの個性が際立ち、秀でた描写力で迫ってくる。

伏線に更に伏線が重ねられている、油断大敵である。読み手は作者の意図通り、翻弄されるがままとなる。

最終選考に残った6人の優秀な就活生の中に、自分以外を排除して内定をとりつけようと画策する卑劣極まりない犯人がいる。その6人の中で唯一入社できた一人が入社6年目にして、ふとしたきっかけで、真の犯人探しを始める。

その奮闘と精神状態を綿密に描くことで、読者を混乱の渦に巻き込む。最終ページまで心がざわつく。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「みんなでこんにゃくづくり」 菊池日出夫 福音館書店

土佐町で暮らし始めた頃、近所のおばあちゃんが家にやってきて「こんにゃく作ったき、食べや」とビニール袋を手渡してくれた。袋の中には、ソフトボール位の大きさの丸いものが幾つも入っていてずっしり重く、ほかほかと温かい。

これがこんにゃく!丸い

それまでこんにゃくといえば四角い板こんにゃくしか知らなかった。さらに、おばあちゃんは「そのまま薄く切って、刺身みたいにしょうゆをちょこっとつけて食べてみや」という。

刺身!

こんにゃくは煮物にしたり炒めたり、火を入れて食べるものだと思っていた。何と生で食べられるとは!その日の夕ごはんに食べたこんにゃくの刺身は絶品で、子供たちの箸も止まらない。あっという間に平らげた。

絵本「みんなでこんにゃくづくり」は、おじいちゃんやおばあちゃんとこんにゃく芋を育て、みんなでこんにゃくを作るお話だ。土佐町で暮らし始める前から、どこか遠い所の話だと思いながらページをめくって眺めていた「こんにゃくづくり」。それをリアルにしている人が現れたのはかなりの衝撃だった。

後日、おばあちゃんがこんにゃくを作るところを見せてもらった。掘っておいた芋をぐつぐつ茹でて皮を剥き、ドロドロになるまでミキサーにかける。浅木の灰を水と混ぜ、布で漉した灰汁を入れると立ち現れるこんにゃくの香り。混ぜ続けると次第に固まってくる。まるで化学実験だ。杉やヒノキの灰汁では固まらないと聞いて、この地の人たちの試行錯誤が見えるようだった。

土が足元にある暮らしは実にゆたかだ。身の回りにあるものを工夫して使って何でも作る。手間も時間もかかるが、この地で引き継がれてきた知恵に、この場所で生きるという強い意志を感じる。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「小さなまちの奇跡の図書館」 猪谷千香 ちくまプリマー新書

図書館運営で一番の課題は「読まない人」「本に関心のない人」に、図書館に来てもらうことです。その課題を克服し、「読まない人も行く図書館」となり、市民に愛される図書館となった鹿児島県指宿市立図書館。

どこにでもあるような、小さな町のさびれた小さな図書館が、ライブラリー・オブ・サ・イヤー他の名だたる賞を受賞する図書館に成長するまでの過程が丁寧に書かれた本書。市民の居場所となるための図書館づくり等を目的として図書館サービスを拡充させていく経緯は、とても興味深く参考になりました。

図書館学者ランガナタン博士の五法則「①本は利用するためのものである ②いずれの人にもその人の本を ③いずれの本にもすべてその読者を ④読者の時間を節約せよ ⑤図書館は成長する有機体である」にもあるように、図書館はすべての人にとって開かれ、必要とされている知識を提供する場所です。

そして地域のコミュニティースペースとして、人が安心して集える場所でなければなりません。そういう図書館を目指さねばと反省しつつ、伸び代はまだまだあると自分を鼓舞しながら読んだことでした。

 

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私の一冊

西野内小代

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「日本史を暴く」 磯田道史 中央公論新社

入荷パトロールに登録すること2回、やっと届いた。さすが人気歴史家さんです。

歴史上の人物や事柄を独自の現代語に変換・装飾してくれるので、とても日本史を身近に感じられる。この本も例に漏れず、古文書からの解説が楽しい!

例えば、鼠小僧は決して「義賊」ではなく、むしろ変態性の素質を秘めたコソ泥にしか過ぎなかった。幕末の会津藩主「松平容保」は「高須四兄弟」とうたわれ、兄弟皆優秀であったらしい。

何故、高須藩のようなわずか三万石の小藩から、このような幕末史を動かした人材がごっそりと搬出されたのか、古文書と出会い子育ての雰囲気を垣間見たと紹介されている。

歴史に色付けをして未来へと誘ってくれる。大河ドラマの見方が変わってくる。

 

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