私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「ごみを出さない気持ちのいい暮らし」 高砂雅美ほか著 家の光協会

ゴミ出しをするたびに、もっとゴミを減らせないものか、と反省します。でも実践にはなかなか結びつかないのが、我ながら情けない…。

そんな時に目に留まったのがこの本。ゴミ出しに正解なんてないし、できること、できないことは人それぞれ。とにかく無理なく、楽しく、心地よく、できることから始めればよいのですよ、と6人の方の取り組みが紹介されています。

「自分がごみと決めたものが、ごみになる。捨てる前にもう一度だけでも使う」「物を買わずになんとかならないかなぁていつも考えています」そんな言葉と共に豊富な写真付きで、楽しいから続けてこられたゴミ減らしの工夫のあれこれが提示されています。

これなら私も始められる、と思えるものがいくつかあり、只今実践中です^^v

 

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私の一冊

山門由佳

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「母の友」 福音館書店

今年創刊70周年(!)という「母の友」。何度となく見聞きしたことあったはずのこちらの雑誌を手にとったのは実ははじめてかもしれません。 リニューアルされた表紙のデザインに惹かれてページをめくりました。
さっそく目に飛び込んできた、

子育ての真っ最中、多くの母たちはもともとの自分の容量をはるかに超えるミッションをたくさん抱えて、つぎはぎと無限マラソンのような毎日を過ごしている。

との一文を読んだだけで、引き込まれました‥ なぜ!こんなに!わたしの!気持ちが!わかるんですか〜〜〜 と一気に「母の友」に友情が芽生えてしまいました。

さらに 、

けれど、母親の献身は「当たり前」視されるため、積み重ねた努力がねぎらわれケアされる機会は少ない。それどころか、子供を通信簿扱いして、減点方式で「よい母親かどうか」ジャッジする意地悪な目線が、内に外にうようよ漂っている。

との一文に心緩んで泣いてもいいですか??

育児の幸福や誇りと背中合わせのプレッシャーのなか、もう母は十分に頑張っている。

‥完全に号泣!!!!

【もう十分に頑張っている】 ほんとはそんなふうにねぎらわれて、頭のひとつやふたつよしよしされたい自分の願望に気づきました。

母だから、妻だから、娘だから、 と強く心を持たないといけない場面が多すぎて。 ほんとはわたしだって甘えたり、お世話されたりしたいんですよ。 きっとそうおもってらっしゃる世の母、いっぱいおられるはずです。

 

 

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私の一冊

西村まゆみ

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「ロザムンドおばさんの贈り物 」 ロザムンド・ビルチャー著, 中村妙子訳 朔北社

先入観なしに図書館で勧めていただき、手に取ったこの本は、7つの短編の物語でした。

イギリスの作家ロザムンド・ビルチャーの女性らしい細やかな描写と、何が始まるのかというワクワク感で読んでいるうちに素敵な結末を迎える。どの物語も 日常起こりそうであるけれど、 奇跡のような心に残る終りを迎える。

7の短編の中で、私は「忘れられない夜」が好きだ。おっちょこちょいの主人公に私がオーバーラップして、ドキドキハラハラ。ある夜の来客にとまどい、アッパレなおもてなしにヤッターとハイタッチしたい。とても共感できる物語でした。

他の6つの物語も、 登場人物がそれぞれに個性的で魅力がありました。起こってしまった事件にも、 心あたたまるストーリーがあり、 一気に引き込まれてあっと言う間に一冊読み終えました。

忙しい方も午後のひとときのティータイムに、手に取ってごらんになってはいかがでしょうか?

 

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私の一冊

西野内小代

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「教室がひとりになるまで」 浅倉秋成 KADOKAWA

フラッガーの方程式」の著者の出世作です。
同じクラスの高校生が次々と自殺していくというショッキングな出来事から始まる。その事件に関わっているのが特殊能力の持ち主であるクラスメート。この高校では、代々「特殊能力」を受け継いでいくという伝統が確立されている。

自殺した一人の「特殊能力」をたまたま受け継がされてしまった(受取人となってしまった)、普通であったはずの男子生徒がキーマンとなって解明に挑むストーリー。
現在流行している「特殊設定ミステリー」のカテゴリー。この題名を見た時、一クラスの教室が、犯人一人を残してみんな死んでしまう内容か…?あな恐ろしや!と思った。そうではなく、教室を擬人化してのタイトルだった。

みんな一緒、友達は多いほど幸せ、といった先入観、強迫観念、学校におけるカーストにメスを入れる内容だった。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「おつかれ、今日の私。」 ジェーン・ス― マガジンハウス

 男が敷居をまたげば七人の敵あり、ということわざがあるけれど、勿論女にだって、ひとたび外に出れば七人の敵はいる。

精根こめて仕事しても報われるとは限らないし、家事をどんなに頑張っても褒められることはまずない。だれも自分を慰撫してくれないなら仕方ない、自分で自分に「お疲れ。今日もよく頑張ったね!」と声掛けしてみる。するとちょっと肩の力が抜け、気持ちがすこし浮上する気がする。

それでも、まだ落ち込んで、暗いトンネルをさまよっているようだったら、この本を開いて何篇か拾い読みしてみるのもよいかも。 いつもは皮肉の利いた辛口エッセイが多い筆者が、読んでくれる人の隣に座って、中の良い友だちの背中をさするように書こう、と決めて書いたという文章は、すっと体に馴染むのでした。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「くいしんぼうのあおむしくん」 槇 ひろし作前川 欣三画 福音館書店

「ごめんね、ごめんね」と言いながら何でも食べてしまう、くいしんぼうのあおむしくん。

最初はまさお君の帽子を食べるくらいだったのが、おやつや紙屑、おもちゃやクレヨンもむしゃむしゃ。食べても食べても「おなかがすいたよう!」と騒ぎ続ける。

さらに近所のゴミを食べ(町は綺麗になる)、挙句の果てには木も町も人も食べ尽くす。まさおに「やめろ!」と怒られては「ごめんなさい、お腹がすくと本当にだめなの」とシクシク。

お話であることは分かっていながら、「あおむし君、ちょっといい加減にしなさいよ」と言いたくなってきます。

それでも食べることをやめられず、しまいにはあっちの国からこっちの国まで残らずペロリ。最後には、まさおくんまで食べてしまう。

この本は母がよく読んでくれた一冊で、幼心にちょっと不思議なお話だなと感じていました。が、今は若干ぞくっとする話だなと思っています。

「ごめんなさい」と言いつつ自らの食欲を満たすため、やりたい放題。でも食べても食べても満たされない。だからもっともっとと食べ続ける。周りの人を巻き込んでいることにも気付かず、いや、うっすら気付いていたとしても今更やめられない…。本人もしんどそうなのに…。本人も分からない、そうせざるを得ない何かが心の内にあるのでしょうか。

あおむし君を本当の意味で満足させるものは何でしょう。そもそも、本当の意味の満足ってどういうことなんだろう?

お話の最後は「食べられたまさお君も両親も家も町も全部あおむし君のお腹の中にあって、実はみんなあおむし君のお腹に入っている。だから空は青いんですよ」というオチ。「え?そういうことなの?」とその意外性にも驚かされます。

私にとって、思案のしどころある一冊です。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「がっこうのてんこちゃん」 ほそかわてんてん 福音館書店

新一年生の女の子が、小学校の上級生らしいお姉さんに「ねえ、学校にいつまで行かんといかんが?もう飽きたき保育園に戻りたい」。それに対して「もう保育園には戻れんが。ず~っと小学校に行かんといかんがで。小学校が終わっても中学校、高校に行くき12年は学校があるがで!」とお姉さん。

それを聞いた時の女の子のなんとも情けない、悲しそうな表情だったことでしょう。ニヤけそうな口元を引き締めながらも、心から同情したことでした。

この本の著者のてんてんさんも先の女の子同様、学校が大嫌いだったてんてんさんが「こんな学校だったらいいな」、と思う学校の話を書こうと思いできたのがこの物語です。

「みんな同じ」を目指すのではなく「ひとりひとり違う」からはじめてみたら、誰もが自分らしく楽に生きられて、相手のことも自分同様に尊重できるようになるのではないかしらね?

 

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私の一冊

西野内小代

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「フラッガーの方程式」 浅倉秋成 KADOKAWA

数学の公式を紐解く物語を類推させるタイトルですが、全く無関係。

フラッガーシステムとは「誰もが現実において、物語の主人公になれるシステム」であって、フィクションを現実世界に取り込むプロジェクトのことらしい。

ある日、このフラッガーシステム開発プロジェクトの村田静山という男性に帰宅部の男子高校生がスカウトされる。そして、その申し入れを安易に受け入れてしまったばかりに彼の大混乱の一か月が始まる。

読み始めは支離滅裂のギャグテイスト、理解不可能だった。ひたすら我慢して読む。

無秩序のように思えた数々の事件が、実は重要な伏線だった。最後はきっちりと伏線を回収し着地する。

一風変わった構成ではあるが、後半は不可解な世界に引き込まれてしまう。不思議な本だった。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「発達障害の人が見ている世界」 岩瀬利郎 アスコム

「定型発達」という言葉を恥ずかしながら本書を読むまで知りませんでした。定型発達とはいわゆる普通の人=発達障害ではない多数派の人びとを意味する用語です。

学校や職場、地域の人たちと互いの意見や考え方を理解し、尊重し合いながら関係を築いていくことの難しさを感じることが時々あります。人と円滑にコミュニケーションをとることはなかなかに難しいことです。定型発達者同士でもそうなのですから、発達障害の人たちはもっと悩み、傷つき、苦しんでいるだろうことは想像に難くありません。

上手にコミュニケーションをとるために必要なことは定型発達者、発達障害者の区別なく「相手の見える世界」を想像すること。他人の「靴を履いてみる」ことかも?

相手を理解し、適した接し方をとれればコミュニケーションがスムーズになる例が具体的に示されていて、たくさんの気づきとヒントをもらえた本でした。

 

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私の一冊

西野内小代

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「百人一首 百人の物語」 辻井咲子 水曜社

一首には一つの解釈があるのみとずっと思っていた。違う感じ方をしてもそれは私が間違っているのであって、正解を覚えなくては…と長年思っていた。

時々こんな作品がどうして長く世に残っているのかと不思議に思うこともある。この本に出会い、長い年月を経る過程において、解釈は変化していく場合もあることを理解した。

それならば、自己流に解釈してもいいのではないか、と気軽に接することができるようになった。

百人一首の選者である藤原定家は、政治的な思惑や世間の評判を気にして選んだ可能性も考えられるそうだ。表現や解釈は自由と感じることにより、固まっていた思考がほぐされていく思いがする。

この本は、それぞれの作者とその歌を詠んだ時の状況も含め、その歌の背景を簡明に解説してくれる。

 

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