私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

藤田純子

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「牛をかぶったカメラマン」 レベッカ・ボンド 光村教育図書

この本はまさに、事実は小説より奇なり!でございました。

ロンドンの町にまだ馬車が走っていた頃、リチャードとチェリー兄弟が、鳥たちをできるだけ刺激せず自然体で撮影するために、様々なカモフラージュを自作したり、困難も危険も気転にサバイバルしたり、自分たちのわくわくを探求するまっすぐな心で成し遂げていった素晴らしい功績のお話です。

特になんとか工夫するという精神を大いに発揮して実現させていく行動力には、読んでいて彼らのわくわくが伝わりました。
本の最後には、実際の撮影風景も載せられていて「本当にこんなことをしてたんですね!」って。

実はここが一番好きでした。
やはり事実は、心に訴えるものがありますね。

藤田純子

 

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私の一冊

西野内小代

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「人は皆、土に還る 」 曽野綾子 祥伝社

カトリック教徒の曽野綾子さんの作品です。
援助の品を送った国には、そこがどんなに渡航に困難な地域でも必ず自らが赴き、ご自分の目で援助が正しい目的で使われているかどうかを確認されるというパワーの持ち主です。

そこらのエセ篤志家とは格が違います。作品にも説得力があります。

 

世話をし過ぎると成長しない植物、手厚く世話をしないと成長しない植物、そこの見極めが人間社会でも同様であると関連付けられています。

この本から実行してみた事があります。

落花生を植えてみました。やせた土地でもよく育つツートップらしいので…。

畑仕事初心者でも大丈夫かしら?

西野内小代

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私の一冊

石川拓也

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「空をゆく巨人」 川内有緒 集英社

噴火直前のマグマのようなエネルギーを感じる一冊です。

蔡國強さん(さい・こっきょう・ツァイ・グオチャン)といえば、現代アートの世界で知らない人はいないぐらい世界的評価を受けている芸術家ですが、彼が無名の若者だった頃から、とても力強いサポートをし続けていた実業家がいました。福島県いわきに在住の志賀忠重さんという方です。

この本は、そのふたりの出会いと絆を追ったもの。

一見、無茶と思えるような蔡さんのビジョンや計画を、志賀さんと、時にはいわきの人々と一緒に乗り越え実現させていく様子が詳細に描かれています。

蔡さんは、いわきの人々に支えられながらアート作品を具現化し、それが蔡さんが世界的に評価を受けるきっかけにもなったのですが、志賀さんをはじめとしたいわき陣も、「サポートしている」という感じでもなく、「一緒になって遊んで楽しんでいる」とでもいうような軽快さがあったようです。

何か大きなプロジェクトが、参加している人たちにとってはあんまり意味はわかんないんだけど、大きな熱気や大きな流れとなって実現に一気に向かう様子が爽快です。

得体の知れないものが実現しようとしているという感覚は、人々の助けを借りないと完成できないような大きなアート作品にとっては、参加する人々のひとつの強い理由になるのでしょうし、単純に楽しそうだなと思います。

蔡さんが世界を相手にぐいぐいと快進撃を続け、それとともに活動範囲もどんどん広がり、蔡さんの作品制作をサポートするいわきの人々も世界の美術館に赴いて制作を行う。現地の美術館関係者には「チームいわき」と呼ばれながら。

最高かよ、と唸ってしまう関係ですね。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ながい旅でした。」 砂浜美術館 編集・発行

「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です」

この本を作ったのは、高知県黒潮町にある「砂浜美術館」。

町に新しいハコモノを作るのではなく、もともとここにある海や砂浜、ここにある季節に沿った人々の営みや知恵を「作品」として、この環境そのものを美術館にしようという考えで砂浜美術館は生まれたそうです。
時は1989年、今から40年前。その考えにとても共感します。
40年もの間、この考えでやり抜いてきたことには並々ならぬ苦労もあったことでしょう。

今年のゴールデンウィークに訪れた黒潮町の砂浜美術館でこの本を購入しました。少し黄ばんだこの本を手にした時から、この本の持つ体温が伝わってくるようでした。本にはそういう力と役割があるように思います。

黒潮町の海に打ち上げられたものが紹介されていて、くじらの骨ややしの実、船のスクリューや気象観測器といったものもあります。

2枚目の写真はその中のひとつ「海流ビン」です。アメリカのブライアン君(当時11歳)がタンカーで働く人に頼んで太平洋側に流したもの。9ヶ国語でメッセージが書かれており、瓶の口はロウで固められて水が入らないように工夫されていたとのこと。16歳になったブライアン君からは「理科の実験で流した」と返事が届いたそうです。流れ着いたものにも物語があるのですね。

この本の中にこんな文章があります。

「海岸に流れ着いたものを、単なるゴミとしかとらえることのできない感性より、素敵な砂浜美術館の作品、そうとらえられる感性。それが私たちの求める姿です。」

私たちのそばにも「作品」となりうるものが、あちらこちらにあるのではないでしょうか。

鳥山百合子

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん」 エルサ・ベスコフ 作, 絵 福音館書店

お母さんのお誕生日の贈り物をブルーベリーとこけももにしようと考えたプッテ。森のあちらこちらを探したけれど見つからず、しょんぼりしていたところに現れたのは小人のおじいさん。その人はブリーベリー森の王様でした。森の動物たちや王様の子どもたち、こけもも母さんのおかげでブルーベリーとこけももがカゴいっぱい集まって、このお話は終わります。ページを開くたび、なんて美しい絵なのだろうと、ずっと眺めていたくなります。

いつのことだったか、お菓子の中に入っていたブルーベリーに気づいた娘が「あ、プッテが食べてたブルーベリー!」と言ったことがありました。
娘が大きくなった時、いつかどこかでこの絵本に再会することがあったら、プッテと友達だったことを懐かしく思い出したりするのかな。

絵本はそんな楽しみもつくってくれます。

鳥山百合子

 

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私の一冊

藤田純子

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「八月十五日に吹く風」 松岡圭祐 講談社

「軍人に限らず夫人や子どもを含む一般市民に至るまで、日本人は自他の生命への執着が薄弱である。軍部による本土決戦および一億総玉砕、一億総特攻に誰もが抵抗なく呼応している。本土決戦において婦女子を含め、非戦闘員が戦闘員となりうる。日本への上陸作戦は、米軍兵士に多大な犠牲が生じる。」

太平洋戦争時、アメリカの日本人についての分析としてこのように記された書類が、原爆投下の最終決定に大きく影響したようです。占領後も、死をも恐れぬ日本人の反撃を警戒していたアメリカ軍は、きびしい占領政策を実施しようとしていた。

後のイラク戦争終結後、米軍は治安維持部隊を組織し、ゲリラとの戦闘を続けたことと同様であったかもしれない。

しかし、ある報告により、進駐軍は見解を180度変え、日本を武力で制圧する方策はとらなかった。

その理由となる報告とは…。

1943年、キスカ島での人道を貫き5000人の救出を成し遂げた、一見弱々しくも見える木村昌福少将のとった作戦とは…。

これは実話であり、登場人物も全員実在する人々です。

この本はむごい戦争の事実と、その最中、重い任務と重責を負わされながらも戦わずして尊い命の救出を成し遂げた感動の一冊です。

藤田純子

 

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私の一冊

藤田英輔

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「おじさん図鑑」 なかむらるみ文, 絵 小学館

おじさん!の仕草や言葉には、長年社会を歩いてきた人生が詰まっています。
おじさん!は小さいことは気にしない。
いつだって自分が中心!

そのタフさと見切りの早さは、長年の経験が生み出した術。
おじさん!を見習い、たまには本能に赴くまま過ごしてみてはいかが?
おじさん!力に学ぼう!!

そうすれば気持ちは楽ですヨ。 E談(編集部注:Eとはこの本を紹介してくれた「Eisuke」のEと思われます)

 

筆者あとがき(31才時):自分が完全なおばさん!になった時、この本がどう見えるか楽しみです。世のおばさん!達、どう見えていますか?

藤田英輔

 

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私の一冊

藤原美穂

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「あたまをつかった小さなおばあさん」ホープ・ニューウェル 著, 山脇 百合子 絵

 

小学校の3年生くらいの時、楽しくて、本当に感心しながら読んだ本である。

おばあさんが、知恵を働かせ毎日を大切に過ごしている姿が浮かんで来て、とても面白く、ワクワクしながら読んだ事だった。

藤原美穂

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私の一冊

石川拓也

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「土佐の民話」 市原麟一郎 土佐民話の会

市原麟一郎さんは高知の宝だと思っています。

本当に長い年月、高知の民話を集めてまわり、この雑誌「土佐の民話」のように出版して次世代に残してくれています。

以前とさちょうものがたりにて、市原さんが収集した土佐町の民話を転載したいことがあり、ご本人にお電話したことがあります。

事情を説明すると快く了承していただきました。とても気持ちの良いやり取りをしていただいて感謝しています。

民話や神話を収集し、誰もがアクセスできるように出版するということが、後世の人間にとってどれほど大きなことか。

「人間を人間たらしめるのは物語だ」「人間のアイデンティティは物語によって作られる」などなど先人の言葉は完全な真理だと思っています。

そういえば、最近はまって観たドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」も最後は「物語」がキーワードになります‥が、ネタバレ注意でこれ以上は書きません。

話が思いっきり脱線しましたが、「神話や民話を、人が省みることがなくなる国は、そう遠くないうちに滅ぶ」とも言われています。

個人を超えて種として「私たちは、どこからどのように来たのか」ということがよくわかっている人こそが、「私たちはどこへ向かうのか」という問いにも良い答えを導き出せるのではないでしょうか。

 

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私の一冊

藤田純子

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「せんねんまんねん」 まどみちお著,工藤直子編 童話屋

「あなたとお会いできてよろこんでいます」が伝わりますように、と実は少なからず揺れている心を、とりなし、とりなし笑っていると、偽善的な笑顔ではないかと不安が混じり、沈黙が苦しい。

忘れていたのに突然思いにのぼったようなことまで口をついて出て、あれっ?と苦笑い。

つられたように笑ってくれるあなたには、寛大な心をフルに使わせてしまいました。

私の大好きなまどみちおさんの詩に、

いわなかったことは
いったことの
たいがい いつも
なんばいかだ

それに いったことは
たいがい いつも
いうまでもなかったことだ

この詩がとても心にしみる。

先日新しい出会いがありました。

注:「あなた」とは、初めて会った娘の彼氏のことです。

藤田純子

 

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