私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

藤田英輔

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「マッチと街」 マッチと街出版委員会 弘文印刷

パソコンのない時代に手描きで生まれた表現を感じ取ってほしい。マッチは店の名刺であり、広告であり、店主の憧れ、思いを表現したもの。

マッチのデザインは洗練された者ばかりでないが、この街の活気を支えていたことが伺い知れる。マッチ自体、遺産になりかけているが「あの頃」を想ってほしい。

1ページずつ開いて感じたことを声に出してみて。

ヘェーッ、ウワッ、オーッ、アハハ、エーッと言ってほしい。

でもね、よく通った店のマッチを見つけると、あの頃のあの時に瞬時に行けるんだ。とっておきの一張羅(わかる?)を着て(全身ね、いくつもないので、いつも同じ格好になるんだけどね)リキんでいたあの頃にね。

あの頃のあの時の友人達や同じ空間に居た人達、それぞれがそれぞれの生を一所懸命に過ごしてきただろうし、これからも続けていくのだろうね。

デザインに興味がある人には、呑む時のつまみの一品になりますよ。モノクロ写真も良いね。

藤田英輔

 

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私の一冊

式地涼

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「星の王子さま」 サン=テグジュペリ著 池澤 夏樹訳 集英社文庫

遠く離れた異星に一人で住む王子さまが、宇宙の星を回る中で地球を訪れる物語。厳密にいえば、その王子さまの体験談を地球に住む”ぼく”が聞くお話。

自らの星で大切にしていたバラとの喧嘩をきっかけに、世界へと旅に出た王子さま。いくつかの星を訪れますが、出会う人は独特の価値観を持つ変な大人ばかり。

花や動物も話せる世界観の上、王子さまの感性も天然なもので、終始ふわふわとした感覚に襲われます。

でも、ところどころに、とてつもない力を持った名言…強い思いが表現されています。

「それはね、ものごとはハートで見なくちゃいけない、っていうことなんだ。大切なことは、目に見えないからね」

出会いや別れ、価値観といった、人生のキーワードが散りばめられているこの作品。

これまで培ってきた、自分の人生観について考えさせられると言っても過言ではありません。

ファンタジーに包まれた雰囲気の中で現実を語る、そんな不思議な不朽の名作です。

式地涼

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ドミニック」 ウィリアム・スタイグ 評論社

大好きなウィリアム・スタイグの一冊。
「ドミニック」はいつも何かやりたくてムズムズしている一匹の犬。ある日、気持ちを抑えきれなくなって冒険に出かけます。最初の分かれ道に立っていたワニの魔女に「自分の運命を知りたいとは思わないかえ?」と聞かれます。この魔女は『現在とおんなじくらいはっきり、未来も見える』ワニなのです。

ドミニックは「もちろん、ぼく、自分がどうなるんだろうと思いますよ。でもなにが起こるのか、それがいつ起きるのか、自分で見つけだすほうが、ずっとすてきだと思うんです。ぼく、びっくりするほうが好きなんです」と言い、冒険の道を選びます。

自分はひとりしかいないので、分かれ道に立った時にどちらかひとつの道を選ぶことしかできません。選んだ後に、もうひとつの道を選んだら今どうなっていたかなと考えることもあるでしょう。でも、どちらを選んでも自分自身の選択であることに変わりがないのです。前を向いて自分の選んだ道を歩いていくドミニックの姿は、何度読んでもグッときます。

鳥山百合子

 

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私の一冊

藤田英輔

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「最終版 間違いだらけのクルマ選び」 徳大寺有恒 草思社

現在までの僕の所有車の内、大半は中古車を購入し、そして乗りつぶしてきた。現在では車両の販売で確固たる地位を築いているD社の軽バン(1970年製)。1980年頃、妻が乗っていたのだが、素朴な脚車をずっと置いて持っておきたかったなあととても後悔している。

その頃より少し前、友人達の大半が高性能なかっこイー、クーぺタイプを購入し乗り回していた。

僕は車より他のことに金を使いたくて、車代が安く軽く(燃費が良い)、そして小さい(駐車しやすい)軽四を選んだ。

その車で高知市のある店のまるで従業員のように、営業日の開店時間には、その店のカウンターに座っていた。路駐なので特にサイドミラーやワイパーなどが曲がったり折れたりのトラブルがあったが、車が動く限り通い続けた。

あんなにも一所懸命に夢中になったこと(時)があったことを「良い経験をした」と現在では思う。

金や行動で父や友人に迷惑をかけたけれど、義務感にかられ達成感を感じる日々を過ごしたことで「ブレーキをかける」ということを学んだ。

『僕の車の購入の仕方』

①その時に払える金→②その頃の目的、使用の方法、その他(好きだということ他)を勘案し→③購入する(満足はしないが納得する)

“損得で計らない。何か夢中になれるもの(こと)を持つと良いよ”

藤田英輔

 

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私の一冊

石川拓也

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MAGNUM LANDSCAPE」Ian Jeffrey Phaidon Press

敢えて説明するのも気が引けますが、”MAGNUM”は1947年から続く国際的な写真家グループです。

創設したのは報道写真家のロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デヴィッド・シーモアの4人。(現在は50人が所属)

メディアや印刷技術の発達と共に、彼らの写真は新聞や雑誌に載って世界中を飛び回り、「いま世界で何が起こっているのか」という理解を人々が深めるための一助になりました。

この写真集はそのマグナムの写真家が撮影した珠玉の「風景写真」を収めたもの。ニュースではないもの、と言い換えてもいいかもしれません。

どれもが世界の美しい瞬間を切り取った美しい写真なのですが、ふと「ぼくたちはこういう写真を通して『世界はこういうもの』という理解を掴んでいるのかもしれない」とも感じます。

何が言いたいかというと、そうやって作られたイメージは「世界のように見える何か」であって世界そのものではない、ということ。

現実に対峙して世界を把握することが、写真が氾濫する現代では大切な気がします。

 

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私の一冊

藤田純子

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「その日の天使」 中島らも 日本図書センター

中島らもさん。天下の灘高の在籍中からいわゆる不良で、アル中、薬物中毒をはじめ、やることなすことやり過ぎで危ない人、愚かな人というイメージが強い人。周りの人たちに心配や迷惑をかけつつ52才で急死した。

しかし、彼に魅力を感じる人は多い。

頭の良さと感受性の強さからくる言葉の展開のすごさ。すさまじい読書量ゆえの博識ぶり。

親しく付き合うと傷つけられてしまいそうだけれど、ここまでのしょうがなさはある種、さわやか、カッコイイとも認めてしまう魅力があります。

この本はらもさんの生い立ちや、人生の様々の場面でのエッセイ集。どんどん読めてしまいます。

藤田純子

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「食べ物記」 森枝卓二 福音館書店

私はこの写真集が大好きです。

世界中の食…、米、麦、野菜、肉、魚、保存食、市場…、世界中の人たちが料理したり食べたりといった食卓の風景が収められています。

子どもの頃から「美味しそうやなあ」と思いながらこの本を眺めては、世界はとても広いのだということをどこかで感じていたように思います。「行こうと思ったらどこへだって行けるんだ!」というワクワクが飛び出していくような感覚は今でも心の中にちゃんとあります。

この本をつくった写真家の森枝さんは、以前は戦争の写真を撮っていたそうですが、その仕事をするなかで最も印象に残ったことは「戦争という特殊な状況にあっても、人には日常の暮らしがある」ということだったそうです。
国境近くのゲリラ兵たちが畑で野菜を育て、難民の人たちは着の身着のままであっても多くの人が鍋だけは持っていた…。
食べることは、生きることと切り離すことができないのです。

また、食べることは楽しみでもあります。
今日の食事は何にしようか?どんな風に作ろうか?それとも食べにいこうか?誰と食べようか?

今、こうしている間にも世界中のどこかで、食べるものを育て、食事を作り、食べている人たちがいます。
頭の片隅にそのことを置いておいたら、毎日の食卓がいつもと少し違った風に見えてきます。

鳥山百合子

 

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私の一冊

式地涼

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「永遠の0」 百田直樹 講談社文庫

現代に生きる若者が、日本帝国海軍の航空兵であった祖父の知られざる過去に迫る物語。 司法試験に失敗し、ダラダラとした日々を送っていた健太郎。そんな時、フリーライターとして活動している姉の紹介で、第二次世界大戦時に戦死した祖父・宮部の過去を調べることに。 宮部と同じ軍隊に従事していた当時の人々に聞き込みを続ける中で、祖父の人物像が徐々に浮かび上がります。

「奴は海軍航空隊一の臆病者だった」 「勇敢なパイロットではなかったが、優秀なパイロットだった」 「宮部さんはすばらしい教官でした」 「国のためなら自らの命をも惜しまない」という軍国主義が美徳とされた時代背景の中で、誰よりも、何よりも死ぬことを恐れた宮部。しかし、戦況は悪化の一途を辿り…終戦間際には敵母艦への特攻で命を落とします。

なぜ、彼は誰よりも死を恐れたのか。誰よりも死を恐れた彼がなぜ、特攻という必死の道を選んだのか。

この小説でオススメしたいのは、以下の2つのポイントです。

ひとつは、航空兵・宮部の信念を貫く生き様。時に臆病者だと貶されながらも、まわりに流されない不屈の強さを持ち、また周りの人々もその影響を受ける様子が描かれています。

もうひとつは、第二次世界大戦における描写の細かさ。当時の戦い方、考え方、有名なミッドウェー海戦をはじめとする各戦況の詳細を時系列に。

特に航空兵・ゼロ戦(戦闘機)に関しては非常に詳しく記されているので、当時の実情を深く学ぶことができます。 専門的な言葉もありますが、あくまでも物語として著されている面から、知識がなくても頭に入りやすい内容になっています。

内容が濃くページ数も多いですが、じっくり時間をかけて、ぜひ完読していただきたい一冊です。

式地涼

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私の一冊

藤田英輔

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「現代歌集(日本文学全集68)」 土岐善磨 筑摩書房

この本がどういう経路で僕の手元にあるのか、解らない。明治〜昭和にかけての一部歌人の作品を編んだ本だ。

ある歌人(誰だったか)は、短歌に親しむことは、つまり秀歌を読むこと、そのまま丸暗記すること、これに尽きると言う。それは究極だろう。

「表現する」ということの大変さ、大切さを痛感する。この本を紹介すること、そして短歌について語ること、それ自体「おこがましさ」に包囲され、思いは次第に雲散する。

ただ「言葉で表現する」ことには、あこがれる。どんなジャンルでも「自分なりの表現」ができる人は素晴らしい人だ。

重ねて、詳しいことは解らないが、この本の中では古泉千樫(こいずみちかし 1886.9.26~1927.8.11 )という歌人の歌に親近感がわく。

「表現する」ということについての僕の気持ちは、「しいよいようで、こちゃんとむつかしい!!」

藤田英輔

 

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私の一冊

石川拓也

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「スモール イズ ビューティフル」 E・F・シューマッハー 講談社

この本が刊行されたのは1973年。

巨大化しつつある世界経済に危機感を持っていた(早い!)シューマッハーは「大きくなることを目指すのではなく、人間という存在の身の丈に合った経済活動を目指すべき」と警鐘を鳴らします。

それがこの本。「スモール イズ ビューティフル」というのはそういう意味で使われています。

副題は「人間中心の経済学」とありますが、逆読みすると現実が「人間が中心にいない経済」の中に私たちは生きているという風に読めます。

いつの間にか「経済のための人間」になってしまっていないですか?

「小さな経済を生きる」「足るを知る」こういったキーワードの先に著者が名付けたのは「仏教経済学」。

現実に世界がそういった方向を求めてきているのを肌で感じます。

 

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