私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「忍びの国」 和田竜 新潮文庫

 

映画化された「のぼうの城」の原作者が書いた面白忍法小説。「天正伊賀の乱」の史実に基づく歴史エンターテインメント。

ちょいちょい文献等を引用し、有り得ない技を使いこなす伊賀者の話が「あるかも!?」・・・と現実味を帯びてくる。

世代交代を意識するかつての一流忍者「木猿」、大好きな女性に翻弄される誰もが認める凄技の使い手「無門」、若者時代の石川五右衛門「文吾」。

劇画チックに陥りがちな忍法作品が、大人も楽しめる小説へと変化してくる。

西野内小代

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「のはらうた」 工藤直子 童話屋

かまきりりゅうじ、こぶたはなこ、あらいぐまげん、ふくろうげんぞう、つくしてるお…。みんな、この本「のはらうた」に載っている詩の作者たち。

「のはらみんなのだいりにん」である工藤直子さんが、作者に代わって代筆しています。版画は、ほてはまたかしさん。

かつて幼稚園で働いていた私は、子どもたちとよくこの本を開きました。
庭でかまきりを見つけて「かまきりりゅうじがいたよ!」と教えてくれたひろくん、今どうしているかな…。

中でも私はこの2枚目の写真に写っている「かたつむりでんきち」のこの詩が好きでした。

「のはらうた」の詩と版画は毎年カレンダーになるのですが、土佐町小学校の図書室のそばにこのカレンダーがかかっているのを見つけた時は、懐かしい友だちに会えたようでうれしかったです。

鳥山百合子

 

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私の一冊

石川拓也

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「日本一「ふざけた」会社のギリギリセーフな仕事術」 シモダテツヤ 中公新書

 

「この本を書くために平仮名とカタカナを覚えました。」

そんな書き方で始まる、日本一ふざけた会社バーグハンバーグバーグの社長・シモダテツヤ氏の仕事論。

最初から最後まで一貫したふざけかた。このセンスは個人的には大好きです。

自分の仕事にもふざけかたが足りないなぁと思わせてくれる本書ですが、「ギリギリセーフな仕事術」というタイトル通り、ふざけるのって意外と微妙なさじ加減が重要で、今のご時世一歩踏み外すととんでもない問題や炎上につながるものでもあるわけで、誰にでもできることではないよなぁとも思います。

でもどこからも文句が出ないような無難なやり方もおもしろくないし、かと言って誰かを怒らせたいわけでもないし。そんな境界線上を行ったり来たりしながら仕事している方は、職種に関わらず多くいるのではないでしょうか。

もちろん著者もそのうちの一人で、実践している悩める同士といった肩ひじ張らない語り口が楽しい一冊です。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「コンビニ人間」 村田沙耶香 文春文庫

このタイトルを見た時、コンビニが必要不可欠となった現代人の生活模様を描いた内容かと思い、社会風刺的な本であろうと勝手に思い込み購入しました。

読み進むうちに発達障害を持った一人のアルバイト人間を描き切った内容だと納得。

読み終わり、日本社会において息せき切って人生を駆け抜けようとする「仕事過適応人間」の内面をも描いているのではないかとの感想を持ちました。

少し切なくなった読後でした。

西野内小代

 

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私の一冊

藤田純子

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「カンヴァスの向こう側」 フィン・セッテホルム 評論社

絵の好きな12歳の少女リディアは、ある日突然1658年のオランダ・アムステルダムにタイムスリップしてしまいます。

この本は美術史に基づいたファンタジーですが、リディアが出会うヨーロッパの画家たちの生活ぶりや人格が丁寧に描かれています。

フィクションとはいえ、史実に基づいているのでリディアの体験した出来事は画家たちとその作品をぐっと身近に感じさせてくれ、絵画への興味を引き出してくれました。

レンブラント、ベラスケス、レオナルド・ダ・ヴィンチ、エドガー・ドガ、ウィリアム・ターナー、ダリ。

これらの個性的な画家たちが登場します。

藤田純子

 

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私の一冊

石川拓也

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「今日から俺は!!」 西森博之  小学館

あんまり説明することもないのですが、ぼくが中高生あたりで連載されていたヤンキー漫画「今日から俺は!!」。

最近ドラマになっていて「今頃!?」と思っていたのですが、チラッと見てみたらドラマも面白かった。マンガと同じところで笑いました。

これは田井のローソンで見つけて懐かしくなってつい買ったもの。

短ラン、長ラン、ボンタン、金髪‥‥通りで目が合えば「メンチ切った」と殴り合いとか、考えてみればとても不思議なこのカルチャーは現在の中高生には理解できるのでしょうか?

そういえば「今日から俺は!!」以外にも、「ビー・バップ・ハイスクール」「ろくでなしBLUES」「クローズ」「湘南純愛組!」などなど、80年代〜90年代はヤンキー漫画が豊作の時代でした。

完全に前田太尊気取りの同級生もいた記憶があります。彼にとっては黒歴史かも……笑

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「広島の原爆」 那須正幹 文 , 西村繁男 絵 福音館書店

広島に原爆が投下される前と後の町の様子が、この本には描かれています。

本の後ろには一枚ずつの絵の中に番号がふられ、描かれている場所や人々の様子の細かい説明が文章でも記されています。西村さんは、被曝当時10代〜30代だった方たちの証言や資料を元に客観的な事実を描こうとしたそうです。

ある絵に描かれている「交番の仮眠室をのぞいているなっぱ服(作業服)の少年」の説明です。

『少年は赤十字病院入り口で被曝した。その時の様子を「すぐ捜したのが弁当箱とメガネでした。私は小学校三年生くらいからメガネなしでは、何もできんかったぐらいですから。それで、地べたを這いまわしてやっとレンズ一枚拾いました。縁は焼けとりました。そのレンズを持って、目にかざして方向をあてながら走るんです」と手記に書いている。』

確かにメガネをかけた少年が交番と隣の食料品店の狭い隙間にたちながら、交番の中を覗き込んでいます。
絵に証言が重ねられると、その絵が急に自分のそばに近づいてくるような感覚になります。
この場所で暮らしていた人たちの「事実」がとても細かく記されているのです。広島という町で暮らしていた人たちの生活や思いや人生がたしかにここにあったのだという西村さんの叫びが、一枚ずつの絵の中から聞こえてくる気持ちがします。

西村さんはこの本をつくるために一年近く広島に住んで証言者を訪ね、資料を探し、そのあとも何度も足を運び、より克明な絵を描くために長い時間をかけたそうです。

昨年、土佐町に来てくださった西村さん。あの笑顔の向こうには表現者としての並々ならぬ思いがあったのだ、とあらためて感じています。

鳥山百合子

 

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私の一冊

藤田英輔

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「江戸しぐさ入門」 江戸しぐさ研究会 三五館

江戸しぐさとは、自立した人間が「互角に」互いを認め、生きていくための具体的な処方箋である。

未成年の頃にKちゃんという先輩にずいぶんと世話になっていました。Kちゃんが持つ世界観は一般的ではなく、特殊な世界のものでした。

この本の中にあるいくつものことをよく聞かされました。

三脱の教えや結界わきまえ、喧嘩しぐさ等々。

しかし、この本の中にあるいくつもは、全くの無視というか下手に出ちゃいけねえ勢いで、面食らったことが多々ありました。

大げさですが、僕の人学の根底に流れている考え方は、あの2~3年が影響していると思います。

「おはよう」には「おはよう」と、「おはようございます」には自分の方が年上でも上司であっても、同じく「おはようございます」と返さなければならない(文中より)。

そうですよね。

江戸しぐさ(土佐にもありますね)を身につけ、カッコイイ人間になりたいものです。

挨拶は先にする方がかっこいいね。

藤田英輔

 

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私の一冊

西野内小代

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「森田療法」 岩井寛 講談社

 

心の不安を「あるがまま」と受け入れ、解放を目指すという「森田療法」を考えられた森田正馬さんが高知県のご出身だと新聞でみかけたのをきっかけに読み始めた本です。

まず最終章に「おわりに」から読まれたい、と第一行目に記されています。

死を覚悟した難病の中、身体の自由も利かなくなり、口述筆記でかかれた本である事が記されてありました。

最後まで人間として意味を求めながら生きたいという精神病理学の先生の書かれた、「森田療法」の今日的意義を論じた最後の著書です。

精神医学について比較的分かり易く書かれてあり「あるがまま」を認めながらも自己実現を目指し、社会に貢献していくことの大切さを学びました。

西野内小代

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私の一冊

鳥山百合子

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「10才のとき」  高橋幸子聞き手, 西村繁男絵  福音館書店

昨年土佐町に来てくれた西村繁男さんにプレゼントしていただいた一冊「10才のとき」。

日本各地に住む人を訪ね、その人が10才だったときのお話を聞いていきます。

その人の年齢は様々で87才、26才、45才、66才…。当時は学童疎開中だったり、ベーブルースが日本に来たり、スズメやモグラをとったりイタドリで水車を作ったり…。

あたりまえのようなことですが、それぞれの人がそれぞれの場所で「10才」というその時を生きていた、ということにはっとさせられます。

私の知っている、あの人も、あの人も、この人も、かつては子どもだった、10才だったときがあったのです。

その時はまだお互いに知らなかったけれど、「ご縁」という糸やいろんな出来事がからみあいながら、自分の知らないうちに知らないところでそっとその人とつながっていた。だから出会えたんだなあと思うと、その人と出会えたことはものすごい奇跡だ!と思うのです。

みんなみんなが、奇跡の存在。まちがいないです。

鳥山百合子

 

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