私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「ふしぎの国のバード」 佐々木大河 KADOKAWA

友人に勧められて手に取った「ふしぎの国のバード」、今発売されている5巻まで一気に読みました。

イザベラ・バードは、イギリスの女性冒険家。1831年に来日し、通訳の伊藤鶴吉と共に横浜から日光、新潟、北海道へ至る旅をした実在の人物です。

消えていく日本の文化や風習をイギリス人の視点から記した本があるとのこと、今度読んでみたいと思っています。

笠を被り、蓑を着て馬に乗り、虫や蜂、蛇と格闘しながら道を進むバード。

汗だくになりながら人力車を弾き続けた「ヤへーさん」に薬を手渡そうとしますが、ヤへーさんは受け取れないと断ります。

その時にバードは言いました。

「あなたにはわからないでしょう
人力車から降りる時、さしのべてくれた手が
目隠しのかわりにと言って吊るしてくれた蚊帳が
あなたのくれた小さな木苺が 
私をどれほど励ましてくれたか
その優しさに私がどれほど感謝しているか」

毎日のなかにある、一見ささやかなちいさな出来事に私も支えられて生きている。そのことをあらためて思い出させてくれました。

 

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私の一冊

藤田英輔

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「あきらめない」 村木厚子 日経BP社

作者の村木厚子さんは、1955年高知市で生まれた。

ある日、唐突に身に覚えのない罪状での逮捕、そして拘留。

作者の心のこの強さはどこにあったのか、どこから来たのか。何が育んだのか、何が支えたのか。

高校の頃、よく目を細めて頷き、微笑んでいる彼女の姿をよく覚えている。

何故が記憶に残る人だ。短い年月だったが同じ教室に居たことを嬉しく思う。

2009.6.14   逮捕、起訴
2009.11.24   保釈
2010.1.27   裁判始まる
2010.9.12   無罪判決
2010.9.21   無罪確定
2010.9.22   復職

藤田英輔

 

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私の一冊

藤田純子

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「心の色 ことばの光」 清水妙 新日本出版社

 

「万葉集」の天武天皇と、妃のひとり藤原夫人の雪のうたのやりとり。

【天皇】わが里に大雪降れり大原の 古りにし里にふらまくは後(のち)
→私のところには大雪が降ったぞ。だかあなたのいる大原は古ぼけた時代遅れの田舎だから、雪のもうちょっと後になって降るだろうな

【藤原夫人】わが岡のおかみに言ひて降らしめし 雪のくだけしそこに散りけむ (*おかみ…岡や水辺に住む龍神)
→何をおっしゃいます。私の岡の龍神に命令して降らせた雪のそのちいさなかけらがそちらに散っていたのでしょう。

天皇のからかいの歌に対し、余裕の笑みを浮かべて答えた藤原夫人。2人の住まいは歩いて15分ほどの近さであったことも可笑しい。

仲の良いふたりがしゃれた言葉あそびをしている。

「徒然草」「枕草子」「方丈記」など古典に出てくる人々は、真面目で堅苦しいイメージを持ちやすいですが、彼らはユーモア、ロマンティスト、男気、色気、ポジティブ、せっかち、涙もろい、恋多いなど親しみのもてる素の性質が歌に入り、この本を通してとても魅力的な人々に出会えた。そんなうれしさを味わった。

ことばの言い回しが難しいので、学生の頃から全く興味を持てなかった古典。故の知識のなさにちいさなコンプレックスを持っていたけれど、現代語の説明があるこの本に、まさに「学び直し」させていただき、ためになった!得した気分です。

藤田純子

 

 

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私の一冊

石川拓也

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「柴田元幸ベスト・エッセイ」 柴田元幸 ちくま文庫

 

柴田元幸さんは日本を代表する英米文学翻訳家。僕が柴田さんのことをあれこれ書くのが憚られるくらい、個人的に尊敬する人です。

驚くほどに多産な仕事ぶりで、ざっと翻訳した作家を挙げてみても、ポール・オースター、チャールズ・ブコウスキー、スティーヴ・エリクソン、スティーヴン・ミルハウザー、リチャード・パワーズ‥‥これ以上は書ききれませんが、もちろんここに挙げた名前はほんの一部です。

その柴田さんが、翻訳ではなくご自身のエッセイで本を出されました。80年代から、様々な媒体で発表されたエッセイを一冊にまとめた「柴田元幸ベスト・エッセイ」。これが面白くないわけはない。そこに柴田さんがいるかのような錯覚に陥りました。

ちょっとだけ自慢(←抑えきれない)をさせてもらうと、僕は柴田さんにはちょっとだけ仲良くしていただいていて、この一冊は「献本」として送っていただいたものでした。柴田先生、ありがとうございます。

石川拓也

 

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私の一冊

鳥山百合子

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2016年に高知県立美術館で開催された「マリメッコ展」で購入した一冊です。

フィンランドのブランド「マリメッコ」のデザイナー、マイヤ・イソラの物語。ウニッコと呼ばれるポピーの花のデザインを、きっとどこかで目にしたことがあるのでは。

『マリメッコは、伝統的な家庭環境と変化し続けるこの世界の新しい生活環境とを結ぶ架け橋』。

これはマリメッコ展の入り口に掲げられていた言葉です。持っていたチケットの裏にメモし、今も持っています。

架け橋、という言葉がとてもいいと思ったのです。

 

仕事への情熱を持ち自由と自立を求め続けたイソラ。花や木々、果物など自然をモチーフにしたデザインを多く残しています。

専門的なことはよくわかりませんが、ひとつひとつのデザインは、その時にイソラが見つめていた世界そのものなのかもしれないなと思います。デザインの奥にイソラの生き方が感じられるような気がして、時々この本を開きたくなります。

鳥山百合子

 

 

 

 

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私の一冊

藤田英輔

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「ピーナツ・ブックス」 チャールズ M.シュルツ作 谷川俊太郎・徳重あけみ共訳 TSURU COMIC

これはシリーズです。どの一冊のページでも良いのです。

見て、読んで、声に出してみてください。

僕らの友人チャックと老成した犬との言動が深いですね。お金のない学生時代の友人たちとのまわし読みだったので手元にある冊数は少ない。

これから大人買いするっ!

訳者もいいですね!!

藤田英輔

 

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私の一冊

和田亜美

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「さんかく窓の外側は夜」 ヤマシタトモコ クロフネコミックス

 

タイトルに惹かれて読み始めました。

読んでいて身震いしてしまう、でも引き込まれる、そんな作品です。

オカルト・ホラー系なので、当然幽霊系の怖さもあるのですが、呪いや妄信的な集団など、生きている人間の怖さもあり。

三角くんと冷川さんの全然いかがわしくないのにいかがわしい関係が大好物です。

和田亜美

 

 

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私の一冊

藤田純子

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「まもりたい、この小さな命」 原田京子写真,高橋うらら文 集英社

生まれたばかりで捨てられた。引越しの時置き去りにされた。災害にあい取り残された。野良犬になって人に恐怖心を持つようになった。飼われていても虐待されたりひどい飼い方をされたり、決して幸せではなかった…。行き先を無くしてしまった犬や猫には色々な理由があります。

そんなペットたちを保護し、きちんと世話をし、傷ついた心に気長く寄り添い新しい飼い主を探す。そういう活動を動物保護団体アークは30年近く続けている。児童文学作家高橋うららさんとアークの動物たちを撮影することをライフワークにしてきた写真家原田京子さんが取材し、まとめた一冊。

物言えぬ一つ一つほ命(魂)のいとおしさが胸に迫ります。

藤田純子

 

 

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私の一冊

藤田英輔

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「豆腐屋の四季」 松下竜一 講談社

大切に思うこと(もの)は隠しておきたいんだけど、実は顕示したい、知らしめたいという感覚。
この一冊はそんな思い。

僕のような「単純な豆腐好きの短歌好き」なくらいでは裏切られます。

松下竜一(1937~2004)渾身の一冊です。

藤田英輔

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「おおずもうがやってきた」 西村繁男 福音館書店

高知県高知市ご出身の西村繁男さんの絵本です。

島に大相撲の巡業がやってくることになって、町中の人が楽しみに準備をしていきます。

土俵の作り方、まわしのしめ方、ぶつかり稽古の様子、土俵入りやとりくみの様子が生き生きと描かれていて、自分もその中にいるような気持ちになってきます。

本場所ではお相撲さんが滑稽なことをしてお客さんを笑わせる「しょっきり」というものがあるらしく、西村さんの絵によると、わざと相手を飛び越えたり、水を吹きかけたり…。他にもいくつかあって、絵を見ながらその様子を想像するだけで面白い。

お客さんがお弁当を広げていたり、お菓子を食べていたり、カメラのフィルムを変えていたり(この絵本が描かれた時はフィルムだったんですね!)…。その様子を見るのも楽しい。

夜にお相撲さんたちが船に乗って島に到着した時の島の人たちの興奮や吐く息の白さは、暗闇の中にも人の熱や息遣いがあることを何だか思い出させてくれます。

鳥山百合子

 

 

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