私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「サンタクロースの部屋」 松岡享子 こぐま社

クリスマスの準備を始める頃、毎年決まって開きたくなる本、「サンタクロースの部屋」。

子どもは大きくなると、いつの頃からかサンタさんが誰なのかを知ります。

この本の中のこの言葉に出会ったとき、“その時”が来るまでは、サンタさんを信じる気持ちを守ってあげたいなあと思ったのでした。

『心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の心の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。』

『この空間、この収容能力、つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、人間の精神生活のあらゆる面で、どんなに重要かはいうまでもない。のちに、いちばん崇高なものを宿すかもしれぬ心の場所が、実は幼い日にサンタクロースを住まわせることによってつくられるのだ。別に、サンタクロースには限らない。魔法使いでも、妖精でも、鬼でも仙人でも、ものいう動物でも、空飛ぶくつでも、打出の小槌でも、岩戸をあげるおまじないでもよい。幼い心に、これらのふしぎの住める空間をたっぷりとってやりたい。』

目に見えない何かや人を信じる信じるちからは、その人の土台をずっと支え続けてくれるものだと思います。

 

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私の一冊

石川拓也

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「峠」 司馬遼太郎 新潮社

友人から勧められた一冊。 友人曰く、生前の司馬遼太郎さんが「もっとも思い入れの強い作品は?」と聞かれ答えたのが、「燃えよ剣」とこの「峠」だったのだそうです。

司馬さんの著作は結構読んでいたつもりでいたのですが、これはアンテナから漏れていました。ただ読んでみると非常に面白い。派手さはあまりないので、司馬さんの著作の中でも渋い方の作品ですね。

主人公は河井継之助(かわいつぎのすけ)。幕末期の越後長岡藩家老になった人物です。

家老になる以前に江戸に学び、長岡藩で唯一と言っていいほどに鋭敏に時流を嗅ぎ取っていた人物だそうです。

幕末の動乱の最中、その継之助が思い描いたものは、自身が率いる長岡藩を、まるでスイスのように「武装中立国」とすること。これは横浜で出会ったスイス人商人との交流の中で生まれたアイデアでしたが、継之助は実際に当時最新鋭であったガットリング砲を購入し、「武力による中立」を目指します。

歴史の結果を言ってしまうと、薩長軍でも幕軍でもないという存在は、当時の時流に飲み込まれ、継之助が思い描いた「中立」は叶わず、長岡藩は幕軍の一員として戦わざるをえなくなります。継之助のアイデアは結果的に上手くいかなかったわけですが、それでもその先見性と、理想を実現化する行動力には、「こんな人が日本にいたのか」と驚かされます。

2枚目の写真は、継之助が考えていた「知識」と「行動」についての一部。「行動」しなければ「知識」など何の役にも立たん、というようなセリフはこの「峠」の中でなんども繰り返し出てくる言葉です。

継之助の書簡などから司馬遼太郎が導き出した言葉であるのでしょうが、なんとなく司馬さん自身の言葉を継之助にアテ書きしているようにも感じられます。

 

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私の一冊

西野内小代

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「「孤独」が人を育てる」 小池一夫 講談社

 

 

「そうかも知れない」と不安になった時、「そうじゃないかもしれない」と方向転換をする事で不安の呪縛からの回避を心掛けてきました。

この本の作者は79年間のご自身の経験からこの対策を強く後押ししてくれました。

「これからの人生、今日が初日、ファイトー!」とさせてくれる力強い言葉が散りばめられています。

西野内小代

 

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ヒコリみなみのしまにいく」 いまきみち 福音館書店

先月11月に土佐町に来てくれた西村繁男さんといまきみちさん。お住いの神奈川県に戻ってから、いまきさんは絵本を送ってくださいました。

そのうちの一冊「ヒコリみなみのしまにいく」、この絵本は刺繍でできています。海の波も、ヤシの木の幹も枝も、おじいさんが来ているTシャツも、いまきさんがチクチクと一針ずつ縫ったのだそうです。

すごいなあ!一冊の本になるまで、どれだけの時間がかかっているのでしょう。

この本を開くと、いまきさんの穏やかな声が聞こえてくるようです。

またお会いしたいです。

鳥山百合子

 

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私の一冊

藤田純子

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「小さな生きものたちの不思議なくらし」 甲斐信枝 福音館書店

幼い頃、外で遊び疲れて草の上に仰向けに寝転んだ。

太陽がまぶしい。空をすぐ近くに感じる。音がいつもと全く違って聞こえる。

その時の気持ちを今も思い出すことができます。

不思議な感覚の中で、まわりの草たちは気持ちの良い風に揺すられながら、手をいっぱいに広げて、仲間たちとつながりあおうとしているように見えた。

この本を読んでいると、作者が私と同じ感覚を持たれていることを感じ、すごくうれしかった。

彼女はずっとずっと深く小さな目立たない存在に向き合って、面白く付き合っていて、新しい世界を教えてくれた。

藤田純子

 

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私の一冊

藤田英輔

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「日本の色辞典」 吉岡幸雄 紫紅社

【目下の悩み】

「江戸時代、元禄の頃、大都市における町民の繁栄ぶりは目を見張るものがあった。
富を築き、贅沢な暮らしを目指すようになったため、幕府は庶民の華美、贅沢を禁ずる奢侈(しゃし)禁止令により、華やかな衣装を着てはならないというお触れを出した。町民は止むを得ず、茶やねず系統の地味な色相を着るようにしたが、知恵と矜持によりさまざまな変化をつけた。その数は「四十八茶 百鼠」といわれるように、茶色には48、墨(ねず)にいたっては100種もの色相があったようで、染法を記する文献によると、茶系は80種あったといわれる」(以上文中より)

この本から唐茶(からちゃ)、樺茶(かばちゃ)、雀茶(すずめちゃ)、檜皮色(ひわだいろ)、煤竹色(すすたけいろ)、蝉の羽色(せみのはねいろ)など知った。それぞれは微妙に色相が違い、どれもが良い。(この色は?と問われても答えられないだろう)

これら茶系のどれかの色で、自動車のボディに表現したいと思う。が、どの色にしようか…。

このような呼び名があったよ、と気付くと顔も自然にほころぶ。

藤田英輔

 

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私の一冊

上田大

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「満月」 相川小学校PTA文集

文集「満月」は、相川小学校のPTA活動として昭和48年から始まったそうです。

毎年発行していたこの文集は、子育ての話だけでなく、何気ない暮らしのエピソード、誰も知らないような地域の昔話、俳句や短歌、漫画などなど多彩な内容で、当時の地域の方々の想いが綴られています。

自分の親が書いた文章も残っていて、なんだか懐かしく感じました。

小学校の廃校とともに、この文集の発刊も終了しました。

相川の人の暮らしや想いを綴り、将来地域を担う子どもたちに残す文集「満月」、復活できたらうれしいなあ…。

上田大

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「やかまし村のクリスマス」 アストリッド・リンドグレーン作 ポプラ社

クリスマスが近づいてくると読みたくなるこの本、「やかまし村のクリスマス」。

森へ行ってもみの木を切ってクリスマスツリーに、ジンジャークッキーを焼いてひもをつけてツリーに飾るページは、ろうそくの灯りがぽっと灯るような気持ちがします。

小さな頃、小さなクリスマスツリーを出し、サンタさんへの手紙をツリーの元へ置き、母と弟たちと輪飾りを作って部屋に飾りました。部屋は暖かくて、ガラス窓の内側は白くぼんやりと曇り、そこに指で色々な絵を描きました。次の日、曇りがとれた窓にうっすらと残っている指のあと。

今でも思い出すその風景はなんだか懐かしく、子どもたちにもそんな思い出を残してあげたいなあと思います。

鳥山百合子

 

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私の一冊

田岡裕未

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「どろんこハリー」 ジーン・ジオン文 福音館書店

 

子供の頃、家の本棚にあった、お気に入りの1冊です。今では私の息子と娘も好きなこの絵本。

お風呂嫌いなハリーがお茶目で、なんとも可愛らしくてたまりません。
ハリーの家族も優しくて大好きです。

家出をしてどろんこになって帰ってきて嫌いなお風呂に入れられても、やっぱりお家っていいな、としみじみ感じているハリーに、本当にその通りだと共感させられます。

子供達は「もし、僕がハリーみたいにどろんこになって帰ってきたらどうするー?」「えー絶対わからんろう!」なんて事を、話しながら兄妹で楽しそうに読んでいます。

我が家が家族にとって、やっぱりお家っていいなぁ、帰りたいなぁと、ハリーのように、そう思ってもらえるような家庭でありたいものです。

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私の一冊

西野内小代

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「幕末土佐の12人」 武光誠 PHP文庫

 

 

「坂本龍馬」頼みの高知県ですが、亀山社中は長崎、お墓は京都、高知県をはみ出して全国ブランドです。

もっと高知県を知らなければと手に取ったのがこの本です。

解説ばかりではなく、気が付けば「俺は・・・」「わしは・・・」と一人称での語りになっており、まるで大河ドラマの断片のような演出です。

幕末の土佐人の行動力に感銘を受けた一冊でした。

西野内小代

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