私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「世界のかわいい本の街」 アレックス・ジョンソン著 井上舞訳 X-Knowledge

ウェールズの小さな田舎町「ヘイ・オン・ワイ」を知っている人がいたら、きっとその人は根っからの本好きの人に違いありません!

ヘイ・オン・ワイは知る人ぞ知る「本の街」発祥の地です。1961年にリチャード・ブースがお城を古書店に変身させたことをきっかけに、小さな村に次々と本屋が誕生し、1970年代には「本の街」として村は有名となり、本屋による「村おこし」の好例となりました。

現在では40店舗ほどの本屋があり、毎年5月から6月にかけて行われる「ヘイ文学フェスティバル」には観光客や作家、音楽家、科学者など何十万人もの人が小さな村に訪れるそうです。

「本を核とした町おこし」は、始めることは比較的容易ですが、継続することはなかなか難しいプロジェクトです。それは承知しているのですが、いつかこの嶺北の地にもすてきな「本の街」を誕生させることはできないかなぁ~。

 

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私の一冊

山門由佳

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「OSAMU’S  A toZ  原田治の仕事」 原田治 亜紀書房

 2022年3月6日まで横山隆一記念まんが館にて「原田治展」が開催されていた。 昨年の夏、なんの下調べもせずふらっと神戸会場を訪れた際、入り口は若い女子達で溢れかえり、入場制限かつ整理券完売で入ることすら叶わなかった…入場すらできなかった展覧会は初めてだったので、どんな展示なのかすごく気になっていた。なので、今回の高知会場では大いに胸膨らませて訪れた。

原田治さんのイラストは、一家にひとつはなにかしらグッズがあったのではなかろうか。 長らくミスタードーナツの景品のイラストとして君臨し、先日友人に聞いた話では初めてつけたスポーツブラジャー(まで!)に原田治さんのイラストがあったというので、あらゆる暮らしの隅々までOSAMU GOODSは浸透していたことがわかる。それを体感できたのがこちらの展覧会だった。

時が経ち、時代も流行も変わってまた今。あらためて原田治さんのイラストの可愛らしさ、一度目にしただけで印象に残る力強さは不変だった。 若い女子達には、新鮮に映り、アラサー以降の女子には懐かしさとどこか実家や青春を思い出させる甘酸っぱい記憶がよみがえるのではなかろうか。

原田治さんの言葉に −イラストレーターは芸術家ではなくてお客さんを喜ばせる芸人。イラストレーションの面白さはエンターテインメント性にある。僕は人の喜ぶ顔を見たくてイラストを描いています。

童話「北風と太陽」の太陽のように、じわじわとあたためてコートを脱がせる話を思い出した。 冷静さと鋭い審美眼の持ち主。 何年経っても何十年経っても、さわやかなイラストでひとを喜ばせ、惹きつけてやまない。太陽の如く凄まじい魔力に圧倒されたのである。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ぼくにはこれしかなかった」 早坂大輔著 木楽舎

子どもに本を手渡す仕事に就いてから、かれこれ20年以上が経ちました。司書として働く毎日はとても幸せで、これこそ天職(^^)vと思うこともあります。とはいえ子どもの時から司書になろうと思っていたわけではありません。いろいろな偶然が重なり「本を手渡す側の一人」になりました。

司書になる前に経験した仕事も楽しく、今の自分を培ってくれる大切な栄養素となっています。だからでしょうか?初志貫徹した人よりも、紆余曲折を経た人の生き方に魅力を感じます。

盛岡市で独立系の本屋「BOOKNERD」を経営されている早坂大輔氏は、書店員の経験も出版社で働いた経験もゼロなのに、生まれ故郷でもない盛岡に、40歳を過ぎて小さな本屋を開店されました。その過程は綺麗事ではすまされるはずもなく、書店の、仕事の、そして生活の現実が包み隠さず綴られているのが本書です。

自分の生きかたや進路に迷うことって決して悪いことではないし、一本のまっすぐな道でなければ間違いというわけでもないと思います。「これしかない」と実感できる生き方に出会うまで、堂々と迷ってみるのも素敵な生き方だと思います。

 

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私の一冊

川村房子  

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「時生」 東野圭吾 講談社

東野圭吾のファンの次男の嫁さんが、このお正月の帰省にもって帰ってくれたなかの一冊です。

「時生」は主人公、宮本拓実のひとり息子。小学校、中学校の終わりころまでは元気で過ごしていた。

遺伝性の難病で、世界でも例が少なく治療法も見つかっていない。そのリスクは大きいといわれていたけれど育てるときめた。

中学生の終わりにその症状があらわれた。医師から、わかれの時が近づいていることを告げられる。

ふいに拓実は思い出した…。俺は、昔、時生に出会った。

俺は親に捨てられ、養父母にも裏切られ、どうしようもない毎日を過ごしていた。そんな時にあらわれた青年「トキオ」。読んでいてもいらいらしてしまうほどの拓実のやさぐれた毎日に寄り添うトキオ。

突然いなくなった拓実の恋人をトキオと追っていく。そして捨てざるを得なかった拓実の父や母の秘密もあきらかになっていく。

時生を通して過去・現在・未来が交差する。

 

ここから全くの余談です。

高知新聞の俳句欄に小、中の同級生が掲載されています。同級生というだけでにんまりしてしまいますねえ。

先日は第一席でした。

字花瀬 捨て田となりや 七日粥     光富充

よく出てますので、是非みてください。

 

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私の一冊

山門由佳

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「わんぱくだんのゆきまつり」 ゆきのゆみこ,上野与志作 末崎茂樹絵 ひさかたチャイルド

小学生の頃、那須正幹さん著「ズッコケ三人組シリーズ」の本が流行っていた。モーちゃん、ハカセ、ハチベエというそれぞれ個性豊かな小学生男子3人組が、力を合わせて事件を解決していく物語にドキドキしたものだ。2人ではなく3人。4人でもなく3人。「3人」というのはグループにおいてそれぞれの個性・役回りが際立ち、なにかやるにもまとまりがよく勢いも感じる人数に思う。

この平成にうまれた「わんぱくだん」シリーズでは、けん・ひろし・くみの女子1名含む3人組で、物語のなかに大人達はいっさい出てこない。 文中に母親の存在を感じさせる一文はあれど、あくまでも子どもたちだけの冒険世界。 最初から最後まで3人は仲良く手を取り合いながら、ファンタジーのような世界、夢のような時間を過ごす。 3人だけのとっておきの秘密の冒険物語。

「ズッコケ三人組」を読むにはまだ早い幼い子たちにも、普段の生活のなかにドキドキやワクワクとしたドラマが潜んでいるかもしれない想像を掻き立て、なにより仲間がいることの心強さを伝えられるすてきな絵本だと思う。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「捨てないパン屋の挑戦 ~しあわせのレシピ~」 井出留美 あかね書房

何年か前のこと、「とてもおいしい天然酵母のパンを定期購入できることになったんだ」と、友人がちょっと自慢げに話してくれました。それからしばらくして「こないだはなしたパン屋さんが本を出したよ」と教えてくれたのは『捨てないパン屋』(清流出版)。早速読んでみたところ、なんて素敵な生き方&考え方!それからまたしばらくたったころ、先の友人から「あかね書房からも本が出たよ」と教えてもらったのがこれです。

清流社の本のなかでは、パン屋としての矜持の様なものが綴られていましたが、こちらの『~しあわせのレシピ』では、捨てないパン屋になるまでの紆余曲折が丁寧に描かれています。人間らしく、幸せに生きるということと重なる印象的な言葉がたくさんありました。なかでも「食べものが一番の環境問題」という言葉は事あるごとに思い出され、頭の中に響いています。

 

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私の一冊

西野内小代

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「ラプラスの魔女」 東野圭吾 KADOKAWA

不思議な能力を人工的に授かった10代の男女2名を中心に話は進行していく。

時代は現代だが少し近未来的な推理小説と感じる。

事件により記憶喪失となった少年、手術によって授かった非凡な能力(頭脳)を駆使し復讐を実行するために行方をくらます。

彼の孤独に寄り添いたいと同じ手術を父親に施してもらった少女が彼を追跡。謎解きを依頼された大学教授。

読み始めたらもう止まりません。

 

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私の一冊

川村房子

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「青空と逃げる」 辻村深月 中央公論新社

深夜一本の電話が平凡な日常を突然奪った。追い詰められていく母「早苗」と息子「力」。

舞台は知人を頼って逃げた高知県四万十からはじまる。最近選んでるわけじゃないのに、小説の中に高知県の出てる場面にいきあう。やっぱりちょっとうれしくて頬がゆるんでしまう。

その四万十に、父親の行き先を尋ねてきた怪しい男たち。お世話になった方々へのお礼も伝えられずに、必要最小限の荷物だけをもって、恐怖におびえながら逃避行を続ける早苗と力。

高知県の四万十、兵庫県の家島、大分県の別府。

秋田県の仙台に父親がいるらしいと知って、羽田空港をさけ名古屋空港からと思ったが、早苗が風邪で倒れこんでしまう。逃避行の間に、右に左にゆれながらも成長していく力の姿に胸うたれる。思春期の感性に、年甲斐も無くつい入り込んでしまう。

青空から逃げるのではなく、青空と一緒に逃げる。

救いと再生の物語。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「黄昏の絵画たち−近代絵画に描かれた夕日・夕景」

 一日で一番ほっとするかもしれないひととき…。それが「黄昏時」「トワイライトタイム」「マジックアワー」そう呼ばれる時間帯かもしれない。 毎日20分くらいしかないその瞬間に、外に居れたら。散歩に出かけられたら。 この上なく満ち足りた気分になるのはどうしてだろう。。。

太陽がその日最後の持てるかがやきをふんだんに放ち、すべてが黄金色に照らし出される美しさのなかで静かに月は自分の出番を待っている。 この絵画展の図録に収められている絵を眺めていても、朝でも昼でもましてや夜でもないその一瞬の色彩のなかで、人々の情景をとらえた作品には安堵や優しさ、はたまた孤独や物悲しさがうかがえる。

今後、世界がどんどんめまぐるしく変化していっても、毎日黄昏時はおとずれる。 その心動かされる時間帯こそ、一番人間らしい刻かもしれない。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「最初の質問」 長田弘 詩 いせひでこ 絵 講談社

詩人の長田弘さんが紡ぐ言葉はどれも美しく、まっすぐに心に届きます。ちょっと嬉しいことがあった時、あるいはすこし淋しくなった時、気がつけば長田さんの詩集やエッセイを開いています。

けっして麗々しい言葉ではないし、よく口にする言葉なのに、長田さんが記すると、言葉が言葉本来の意味を持ち、美しい響きを取り戻すように思われます。

「今日、あなたは空を見上げましたか。」
「空は遠かったですか、近かったですか。」
「樹木を友人だと考えたことがありますか。」
「何歳のときのじぶんが好きですか。」  ……

答えを思うたび、豊かなものに満たされていく絵本です。

 

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