私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

山門由佳

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「エルマーのぼうけん」 ルース・スタイルス・ガネット  福音館書店

息子が先日、保育園を卒園しました。 赤ちゃんの頃から、よく泣き、よく暴れ、あれやこれやと注文の多い子どもであるため、一緒に暮らすのもひと苦労。汗。しかしながら【保育園】という場所があったからこそ、安心して仕事に打ち込めたのはもちろん、なにより母である私の精神衛生を守っていただきました。 保育園がなかったら…今頃わたし、きっと‥?!?!?!  想像するだけでゾッとします。

なので、保育園という場所、保育士の先生方々は、わたしにとって女神・神様の如き存在、土下座して拝みたくなるほどに感謝をしております。 母子共々、心身共に護っていただきました。

こちら『エルマーのぼうけん』は、息子が年長クラスで生活発表会の作品に選ばれた本でした。『エルマーのぼうけん』を先生に読んでいただいた日、目を輝かせ帰って来て、「エルマーって知ってる?」と初めて絵本以外の本に興味を持ったことに成長を感じ、嬉しく忘れられない一冊となりました。

エルマーは勇敢で賢く優しい男の子。 乱暴で好奇心は強いのに、こわがりという矛盾している息子にとって、エルマーはどんな問題にぶち当たっても果敢に打ち勝っていく姿にたくさんの勇気をもらったことでしょう。

これからはじまる小学生の息子のぼうけん物語。 エルマーのように心優しくも勇敢であれ!と母は祈っております。

 

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私の一冊

川村房子

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「幹事のアッコちゃん」 柚木麻子 双葉社

この本はアッコちゃんシリーズ3作目。読むと元気になる小説と言われます。気軽に読めて、次の日に繰り越しても続きがすぐに思い浮かびます。

アッコさんは「東京ポトフ&スムージー」の会社社長で、本名黒川敦子。おかっぱ頭で見上げるような大女。つい歌手の和田アキ子さんを思いうかべてしまうけれど、とろけるような笑みを浮かべるとつい引き込まれてしまう。

今回は、忘年会の幹事役をまかされ、文句ばっかり云いながら、昔からのやり方に従わざるを得ないと思っている、妙に冷めた男性新入社員を「今日から4日間私の忘年会に参加なさい」と誘う。そのなかでプロデュースの極意を授けていく。可愛くて、やさしく包容力のある女性。

他に「アンチアッコちゃん」「けいこのアッコちゃん」が掲載。背中をバシッと叩いて導いてくれます。

 

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私の一冊

川村房子

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 「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美 星雲社

最近、それを目当てに探しているわけではないのに、料理を含めて行きかう人情…、そんな本に巡り合います。

両親が亡くなって、妹の薫と店を継いだ美音。「ぼったくり」という店名は父親がつけた。「誰にでも買えるような酒や、どこの家庭でも出てくるような料理で金を取るうちの店は、もうそれだけでぼったくりだ」という。そんな自嘲めいた台詞の裏には、いつだって父の料理人としての吟じが隠されていた。

そこに通ってくる常連さんは、丁寧に心をこめて作ってくれている家庭料理の数々だと知っている。そして全国のうまい酒。口に含んだとたん笑みがこぼれる。

店を営む姉妹と客たちの話題は、酒や料理や誰かの困りごと。悩みを抱えて暖簾をくぐった人は美味しいものと、人情に癒されて知らず知らずのうちに肩の力を抜く。居酒屋「ぼったくり」はそんな店である、と文中に書かれている。

心のあたたまる一冊です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「里山のシイナのほぼ片づけ日記」 里山のシイナ PHP研究所

数十件の物件の中から長野県飯田市にあるこの古民家に出会い、自分たちの居場所として片づけ始めた記録(YouTube)の総括です。

宅地→約300坪、建物→4棟、農地→約3,100坪

「タダでいいので、この荒れ果てた状態で引き取ってもらえないか?」という売主さんの提案のもと、この物件を手に入れたそうです。

それからほぼ1年半片付けの日々。その日常の様子をYouTubeに投稿して主な収入源としている30代のご夫婦が出版された本です。

奥さんは元庭師、建築関係の資格も有する。建築関係の仕事やホームページの作成等の依頼をサイドビジネスとして副収入を得る。ご主人はとにかく機械いじりが得意、なんでも修理してしまうし、分解なんて御手の物。工務店での仕事の経験もあり、ご実家が木工店だったらしく、木工家具屋として独立していくことを目標としてこの古民家を購入。

自分探しをしてきたご主人と、パイオニア精神旺盛のパワフル奥さんという印象のこの30代のご夫婦の前向きで根拠ある姿に共感を抱き、チャンネル登録をして応援している。そして本まで買った次第です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「伝わるちから」 松浦弥太郎 小学館

日常のさりげない行動・言動・振る舞い等についての心構えを、平易な言葉だけれども真正面から凛として説いてくれる。
日々を充実して晴れやかに暮らす極意を教わる、しかも柔らかく諭してくれる。
柔らかい印象を受けるのは、むやみに漢字を使っていないからだと気が付いた。

心に留めておきたい言葉に出会った。
「今日もていねいに」

 

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私の一冊

矢野ゆかり

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「14ひきのこもりうた」 いわむらしげお 童心社

こんにちは!

ゆかりです。頑張って書いてみましたよ。

随分と春めいて参りました。花粉や黄砂がすごくて、鼻を取り外して洗ってしまいたいです。去年よりも酷い気がします。はっくしょい。むずむず。飼い猫が甘えてきて、鼻がやけにしっとり湿っていて、しまさん(飼い猫の名前)も花粉症かしらなんて思ってしまいました。しまさんは気持ちよさそうに撫でられていました。

さて今回の私の一冊はまたまた絵本です。

いわむらかずおさんの『14ひきのこもりうた』です。ネズミの家族を描いた14ひきシリーズは、割と有名ではないでしょうか。母が買ってくれていたので全冊ではありませんが、シリーズであります。

私はいわむらかずおさんの、筆のタッチがとても好きです。ネズミたちの毛並みや草木の豊かな緑、夕方独特の暖かな空気。夕飯のきのめのシチューや、薪焚きのお風呂に憧れたものです。14匹の1匹いっぴきに特徴があり、シンプルな文章にそれが垣間見えます。私は以前ネズミを飼っていたのですが、絵と実物がそっくりです。手足や耳の感じがとてもリアルです。おじいさんとおばあさん、お父さんとお母さん、10匹の子供たち。14匹の大家族の賑やかな夜がふけていきます。お母さんにお話を読んでもらって、子守唄を歌ってもらって子供たちは眠りにつきます。小窓に小さな虫がいるのが、なんとも可愛らしいです。

子守唄は優しいメロディで、心が暖かくなる言葉選びです。この子守唄には思い出があります。どんな時だったか忘れてしまいましたが、妹や弟に歌った記憶があります。昼間だった気がします。母や父の真似をして背中をポンポン叩いて、ねむねむねむのき はをとじて…”。今思えばそんな歳も変わらない子供同士なのに、私はお姉ちゃんぶりたかったんだなぁと思うのでした。

またこの本は装丁をめくると別の絵が隠れています。そこも楽しいところです。手に取ったら是非めくってみてください。

ではこの辺で筆を置きます。

世界の人々がこの絵本の中身のように、家族で当たり前の幸せを得られますように。心から祈っています。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「#マイネーム」 黒川裕子 さ・え・ら書房

名前って不思議です。誰もが持っているものなのに、自分で自分に名前をつけることはできません。呼んでもらいたい名前もあれば、呼んでほしくない名前もあるでしょうに…。

主人公の名前は美音(みおん)。この名前はパパが私につけてくれた素敵な名前。ママは「結婚して名前が変わったとき、感動して泣いちゃった」と言っていたのに、性格の不一致で二人は離婚。中学生になった春、美音は坂上美音から戸松美音になります。

中学生活スタート初日、担任から生徒たちのこと、またお互いのことも名字にさんをつけて呼ぶ「SUNさん運動」を取り入れることになったと告げられます。地元中学生限定Nスレッドに(自分の名前が嫌いな奴集まれ #マイネーム)の呼びかけを見つけた美音は、自分の呼ばれたい名前を書いた名札を付けて登校します。 #マイネームに賛同する子もいれば賛同しない子もいます。養子縁組で名前の変わった子や在日コリアン、あるいは夫婦別姓を選んだカップル等など、「なまえ」に対する考えはそれぞれ違います。

違いはあっても正直な思いを伝え、考えを話すなかから浮かび上がってくるのは「誰にも支配されない、世界で一番自由な“自分”」でありたいという、譲れない想い。

私って、いったい何者なのだろう…?

 

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私の一冊

石川拓也

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「人類5000年史Ⅳ」 出口治明 ちくま新書

 『「日本史」や「フランス史」などという歴史は存在しない。あるのは「人類史」というものだけだ。』これは出口治明さんの持論です。

現代の僕たちが想像するよりも遥かに、古代から世界は密に繋がっていて、お互いがお互いを影響しあって一つの歴史を織りなしている。「日本」や「フランス」などと区切って理解できるものではない。というのがその理由であり、その通りだと思います。

そのひとつしかない「人類史」を、ひとつの大きな流れとして理解するための著作です。数百年ごとに区切って一冊ずつ出してきたシリーズも4冊目。僕にとっては”発売されたら即買う”シリーズになっています。

ところで、学生時代は「歴史」というものは、暗記の教科だと思っていたんですが、違うんですね。

歴史は、語学と一緒で「積み上げていくもの」。語学というのは、地味な積み上げの果てに、ある時突然「喋れるようになる」「聞き取れるようになる」という限界突破ラインを迎えるものであると経験上言えるのですが、実は歴史も同様です。

専門的に勉強してきたわけではないですが、年を経て様々な知識が積み重なったその先に、何かしらの限界突破ラインを迎え、知識の断片の積み上げでしかなかったものが、そのあとは全てが繋がって見えるようになる。そんな感じなんだと思います。

そして歴史の様々な要素が繋がって見えるようになると、歴史というものが「過去を学ぶもの」であると同時に、「より良い未来を作るための道具」でもあるということがよくわかるようになる。

 

少し話が逸れましたが、こうして人類史を蓄積させていくと、人類が如何に血みどろの歴史を編んできたのかがよくわかる。なんせこの直近80年間以前は、「力による現状変更」が当たり前の世界。「強いもんの勝ち、腕力の弱い奴は奴隷」という世界であり価値観。

その価値観の行き着く先には2度の世界的規模の戦争があり、その経験がもたらした苦い反省とともに、「もう不毛な争いは繰り返さない」とコツコツ世の中を作ってきたのがこの80年くらいだった、大雑把に言えばそんなふうに理解していました。

ですが、実はその価値観はあまりにも脆かった。プーチンのような指導者ひとりの判断によって1週間ほどで壊れてしまうようなものでした。積み上げてきた80年間を一気に逆行するような、積み上げてきた積み木のお城を一気に崩してしまうような、そんな行為がロシアという大国によって行われている。

この価値観の逆行が、「やったもん勝ち」という強引な手腕で成立されてしまうのか?

それとも「逆行させようとしたら総スカンで痛い目を見た」という結果に終わるのか?

おそらく今後の人類史100年200年という単位の方向性が決まるような、非常に大きなターニングポイントになるのは間違いなく、そのために小さないち個人としても何ができるのだろうと自問することの多い日々を過ごしています。

 

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私の一冊

矢野ゆかり

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「12のつきのおくりもの」 スロバキア民話 福音館書店

こんにちは!お久しぶりです、ゆかりでございます。

あっという間に3月になってしまいました。水がほどけ、硬い木の芽も緩み、日が長くなっています。もう春がそこまで来ています。とは言え、雨の日は底冷えがしますし、市内に比べて寒いのは仕方が無いですよね。さて、最近の話題と言えばなんでしょうか。やっぱりロシアとウクライナの戦争に尽きるでしょうね。我が家では毎日話題にのぼります。どうして戦争になるのでしょう?底知れぬ恐ろしさを感じます。このまま第三次世界大戦なんてなったらどうしようと不安が募るばかりです。もちろん1番不安なのはウクライナ国民だと思います。人間にとって一番大変で大切なのは平和で、どうか世界が平和になるよう祈るばかりです。

さて、私の1冊に入りましょう!

今回は東欧スロバキアの民話、

12のつきのおくりもの」です。

画像を見てお気づきかと思いますがこれ、こどものとものバージョンです。私が保育園の年中さんの時に貰った本です。(20年以上前!!)母が大事に取っておいてくれたものです。

この民話の主人公はマルーシカという働き者で美しい少女です。いつも継母と継姉ホレーナに虐げられています。彼女らはマルーシカを追い出そうとして、とうとう無理難題を言って真冬の森にお使いに行かせます。昔話の定番です。マルーシカは仕方なく、泣きながら真冬の森に行きます。そして12の月の精の焚き火に出会います。そこで彼らに助けてもらうのです。美しいすみれ、溢れるほどのいちご、驚くほど美味しいリンゴ。それぞれの月の精が、マルーシカが無理難題を出される度に助けてくれるのでした。

この本の好きなところは、素敵な絵です。カラフルで細かい柄のスカート、雄々しい焚き火、コロコロしたいちごや、真っ赤に熟したリンゴ。ついついページを見入ってしまいます。私は幼い頃夜寝る前に、絵本の読み聞かせをしてもらっていました。間接照明のオレンジの明かりと母の優しい声、ページをめくる音、今でも鮮明に思い出せます。寒くて毛布の端を掴んで、母に擦り寄っていた事も、何となく思い出されました。皆さんもこんな経験あるのではないでしょうか。母や父、祖父母に本を読んでもらったり、お話をしてもらったこと。私は食い意地がはっていたので、食べ物の出てくる話が大好きでした。私にとって、かけがえのない思い出です。

母は私達弟妹の、保育園時代の絵本をほぼ残してくれています。絵本は同じ話でも色んな作画があるので、この本たちは宝物です。私はもし子供が出来たら、同じように本を読んであげたいと思っています。

それでは今回はこの辺で。

また絵本の話を書きたいと思っています。

どうか全ての人々の平穏を祈ります。

おわり

 

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私の一冊

西野内小代

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「塞王の楯」 今村翔吾 集英社

時は戦国、群雄割拠、生と死が交錯する時代。

武士とは違う世界で戦国を戦った職人集団を扱った時代小説。登場人物の背景をしっかりと描き、その時代をまっすぐに生きた職人を潔くテンポよく描写。

どのような攻撃にも耐えられる石垣を構築することにより、戦国の世を終わらせようとする石垣造り集団「穴太衆飛田屋の飛田匡介」と、どのような石垣でも突破するべく、鉄砲の開発に邁進する鍛冶集団「国友衆彦九郎」との突出した技術を持つ楯と矛の戦い。

一つの城を巡り事態が佳境に入ったその時、敗戦が濃厚となった石垣職人側に異変が起こる。

登場人物と共に私も泣いた。戦国時代を扱った時代小説でこれほど素直に泣けたのは初めて、不意打ちだった。

とても心に残った作品。因みに今年の直木賞を受賞している。

 

 

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