私は山の奥にある、山の中心にある土地を訪れ、そこであらゆる神道の出来事に使われるしきみを育てていらっしゃるAさん(*仮名)に会いに行きました。そこではお米作りを手伝う鴨がいて、アメゴも自由に泳いでいました。都会に住んでいる人が 街の道や、ビルの間を通り抜ける様に、彼は山の道や木の間を歩いていました。学校の生徒も 自然を学びにこの土地に来ることがあり、自然と一緒に生きていく大切さを学びます。
一度切られた木材に新しい命を子供達が吹き込み、工作を作ったり、薬草のことを学んだり、様々な角度から自然を生活に取り込んでいます。山の中を歩いていると、ふとAさんが立ち止まり、道の隅に生えている植物を積んで教えてくれました — ここに生えている植物は、同じ場所に根を置いていた他の植物と戦い、強く勝ち抜いたものだから、食べたらその素晴らしい力を分けてもらえるよ、と。
研究助手の佐々木理世さんとお友達2人で一緒に山の中を歩きながら 、幸せであることや、人生でやりがいを見つける大切さ、生きがいのことを話し合いました。私にとって、生きがいは新しい言葉で、具体的な意味が理解できなかったのですが、Aさんは彼の独特な例えや彼を囲んでいる自然を通して説明をしてくれました。
(Aさんの言葉)
「結局、人間の幸せって何?自分が聞いてるのは健康、でもその次にはね、自分の人生を賭ける仕事に出会えるかっていうことだね。自分は、色々なことをして来たけんど、焼畑もしたし、炭焼きもしたし、ミツマタも作ったし、山の植林もしたし…加工もするし、なんでもできるけんど、結局は自分が人生をかけてもしたい仕事に出会えた…後に残っていく。自分が生きて来た歴史が山に残っていく。会社勤めて、それなりのポストをあたえられても、自分が退職して、おってもおらなくても、また違う人が維持していくからね。けんど、この田舎では、代が変わったとしても、そのうえた木が後にのこっちゅうし、全部が始末ができんきね。自分の植えた木を切ってまた植えて。その、循環していく。
で、必ずその年に、1年に(木の丸太を見せてくれる)これだけの成長しかせんけんど …だけどもう、さっき見たろ?(昭和)48年に植えた木だってもうあれだけになる。あれもまた、切らないで30年置いといたら、まだまだ太るし。でも切られても、誰かの家になって生きていくわね。パルプにもなるけんど、紙にもなるけんど、家にもなる。そしたら、1回はこの山で生きて、まあ酸素を供給しながら、育てた人の生活を支えるけんど、2回目はみんなに安らぎを与える家になって生きていくんだ。
そして、目に見えんけんど、二酸化炭素を50年間ためた。それで切られて家になって50年間使ってくれたら、二酸化炭素を100年間備蓄したことになる。」
Aさんは、人間は木と一緒で自然な生き物であるから、育ちに強い根が張っていれば、しっかり社会で道が開けると教えてくれました。18歳になると人間は社会でどのような人間になるのか、将来を決めなければなりません。木も同じです。18歳になると、Aさんにどのような木になるのか、教えてくれるとおっしゃっていました。
私は今まで様々な人と生きがいについて話してきました。そこで強く共通する点は、自分の行動により周りの人の笑顔が見られることや、社会に貢献することで自分に返って来る幸福がある、という考えでした。美味しい大福を作って近所の人に分けてあげる喜びから、より良い学校の先生になるためにワークショップに参加するなど、色々な形がありますが、生きがいは自分の周りの人の喜びのため、自分に何ができるのか、という思いが強くあることを感じました。
皆、それぞれの生きがいの意味を考え、様々な生きがいを持っている。自分の夢や野望 — 美術のスキル極めたい人や英語を学んだり、中には人生でなくては生きていけない、例えば自分の子供、などを生きがいにあげる人。 人生の楽しみを追求する人、様々な義務を達成する人、そして両方が少し混ざっている人。生きがいは人生そのものを感じるということで、嬉しいことも辛いことも全て含まれているのかなと感じます。
生きがいを英語に訳すと「人生の目的」になりますが、これは日本における生きがいの深い意味には不適切だと思います。イギリスでは個人的に導きたいゴールや人生の目的などを表します。でも、日本人は生きがいをもっと繊細な、控えめな意味だと理解し、日常にある毎日の行動を丁寧に生きることを表すのでないかと思い始めました。Aさんも、未来の幸せを追っかけていく人生ではなく、今を生きることの大切さを教えてくれました。これは、都会に住んで、生活の自然なリズムや循環に逆らって生きていく人々に、とても大切なことなのではないかと感じます。私たちは毎日の仕事・やらなければならないリストや不安に溺れ、人間としての自然な生活の流れや自分の持つ情熱に結ばれないことが多いのかもしれません。
「 多かれ少なかれ、みんな不安はもっちゅう。でも、自分も不安はあるけんど、それ以上にやりたいことが勝ったら生きていける。不安が多くなれば生きていかんけんど、不安よりやりたいことがちょっと混ざったら生きていけるのよ。人生は紙一重だしね、生と死というのはね、紙一重。生きることがこれほどあって、死ぬことがこれしかないと思うけど、そんなことはない。交通事故でいつ死ぬかわからないし、ほんとね、紙一重。こっち転ぶか、こっち転ぶか。で、不安はあるけんど、やりたいことがちょっとオーバーしたら大丈夫だ。」
お時間、知恵、そして自然に対する情熱を教えてくださったAさんに感謝致します。
*Aさんのリクエストにより、個人情報を守るため仮名を使っております。