数日前、炭焼釜から炭を出した。
二年と五ヶ月前に焼いた木炭だ。
2018年三月、名高山に炭窯を持つ方に「焼いてみんかよ」と声を掛けてもらった。それまで別の場所で炭作りの見学はしたことあったけど、実際に手を動かすのははじめてだった。
炭となる雑木を集めるのは、一番手間の掛かる行程のひとつだろう。必要な量は窯の大きさによるが、歩留まりをよくするため、材料となる枝木を窯内にできる限り詰め込まないといけない。今回、周囲の木を切らせてもらい、軽トラ3.5車分くらいになった(これでも少し足りなかった)。集まった木のほとんどは窯主の方に伐採してもらったので、なんだか申し訳ない気持ちだったが、その他の作業はなるべく自分でやるように努めた。木や枝は、窯に入るように適当な長さに切っておく。
狭い入り口から炭窯の中に潜り込んで、外にいる友人に木を放り込んでもらう。出入り口からの光を頼りにして、奥から順番に立てて並べていく。隙間があると木から木へうまく熱が伝わらず、良い炭にならないので、曲がった木や枝をパズルのように組み合わせる。湾曲した天井の空間には木を横にして空間を埋める。焚き口周辺は高温になり、どうしても燃え尽きてしまうから、炭としては使いにくい太い切り株などを置く。より上質でより多くの炭を取るにはいろんなコツがあり、経験と技術が必要だ。行程の最初から最後まで地域の方々にアドバイスをいただいた。なんとか材を入れ終わり、出入り口を石と土で閉じた。
いよいよ炭を焼く。
出入り口の隣にある火口で薪を燃やして、窯の温度を上げていく。火が木に移るまでとにかく薪をどんどん焼べる。焚き口の反対側にある煙突からは最初蒸気が出て、そのうちモクモクと白い煙が排出される。中の材が燃えはじめた合図だ。
家から炭窯まで車で20分ほど離れているが、途中で火が消えないように数時間ごとに往復して見回った。初日の夜は窯の前に車を停めて、夜通し火の番をした。夜の冷え込みはまだ強い三月の山。車内で布団に丸まりながら時折薪を足していく。
約24時間後、窯内の温度が十分高くなったと判断し、小さな空気穴を残して焚き口を塞いだ。
後編に続く。