「哲学と宗教全史」 出口治明 ダイヤモンド社
500ページ近くある分厚い本ですが、読了したときには静かに拍手を送りたくなるような良い本でした。
以前「全世界史」も紹介した出口治明さんが、「哲学と宗教」にフォーカスして「人類全史」を書くとこうなる。
有史以来、人類が命がけで紡いできた生き延びるための「思想」の全体像が、朧げながらつかめてくるような気がします。
個人的に、抜群におもしろいのはやはり古代。
東は仏教・バラモン教・ジャイナ教などが発祥したインド、古代〜中世中華が育んだ儒教・道教・仏教の中華三大宗教。
西はギリシャ哲学の諸々派や、世界最古の宗教といわれるゾロアスター教(拝火教)から、セム系一神教(アブラハムの宗教)のユダヤ教・キリスト教・イスラム教の誕生と発展。
私たちが生きる現代のこの世界が、先人たちの知的格闘の末に作り上げられたものであるということがよくわかります。
仏典や聖書・クルアーン、四書五経、実存主義・唯物論から構造主義まで。頭がクラクラしてきます。
蛇足ですが、古代・中世の日本では、時の権力者の方針により、仏教と儒教を行ったり来たりしていたようです。
このふたつに対しては、日本人として理解できる肌感覚がありますが、なぜそこで道教が3つ目の選択肢として根付かなかったのか。謎であるとともに、道教のスローライフ的な教えが興味深く、少々惜しい気がします。