軒並み値上がり、野菜も然り。今までスーパーで100円台で買えた葉物が200円台後半になっている。伸ばした手を引っ込めて、はたと考え込んでしまう。本当は何種類か欲しい葉物を二つでやめておく。「値上がりだって」なんて、いよいよ笑って言えなくなってきた。
かぶ、春菊、水菜、ほうれん草、ちんげん菜。ある日、近所の人に透き通るような緑の葉物を頂いた。スーパーで買ったらお札が必要になるくらいの量だった。鍋も気軽にできないな、と思っていたところに惜しみなく届けられた野菜。玄関先に現れたみずみずしい一山は、私の内側をすくいあげてくれた。
その日の晩ごはんは決まった。
まずは鶏がらスープの出汁を用意する。豚ひき肉にささがきごぼう、卵、味噌、少しの砂糖を加えて作る肉団子。沸いた出汁にポトリと落とす。きのこや豆腐、白菜を加え、そしていただいた葉物たちを思う存分ふわっとのせる。そうそう忘れちゃいけない、お餅も具の間に忍ばせて、しばし蓋をする。
湯気の向こうから「ほお〜、うまそう!」と声があがる。皆で鍋に手を伸ばす。水菜の先からは出汁がポタポタと溢れ、しみじみと、本当にしみじみと、おいしかった。ありがとうございます、と思った。
思いがけない、ありがたい贈りものだった。今まで、こういった出来事にどれだけ助けられてきただろう。
私がこれまで何とかやってこれたのは、いつだってそばに「人」を感じてきたからだ。
ここにあなたがいる。ここに私がいる。その実感を得られることで、昨日よりも前を向けた。
その週末、遅ればせながら春菊と小松菜とほうれん草の種を蒔いた。今からだと遅いかもしれないが、少しずつでも育つと良いなと思って今日も畑に足を運ぶ。もし上手く育ったら、今度は私が誰かに届けたいと思う。
写真左は、一緒に届いたポン菓子。その人はポン菓子とは言わず「ガリ」と呼ぶ。「昔は、機械を持った人が近所を回ってきた」と教えてくれた。