「松子さんの炭」が届いた。
30キロのお米が入る袋いっぱいにぎっしりと入っている。
「松子さんの炭はキンキン、キンキンと音が鳴る、とても良い炭やきね。そういう炭は長持ちして火力が強いんよ。」と、届けてくれたみちさんが教えてくれた。
2018年2月18日に行った「シルクスクリーン&くるくる市」のイベント。この日、手作りぜんざいを七輪で温めて出すことにした。七輪には炭が必要だが、家にあった分だけでは足りなかったので買うことにした。
もちろんお店で買うこともできたけれど「みちさんに聞いてみよう」と思いつく。
みちさん、こと岡林孝通さんは土佐町の黒丸地区で炭を焼いている。早速電話してみると「僕がつくってるのは竹炭やき、あっという間に燃えちゃうから広葉樹の炭の方がえいと思う。心あたりを聞いてみるから。」と言う。
次の日連絡があった。
「種田松子さんが炭を分けてくれるって。松子さんのご主人が10年前に焼いた炭を大事に取っておいたのがあるから、それを使って、って。」
種田松子さん。土佐町役場から車で約50分の山の中、16世帯28人の黒丸地区に住んでいる。
炭を焼いた松子さんのご主人は、8年前に亡くなったのだという。
大切な炭なんやないかな…と言うとみちさんは言った。
「『鳥山さんが炭を分けてほしいって言ってる』と伝えたら、松子さんは『あ、鳥山さんねえ』ってちゃんとわかってた。」
少し話をさかのぼる。
2017年7月に黒丸地区で行ったパクチーフェス。
その時にたくさんのゼンマイを提供してくれたのが松子さんだった。乾燥させた太くて立派なゼンマイが大きな袋いっぱいに入っていた。その量を作り上げるのにどんなに手間暇かかるか、土佐町で暮らしているとそれはわかる。
せめてものお礼にとパクチーハウス東京の佐谷さんと一緒に家に行き、フェスで作った料理の数々を詰めたお弁当を届けたのだった。
松子さんはその時のことを覚えてくれていた。
その7ヶ月後に松子さんから炭を分けてもらうなんてことは、想像もしていなかった。
今までしてきたことがどこかでゆるやかに結ばれて、新たな出来事となって目の前に現れる。
あの時と今は、実はつながっていたのだといつもあとから気づく。
松子さんはシルクスクリーンのイベントに来てくれたので直接お礼を伝えることができた。「使ってくれてうれしい」という言葉がありがたかった。
松子さんの炭でちょうどよく温まったぜんざいをみんなが美味しそうに食べていた。
松子さんのご主人は、自分の焼いた炭が10年後、こんな風に使われることを想像していただろうか?