イズセンリョウはサクラソウ科イズセンリョウ属の常緑の低木です。
正月の縁起物として人気の高いセンリョウ(千両)に似ていて、静岡県の伊豆山神社に多く自生が見られることからこの名が付いたとされます。
土佐町では大谷の琴平神社があるスギ林の中に群生していて、果実が熟す12月上旬を待って見てきました。
雌雄異株(※しゆういしゅ)のイズセンリョウは雌株にしか実がつきませんが、直径5㎜ほどの小さな球形の果実が乳白色に熟していっぱい生っていました。
白い果実は珍しく、冬のうす暗い林内に広がる姿はなかなか目立ちます。
センリョウに似ていると言われながら、現物に接してみるとだいぶ違います。分類学的にもセンリョウはセンリョウ科ですから、サクラソウ科のイズセンリョウとは縁遠い関係になります。
さてそのセンリョウが神社の境内にありました。
大きな株に朱色の可愛らしい実がたくさんついています。
土佐町では野生のセンリョウはまだ確認されていませんので、神社の景観に配慮した誰かが植えたものなのでしょう。
さらに林床に目を凝らしてみるとヤブコウジ(藪柑子)もありました。
草丈10㎝ほどの小さな木本です。
かつては葉に斑が入るヤブコウジが好事家の間で人気を呼び、多くの品種がつくられたそうですが、これは間違いなく自生です。朽ちかけた杉落葉(すぎおちば)の上に競争でもしているかのようにたくさん出ています。
ヤブコウジの別名はジュウリョウ(十両)。センリョウよりも少し大きな赤い実で、これも正月の門口を飾る縁起物です。
千両と十両がそろえばもう一つ、どこの庭にもよく植えられるマンリョウ(万両)もあるのではないかと探してみたところ、ありました。
神社のすぐ近くの日当たりの良い藪の中で、直射日光や強風を避けるようにして、真っ赤な実をたわわに吊り下げています。
どこかの庭で咲いた花の種が飛んできたのでしょうか。鳥が運んできたのかもしれません。
マンリョウも野生種は土佐町では発見されていません。
ちなみにヤブコウジ(十両)とマンリョウ(万両)はサクラソウ科ヤブコウジ属に分類されており、イズセンリョウとはやや近縁ということになります。
正月の頃に小粒の赤い実をつける植物は縁起物として昔からもてはやされ、十両、千両、万両以外にも一両と百両、それに億両というのもあるそうです。
イチリョウ(一両)はアカネ科のアリドオシ(蟻通)のことで、百両と呼ばれるサクラソウ科のカラタチバナ(唐橘)と共に見たことがありません。
アリドオシによく似たツルアリドオシの赤い実は見かけますが、これは一両とは呼ばないそうです。
億両は山の樹林下に自生しているミカン科のミヤマシキミ(深山樒)のことで、果実の直径が大きいものは1㎝ほどになります。
群生する光景は見事ですが、果実には猛毒が含まれていると言われます。
ミヤマシキミに限らず、この類の赤い実はほぼほぼどれも有毒と思っていた方がいいのかもしれません。
※雌雄異株(しゆういしゅ):雌花(めばな)と雄花(おばな)を別々の株につける植物のこと