分類ラン科エビネ属の常緑多年草
分布本州、四国、九州、および朝鮮半島、台湾、中国に分布
概要花期は7~8月
撮影土佐町/2023年、2022年、2021年
夏に花が咲くことからナツエビネ(夏海老根)と呼ばれます。
地下茎がまるでエビのような形をしており、日本の「エビネ」類の中で唯一夏に咲く種類です。
土佐町で自生が確認されているエビネ属は春が花期のエビネとサルメンエビネ、そしてこのナツエビネの3種です。
いずれも生育地が限られており、個体数も少ないため高知県では絶滅危惧種(※ぜつめつきぐしゅ)に指定されています。
葉は縦ジワが目立つ長い楕円形で3~5枚が束生します。
花茎を伸ばして淡い藤色の花を多数つけますが、この花の持つエレガントな雰囲気は他のエビネ属では味わえないかもしれません。
主に渓谷や山地の樹林下に自生するようですが、私が知っている土佐町の自生地は全箇所スギヒノキ人工林内のやや湿り気のある林床です。
花期になると自生地のどこかへ花を見に出掛けてみるのですが、ナツエビネは毎年様子を変えています。
良い悪いは別にして、完璧な写真の撮れない確率が高いような気がします。
昨年は8月中旬にA地へ赴きました。
ちょっと様子が変です。花茎が途中で黒く変色しています。蕾の状態で腐ったり、咲きかけながら朽ちてしまったり、どの株もまともに開花していませんでした。
高温障害か植物ウイルスの感染か、どちらかの病気のようです。
因みにナツエビネは乾燥と真夏の高温が大嫌いだそうです。
一昨年はB地へ。
8月下旬のことでちょうど花の盛りです。
草丈が低く花数も多くはありませんが、どの株もやや濃いめの花が優美に咲いていました。
今年は、4月に葉を見つけていた新たな場所です。標高900mほどの平らなスギ林で、ざっと20~30株はありそうな気配でした。
7月下旬には蕾のついた花茎の確認も済ませており、満を持して盆明けに花好き4名のグループで出掛けましたが‥
何と‥
どの株も病気、全滅です。
やや気落ちしての帰途。
メンバーの一人が斜面に楚々として立つナツエビネを見つけました。
きれいに花を咲かせています。
この1株ですっかり気分は変わり、心地良い下山になりました。
※絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ):絶滅のおそれが生じている野生生物のこと。植物の場合の危機要因は ①園芸用採取 ②森林伐採や土地の開発 ③シカなどによる食害 等々