マメ科ネムノキ属の高木です。
大きくなると独特の枝ぶりになって夏にはもってこいの緑陰を作ります。
「この木なんの木 気になる木 名前も知らない 木ですから ~」
こんな歌詞が流れ、大きな傘のような枝を広げた木が出てくるテレビのCMを見たことはありませんか。ハワイ・オアフ島の公園にあるモンキーポッド(別名アメリカネムノキ)という木です。20年ほど前に実物を見たことがあるのですが、樹高は20mを超え、幅が40mほどもある大樹です。ネムノキとは比較にならない大きさですが、同じネムノキ属で花や葉は見間違うほど似ています。
ネムノキは落葉樹で日本をはじめ中国大陸や東南アジアに分布し、モンキーポッドは熱帯アメリカ原産の常緑樹です。
ネムノキは河原にも山地にも生え、夏になると枝先にピンクの花を咲かせます。
夕方咲いて、あくる日の昼には傷(いた)んでしまう一日花だということなのですが、昼間の暑い日差しの中でも花が見られないようなことはありません。
一つの花序に30~40個もの花が付き、その内の数個は常に咲いているような感じでふわふわしたオシベが目立ちます。
深い緑をバックにすると紅色がさらに濃く、鮮やかです。
ネムノキの葉は鳥の羽根のような形をしています。
この写真の中央にある葉は小葉が1片欠けていますが、10対の小葉をもつネムノキです。これで1枚です。2回偶数羽状複葉と呼びます。
「複葉(ふくよう)」はサクラやアジサイのような単葉とは異なる、「羽状(うじょう)」は鳥の羽根のような、「偶数(ぐうすう)」は最頂部の小葉が対になっている、「2回」は小葉もそれぞれの再頂部が対になっているということを表します。
葉は、暗くなると左右の小葉がくっついて両手のひらを閉じたようになります。その姿からネムノキは夜になると眠る木で、「眠りの木」が転じてネムノキという名前になったと云われます。
昼間は葉を広げて光合成を行い、夜間は葉を閉じて水分の蒸発を抑えるようですが、昼でも強烈な高温や直射日光に晒されるときには葉を閉じてしまいます。
採集した葉を花瓶に挿して暗い場所へ置いてみたところ、あっという間に葉を閉じました。樹上のままなら葉は垂れ、小葉同士もくっついてしまう様です。
ネムノキの中国植物名は合歓(ごうかん)。これは夜になると左右の小葉が重なり合って閉じるので、歓びが合わされるのでめでたい木という意味です。中国では夫婦円満の象徴とされているそうです。日本では漢字で合歓木と書き、「こうかぎ」と読んだりもします。
ネムノキの樹下には花がたくさん落ちます。
林内や草地ではほとんど気が付きませんが、道路の上に樹冠がある様な場所では面白い光景が見られます。
土佐町地蔵寺から和田に向かう奥山の道路のアスファルト舗装の上にネムノキの花が散らばっていました。結実が心配されるほどの数ですが、不思議なことに、豆果は秋になるとちゃんとぶら下がります。
実際のところは分からないのですが、「結実数を自ら調整しているかもしれない」という説があります。