土佐町の絵本「ろいろい」。コロナ禍の数年も挟んで、約5年かけた長期プロジェクトとなりました。
完成した「ろいろい」は、ジャバラ型の少し変わった形をした絵本。ながーいページを伸ばすと、そこには土佐町の実在の風景や文化、人々が描かれています。
表面には春と夏の町。裏面には秋と冬。
15回に渡る記事で、絵本「ろいろい」を1ページずつ解説していきます。
秋は、黄金色の棚田。
ろいろい ろいろい。
次にやってきたのは高須地区の棚田。毎年、四季折々の美しい姿を見せてくれる棚田には県内外からも多くの人が訪れます。
ろいろい ろいろい
こがねいろにそまったたなだ みのりのあき
さらさらと いなほをゆらすかぜがふく
このだいちをたがやしてきたひとたちの こえがきこえる
なによりのごちそう しんまいおにぎり
「ああ うまいにゃあ」
秋には、黄金色の稲穂の上を気持ちの良い風が通り抜けていきます。その風の道を先人たちもきっと見ていたことでしょう。棚田を見つめていると、この大地を耕してきた人たちの声が聞こえてくる気がするのです。
↓高須地区の棚田は「土佐町ポストカードプロジェクト」でも何度も登場しています。
土佐芝刈り唄
土佐町に昔から伝わる民謡「土佐芝刈唄」。化学肥料などなかった時代、柴を刈って肥料として田んぼに入れていました。その作業は重労働で、「山のこっちでも向こうでもお互い励まし合う」ために唄っていたといいます。
そのお話が「土佐町の民話」の中に書かれています。
この唄の歌い手が池添博喜さん。2019年秋、稲刈りがひと段落した頃に、棚田で「土佐芝刈り唄」を歌っていただきました。朗々と歌い終わった池添さんの晴れ晴れとしたお顔が印象的でした。
↓こちらは池添さんに唄っていただいた時の動画です。
↓土佐芝刈り唄にまつわる話をもう一つ。こちらも「土佐町の民話」に掲載されています。芝刈り唄の全歌詞も記載されています。
田んぼの三角
田んぼに立っている三角の存在。このように藁の束を乾かして置いておき、乾いた頃にあか牛農家さんが取りにきて、あか牛の餌になります。お米どころであり、あか牛が育つ土佐町だからこその循環です。
この三角の名前は何という名前なのか?聞いてまわったところ、「わらぐろ」「わらすぼ」「すぼつき」と3つの候補が出てきました。
何だか懐かしい、土佐町の原風景のひとつです。
彼岸花団子
秋、田の畦に咲く彼岸花。昔、この彼岸花の球根を団子にして食べたという話を司馬遼太郎さんの編集者だった窪内隆起さんが書いてくれました。
彼岸花の球根には毒があり、そのまま食べることはできないので、水にさらしてゆがいて、また水にさらして…を何度も繰り返す。
やっとできた団子はほぼ味がなく、砂糖醤油をつけて何とか食べられるというものだったとか。食糧の少なかった時代、飢饉の時の大事な非常食だったそうです。
赤い彼岸花の存在は、いくつもの時代を経て今があることを思い出させてくれます。
土佐あか牛を育てる
土佐町には、土佐あか牛を育てる畜産農家さんがいます。土佐あか牛は、高知県の山間部を中心に飼育されている褐色の毛色をした牛で、年間300~400頭しか出荷されていない貴重な品種です。
土佐町にはかつて100軒ほどの畜産農家があったそうですが、現在は約30軒ほどに減少しています。
近くで見ると、つぶらな瞳で優しい顔をしているあか牛。日々、農家さんに大切に育てられています。
↓畜産農家の沢田健次さん・智恵さん。「4001プロジェクト」で撮影させていただきました。
↓澤田清敏さんといち子
↓上田義和さんには、土佐あか牛の出産を見せていただきました。
柚子の収穫
秋、土佐町では柚子の収穫時期を迎えます。澄んだ黄色のコロンとした柚子の香りは爽やかで、全国に送られています。
その柚子畑で撮影させていただきました。写っているのは、柚子を育てている田岡さん一家の子どもたちです。
ろいろい ろいろい。
今年収穫した新米のおにぎりをいただいて、おなかいっぱい。
さあ、さあ、元気に歩いていきましょう。