土佐町の絵本「ろいろい」。コロナ禍の数年も挟んで、約5年かけた長期プロジェクトとなりました。
完成した「ろいろい」は、ジャバラ型の少し変わった形をした絵本。ながーいページを伸ばすと、そこには土佐町の実在の風景や文化、人々が描かれています。
表面には春と夏の町。裏面には秋と冬。
15回に渡る記事で、絵本「ろいろい」を1ページずつ解説していきます。
ページ2は春の山
前ページ陣ヶ森から出発し、主人公の男の子が向かうのは、春の山。
冷やい冷やい冬を抜けた先に待っているのは、春!
待ちに待ったこの季節、土佐町の人たちは春の仕事に勤しみ始めます。道々で出会う町の人たちから「せわしい せわしい」と言う声が聞こえてきそうです。
ろいろい ろいろい
さんさい めをだす はるのやま
ぜんまい わらび いたどり たらのめ
山の恵み、山菜たち
春の山は忙しい。春の気配が感じられるようになると、あっという間に山菜たちが顔を出します。
ぜんまい、わらび、イタドリ、タラの芽…。
ぜんまい畑で
ぜんまいはポキンと折って、腰のカゴへ。ふわふわした綿毛を取って、ゆがいて、干して、揉んで。干して、揉んで…。何度も何度も繰り返す。よく揉むほど、美味しいゼンマイになるそうです。昔から、山の人たちの貴重な収入源でした。
ぜんまいの収穫の様子は「キネマ土佐町」の春篇にも出てきます。開始後2分から、春のぜんまい畑の様子が伝わることと思います。
ぜんまいの収穫を見せてくださったお二人、長野伊勢喜さんと澤田都美子さん。ぜんまい畑で親子二人で撮影しました。
わらびの収穫
上津川地区の高橋通世さんの山でわらびを収穫させてもらいました。束にしてゆがき、灰をまぶしてアクを抜きます。
アクを抜いたワラビは卵とじがおすすめです!
待ったなしで、次から次へと目を出す山菜たち。他にもイタドリは、皮を剥いで、塩漬けに。たらの芽はそのまま天ぷらに。一年中食べられるように乾燥させたり、塩漬けにしたり…。一つ終わったと思ったら、また次が。本当に忙しい季節です。
苗床作り
この時期は、苗床作りも。トレーに種籾をまいて発芽させ、稲の赤ちゃんを育てます。この仕事の良し悪しが、その年の稲の出来を左右すると言って良いほど大事な仕事です。
稲叢山の桜
いなむらやまの さくら いろづき
とりたちのこえ たにまに ひびく
やまわらう はるがきた
ぃよいよ せわしい せわしい
土佐町の最高峰稲叢山。標高1,506mの山々の麓にある「一の谷」には、谷種子さんが植えた桜が色づき始めます。この場所は標高が高いので、高知で一番最後に咲く桜と言われています。
一の谷はかつて、稲村ダムを作るために掘り返された岩や石が転がり、荒れ果てた土地でした。種子さんは1998年から現在まで、約6,152本の桜や広葉樹を植え続け、今では多くの人が訪れる場所となりました。
種子さんのことを書いた記事はこちら。↓
アメガエリの滝も
稲叢山へ向かう道の途中には、アメガエリの滝も。編集長の石川が取り組む「土佐町ポストカードプロジェクト」の記念すべき1枚目が、月夜のアメガエリの滝でした。
滝の周囲には遊歩道や吊り橋もあります。山が蓄えた水のゆたかさや、自然の壮大さを感じられる場所です。
春の山を抜け、さてさて次は?
ろいろい、ろいろい。続けて歩いていきましょう。