私は小学校に入る直前、能地より森地区へ引っ越してきました。
以来60年、ずっと今も森に住んでいます。
森中学校の東隣です。
森中学校は今は廃校になってしまい、校舎は取り壊されてしまいましたが、
運動場はそのまま残っています。
運動場の周囲に植えられた桜は、大きな木となり毎年見事なピンク色の花を咲かせています。
その運動場の東門から西門へ突っ切っているのが、運動場が出来る前からの地域の道だったそうで、
当時も中学生が使っていない時は、近所の人たちはみんなこの運動場を利用していました。
私の母も当然、買い物に出る時はこの運動場を利用していました。
母は、心臓病を患っていて入退院を繰り返していましたが、
家にいる時、買い物はいつも母の仕事でした。
私達姉妹は学校から帰ってきて、母の姿が見えないと、じっと運動場の方を眺め、母を待ちました。
母の姿が西の方に見えるや否や走って行って、
母の手から重たい醤油ビンや買い物かごを取り上げ、母に負担をかけさせまいとしたものでした。
しかし、
母はずいぶん元気になっていたのに、突然37歳という若さで亡くなってしまいました。
心臓発作でした。
・・・が・・・
運動場の端っこにいる買い物かごを下げた母の笑顔は今も心の中にあります。
それから十数年がたち、私も結婚。
子供もできました。
長女が小学校へ入学。入学式も終え通常の勉強が始まったある日、運動場の西の方から大きな声が…。
何だろうと外へ出てみると、
「今日は、おしゅくだいが出たんだぞぉ~!」
なんと、意気揚々とランドセルを背負って帰ってくる長女の姿が、運動場の真ん中に。
はつらつと、太陽のように明るい長女の姿。
時は違えど、同じ運動場の道をこちらへ向かってくる二つの笑顔。
私が15歳と27歳の時の事でした。
今、その運動場は地域の方たちの駐車場として使われていますが、
・・・想い出はいつもそこにあります。・・・