四年前から、「天ぷらカー」に乗っている。
WVO(Wasted Vegetable Oil)と呼ばれる使用済み天ぷら油をろ過して、ディーゼルエンジン車の燃料として利用できることを知ったとき、「これだ」と思った。ゴミとして廃棄されるはずの食用油を集めて有効活用できる、しかも生活に不可欠な車が動くなんて、素晴らしすぎる。まだまだ使えるのに捨てられてしまうものを活用して生活の一部としている僕らの「もったいない暮らし」と相性が良いはずだ。
奥さんのお腹に三番目ができて、それまで乗っていた軽自動車をより大きな車両に買い換える必要があった。すでに天ぷらカーに乗っていた友人に和歌山県の車屋さんを紹介してもらい、中古のディーゼル車を購入、WVO仕様に改造してもらった。改造といっても、システムは至ってシンプル。廃油用タンクや熱交換器などを増設し、切換え弁を取り付け、軽油でも廃油でも走れるようにする。もちろん合法で、車検証に「バイオディーゼル燃料100%併用」と追加記載してもらえば良い。
廃油は町内外の店舗や施設、個人からいただいている(関係者は「油田」と呼ぶ)。通常、使い終わった天ぷら油は、固めたり、新聞紙等に染み込ませて廃棄しなければならず、処理に手間が掛かる。それらを回収することで、お互いにメリットが生まれる。利用できる廃油は、サラダ油やなたね油などの植物性食用油。ラードのような動物性油は気温が低いと固まってしまうため使えない。オリーブ油も同様の理由で不可だ。また水や洗剤などが混入していると、処理に時間が掛かったり、エンジンを痛める可能性があるので、取引している方に理解してもらった上で、協力をお願いしている。一番上等な油は、期限切れの未使用植物性油で、これならボトルからタンクに直接入れて使える。また、ある店舗からは廃油と一緒に使い終わった割り箸もいただいている。割り箸は焚き付けとして優秀で、火を熾すときに重宝している。
集めた廃油はタンクに貯めて、しばらく放置し、不純物を沈殿。その後、上澄みを数回フィルターに通して、ろ過すると綺麗な飴色の油になる。これだけの作業で、捨てられる運命だった廃油が、燃料へと変身する。
燃費は軽油とほとんど変わらない。というより、もらってくる廃油燃料に燃費という観念はあまり必要ない。
良いことづくめというわけでもない。現行のディーゼル車は大きな車両が多いので、自動車税や重量税は軽自動車より高額となる。廃油を集め、管理するにも手間と時間が掛かる。油の品質や精度によっては、エンジンが掛からなくなったり、故障する可能性もある。こまめな点検とメンテナンスが必要だ。しかし、年間の走行距離が二万キロを超える僕たち家族にとって、燃料の大部分を廃油で賄えるのは大きな利益だ。
僕が天ぷらカー所有に踏み切った、大きな出来事がふたつある。
後編へ。
写真:徳島県上勝町にて。燃料を自給するようになって、遠方に出掛けることが増えた。
山本博子
はじめまして…
以前、英語の教科書で、
天ぷら油?食用油?で世界一周?みたいなことをランクルでされた日本人のカメラマンの方の文章をざっと読みました。
道々で使用済みの油を集めておられました…。
それを思い出しました‼️
渡貫洋介
山本さま
はじめまして、渡貫です。コメントをありがとうございます。
ご覧になったのは、山田周生さんのトピックでしょうか?天ぷらカー繋がりで、笹のいえにも何度かいらっしゃったことがあります。彼は今でも廃油油濾過装置を搭載した車を走らせて全国を走り回っています。
英語の教科書に載っているなんて、スゴイ!
KAZU
初めまして、渡貫様。
楽しく拝見させていただきました。
私が天ぷらカーに興味を持ってから2年が過ぎました。自分のクルマも天ぷらカーに改造たいと考えていましたがなかなかできないでいました。
ディーゼル車をやっと手に入れ、どのような部品が必要かを調べております。
いろんな方がやられているようで、ブログ等でなんとなく分かってきましたが、自分は大分に住んでおり、近くでやられている方がいなく、また部品とかは販売しているかもよく分かりません。素人な自分なんかでも出来るものなのでしょうか。
ぶしつけな質問で申し訳ございませんが、お応えできる範囲でいただければ幸いです。
渡貫洋介
KAZUさま
はじめまして、コメントをありがとうございます。
天ぷらカーにするための車を購入されたとのこと、これから楽しみですね。
僕も車に関して全くの素人から(今もあまり変わりませんが)この世界に足を踏み入れました。WVO化すれば、その部分のメンテナンスは基本的に自分ですることになります。リスクもあります。
自力で完成させてしまう強者もいますが、最初は詳しい方に頼むか、一緒に作業することをお勧めします。ワークショップ形式で参加できるイベントもあるので、参加するのも良いかもしれません。運用に関しては自己責任ですが、だからこそ、諸先輩方と繋がり最新の情報を入手することが大切だと思います。
燃料が自給できれば、暮らしがもっと楽しくなりますよ!応援してます。