「ワシらぁが子どもの頃にはもうあった。誰が置いたのか、どうして置いたのか・・・」
土佐町役場の駐車場の片隅にひっそりと佇むお堂があります。
その中には一体のお地蔵さん。
そのお地蔵さんは、顔と手が白く、体は全体的に緑色で袴の部分が黄色。
白い顔には、黒いラインで目と瞼と口が描かれています。
そのお地蔵さんは化粧地蔵と呼ばれています。
最初に「化粧地蔵っちゅうのがあるんじゃ」と聞いた時は、いわゆる女性がするお化粧を想像したけれど
そうではなく、全体的に色が塗られている、そんなお地蔵さん。
「お四国巡拝みたいなことをして回りよった人、といういわれがあるけんど定かじゃないねぇ」
そう教えてくれたのは和田富雄さん。土居に住む80歳。
両サイドにも石像があり、こちらは欠けたり頭がなかったり。
「ワシらぁが子どもの頃にはもうあった。誰が置いたのか、どうして置いたのか・・・」
「お正月とお彼岸にはお大師様と一緒にお祭りするねぇ。お膳とお茶を用意して」
「地域を守ってくれゆうお礼にね」
お大師様と阿弥陀如来が、化粧地蔵が祀られているお堂の裏側に置かれています。
そのお堂の中には、昭和62年にこの化粧地蔵のことを取材した高知新聞の記事が
切り抜かれてクリアファイルに入った状態で置かれていました。
その記事は、喫茶「みなみ」の主人である和田裕吉さん(当時43歳)に聞いた話でした。
この化粧地蔵は、九州の山伏がここへ来て行き倒れになったものをお祀りしたものだと言われているとのこと。
もとは濡れ仏だったものを裕吉さんのお母さんが小さなお堂を作って安置されたとのことです。
この記事が書かれる数年前、裕吉さんが夜中にふっと目を覚ますと、
お風呂場に煙がもうもうと立ち込めているのを発見。
朝まで寝ていたら火事になるところだったけれど、目が覚めたのはお地蔵さまが助けてくれたのだ。
そう思ってそれ以来毎月十日と二十日にはお菓子を供えてお参りしていたそうです。
今でも、工事などでここを通る、という時などは建設会社の社長さんがお供えをしてお参りし、
「ちょっと通らせてください」とお願いするとのこと。
文:和田亜美 絵:川原将太