稲刈りが終わった田んぼに、お米を干していたハゼがまだ残っている。そこには大抵、小豆が干してある。
細長いさやがたくさんついている小豆は根っこから引き抜かれ、いくつかの束となって、ハゼ干しされている。この時期はからりとした天気が続くので、よく乾く。
12月の天気の良い日、近所のおばあちゃんが田んぼに大きなゴザを広げ、一人座っていることがあった。小豆の束を左手に握り締め、右手に持った木槌で、ゴザに小豆を叩きつけていた。ザン、ザン、ザン、と地の内側から聞こえてくるような音が耳に残った。そうすることで小豆がさやから飛び出すのだ。ゴザ一面に、赤茶色をした小豆の粒が散らばっていた。
全部叩き終えると、ゴザを半分にたたんで真ん中に小豆を集め、ざあっとざるに移す。そして、ざるを振りながら小さな葉クズを落とし、小豆だけを残す。
小さな粒々は、一人前の顔をして艶々としていた。
おばあちゃんは、この小豆であんこを作った。そして、自家製のもち米でおはぎやお餅を作ってよく届けてくれた。これがまた得も言われぬ美味しさで、おばあちゃんのおはぎが届いた日には、子どもたちは嬉々として頬張っていた。
小豆は全部使わずに、来年の種として一部取っておく。毎年毎年、何十年も、おばあちゃんは、そうやって種を取り継いでいるのだ。
先日、「ぜんざいでもしたら美味しいよ」と小豆をいただいた。小豆はあんなに小さいのに、集まると案外重い。
ぜんざいもいいし、お赤飯もいい。少し取っておいて、来年、裏の小さな畑で育ててみようか。
目の前の小豆の向こうに、果てしない数の先祖たちの存在を感じる。そんなことを思いながら、この小豆をどうやって使おうか考えている。