「天南星」とは、サトイモ科テンナンショウ属植物の塊茎(かいけい)を乾燥したもので漢方薬に用いられ、その類の植物の総称としても使われます。
一風変わった草姿です。鳥足状の葉っぱと花のような仏炎苞(ぶつえんほう)が特徴で、美醜の判断が真っ二つに分かれるような独特の雰囲気を持つ植物です。
上の写真はナンゴクウラシマソウの葉です。鳥足状複葉と呼ばれる1個(枚)の複葉で、複葉を構成する小さな葉片は小葉(しょうよう)と言います。
土佐町では「天南星」の9種の分布が確認されており、毎年3月頃から咲き始め、5月下旬には咲き揃います。
今回、そのうちの6種を紹介します。
「高知県レッドデータブック2022植物編」(※)では、6種のうち2種が絶滅危惧種、1種が注目種に選定されています。この3種はどれも山野草として人気のある花で、人の手による採取が絶滅の最大の危機要因となっています。そんな訳で今回は撮影場所を表示していません。
①ユキモチソウ(雪餅草)
葉は2個、鳥足状に3~5の小葉がつく。仏炎苞は紫褐色、中から丸く膨らんだ真っ白な餅のようなものが覗く。名前は膨れた白い部分を雪や餅に見立てたもの。四国以外ではまれな植物で、環境省レッドリストでは絶滅危惧種に、高知県では注目種に選定されている。
②マムシグサ(蝮草)
葉は2個、7~15の小葉が鳥足状につく。仏炎苞は緑色~淡い紫色で縦に白い筋が入る。大きく成長する個体は1mを超えるものもある。茎の模様が名前の由来になっており、マムシが首をもたげた姿に似ていると言って嫌う人も多い。
③ミツバテンナンショウ(三つ葉天南星)
葉は2個、いずれも三出複葉。暗紫色の仏炎苞は葉より上に出る。名前は小葉が三枚であることに由来する。
④シコクテンナンショウ(四国天南星)
葉は1個、7~15の小葉が鳥足状につく。仏炎苞は濃紫色~帯紫色で縦に白い筋が入る。仏炎苞の口辺部が耳状に張り出して外側に反り返る。四国固有種であることが名前の由来。絶滅危惧種。
⑤アオテンナンショウ(青天南星)
葉は1ないし2個、7~11の小葉が鳥足状につく。小葉の先と仏炎苞の先が糸状に伸びる。仏炎苞は淡い緑色で縦に白い筋が入る。全体的に青いイメージで、仏炎苞が緑色であることからこの名がついた。
⑥ナンゴクウラシマソウ(南国浦島草)
葉は1個、多数の小葉が鳥足状かつ渦巻状につく。小葉の主脈が白い筋状になる。仏炎苞の上部は濃い紫色、その中から糸状のものが長く伸びて外へ出る。その糸状を浦島太郎の釣り糸にみたて、南の方(中国地方・四国・九州)に分布することからついた名前。絶滅危惧種。
因みにウラシマソウは本州、四国を中心に、北海道や九州の一部にも分布する。
※「高知県レッドデータブック2022植物編」:すでに絶滅したり近いうちに絶滅しそうな高知県内の植物の種類やその原因などをとりまとめた本。2022年に改定された。土佐町図書館に所蔵されている。