12月から1月、土佐町では煙たなびく風景をよく目にします。
田にカヤ(ススキ)やカジを集めて火を放つ、野焼き。集められた何箇所かに火を入れると、すぐにパチパチと小さな音をたて、たちまち火が広がっていきます。オレンジ色の炎が高く立ち上がるのはほんの一瞬、しばらくすれば火も音も少しずつ静かになっていきます。
「田んぼの中の方へ草を入れちょいて、火を付ける。田の岸の際で火をつけたら、岸へ燃え移っていくから。燃やしている時は見ちょかんといかん」
野焼きをしていた人がそう教えてくれました。
「燃やさんと、田をトラクターでたたけない。巻き付くきね」
「昔は“秋肥”といって、稲刈りが終わったら、草を刈って田に入れていた。昔は稲刈りが終わったら、食み切り(*はみきり)でザクザク草を切って、田んぼに入れていた。肥料の代わりやね。今はそんなする人は、おらなあね」
燃えた草は灰となって田の土を肥やし、次の年の稲を育む土壌となります。
「雨がぽろぽろするような日に火を付ける。風がビュービュー吹く時にやったら、岸にでもうつったらもう大変よね」
ふと顔を上げると、遠く山間の田からも煙が上がっているのが見えました。
毎年、毎年、繰り返されてきた営み。一年という時間が巡っていくことを感じさせてくれる風景です。
*食み切り…固定された受刃と持ち手のついた包丁の間に藁や草を挟んで切る道具。牛や馬などの餌を「食み(はみ)」と言い、その餌を切ることに使われていたため、そう呼ばれる。ペーパーカッターのような形状。