昨年のNHK朝ドラ「らんまん」で一躍有名になった花の一つがマルバマンネングサ(丸葉万年草)でした。
牧野富太郎がロシアの植物学者マキシモヴィッチに標本を送り、新種と認められて、学名がSedum makinoi Maxim(※セダム・マキノイ・マキシム)とつけられました。
牧野は、自分の名前を学名につけてもらって大喜びしたというエピソードが残っています。
1888年(明治21年)のことです。
そのマルバマンネングサが土佐町で咲き始めました。
マンネングサはベンケイソウ科の多肉植物です。
水分の少ない場所でも平気で育ち、厚みのある葉はいかにも堂々としていて万年でも生きていられるような雰囲気の草です。
マルバマンネングサはその名前のように葉に丸みがあります。
翌1889年には、牧野は大久保三郎と連名で日本人として初めて独力でヤマトグサ(大和草)に学名をつけ、これを皮切りに日本人が次々と新種を発表するようになりました。
日本の植物学史上最も画期的な出来事です。
その2年後の1891年には、牧野はコモチマンネングサ(子持ち万年草)にも学名を命名し新種として発表しています。
一見マルバマンネングサに似ていますが、葉の脇に小さなムカゴをつけるところが異なります。ムカゴは地に落ちて発芽し、これが和名の由来となったものです。
「らんまん」効果で新たに出現したマンネングサもあります。
オノマンネングサ(雄の万年草)です。
土佐町地蔵寺の民家の石垣にずい分以前から在ったみたいですが、確認されることのないまま過ぎていました。
昨年6月に放映された「らんまん・マルバマンネングサ」の後、土地の所有者が石垣のマンネングサを思い出しました。
「あれ?」
「マルバマンネングサとはちょっと違う」
「何だろう」
そんな経過から明らかになったのです。
オノマンネングサは比較的珍しい植物で、土佐町でその生育が確認されたのは初めてのことだと思います。
草丈10~30㎝の大形のマンネングサで葉が3個輪生します。
名前は別種のメノマンネングサ(雌の万年草)に対比したものです。
3輪生の葉のマンネングサは他にも1種あります。
ツルマンネングサ(蔓万年草)といって、葉が特徴的な楕円形をしていて披針形の葉のオノマンネングサとの違いはすぐに見分けられます。
花をつけない茎は蔓のようになって地を這います。
東アジア原産の外来種です。
原産地不明の外来種も咲いています。
オカタイトゴメ(陸大唐米)という名前のマンネングサの仲間です。
「マンネングサ」というよりも「セダム」と言った方が似合いそうで、持ち帰って鉢植えにしたいような雰囲気の草です。
葉は長さがわずか3㎜ほどしかなく、米粒のような形をしています。
「オカ」は海浜地域に多い別種のタイトゴメに対する内陸を意味しており、「タイトゴメ」は米粒のような葉を外米(長粒米)に見立てたものだそうです。
因みに数あるマンネングサの仲間の中で一番早くに咲いて、何処にでもあって、賑やかな黄色で誰の目にも留まるメキシコマンネングサは、今はもう花の時期を終えています。
※セダム・マキノイ・マキシム
マキシモヴィッチが牧野富太郎に敬意を表して学名にその名を織り込んだもの
属名:セダム(セダム属=マンネングサ属
種名:マキノイ(牧野富太郎を表す
命名者名:マキシム(マキシモヴィッチのこと