土佐町に暮らしはじめ、地域の人たちとお付き合いするようになって驚いたことのひとつに、「年齢に関係なく、愛称で呼ぶ」ことがある。
小さい子が年配者をあだ名で呼ぶのは、可愛らしいし、よくあること。加えてここでは、年の離れた大人同士でも愛称で呼ぶことが珍しくない。例えば二十代の人が、30歳年上の先輩を「ちゃん付け」で呼ぶこともある。
この慣習が地域独特のものなのか分からないが、住んでみて納得した。
集落に暮らす人たちが、家族のような付き合いをしてるのだ。
たくさん採れた畑の野菜をお裾分けしあったり、近くを通れば「元気かよ?」と立ち話したり、困ったことがあれば手を貸したり。きっと何代も続いている関係が、親しみを込めてお互いを呼び合うことに繋がっているのだと思う。その会話は相手への信頼を感じさせ、聞いていて安心感がある。ある人との何気ないおしゃべりで、僕の名が「渡貫さん」から「洋介くん」に変わった時は、地域の一員になったような気がして嬉しかったのを覚えてる。
僕ら家族が土佐町にやって来て六年目。仲良くさせてもらっている人が増えるにつれ、その人をあだ名で呼ぶことがある。
けれど、年上の方々を愛称で呼ぶことに、僕は未だ少し抵抗がある。
親の年齢ほどの方に対して「〇〇ちゃん」と声を掛けるのは、やっぱりどこか照れがあり、声が若干小さくなってしまうのだった。