日中はまだまだ暑さが続いていますが、朝夕には虫の声が聞こえ、少しずつ秋を感じられるようになりました。
日が沈みかけた頃、いつもお世話になっている澤田清敏さんが「これくらいあったら栗ごはんができるろう」と、両手にいっぱいの栗を届けてくれました。
もう栗ですか!
驚きとともに受け取った栗は、さっきまで太陽の光を浴びながら土の上に転がっていたのでしょう。じんわりと温かく、小さな水滴もついています。
清敏さんは、かぼちゃとスイカを地面にどんと置き、「これも食いや!」。
ついさっき収穫したのか、かぼちゃのヘタからは汁が流れ出ています。かぼちゃもスイカもずしりと重い。太陽は偉大です。
秋なすと青ゆずがたくさん入った袋も手渡してくれました。
「青ゆずはまだ硬いき、絞れんきね。皮をすりおろして味噌汁に入れてみ!結構うまいで」
清敏さんはそう教えてくれました。
早速、夕ごはんの時に試してみました。
この日のお味噌汁の具は、オクラとえのき、豆腐。
青ゆずをすりおろすと、爽やかな空気が台所に広がりました。お味噌汁をお椀によそい、青ゆずを加えると、もうそれだけで、秋が体に染み渡ります。お味噌汁に青ゆずを加えるのが、しばらく定番になりそうです。
今ある食材を工夫して使い、毎日の食事を美味しく、ちょっと楽しいものにする。この地の人たちの知恵にいつも驚かされます。
その晩、指先に残る青ゆずの香りが、移りゆく季節の存在を静かに伝えてくれました。