分類キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草
分布日本固有種。近畿地方以西の本州、四国、九州に自生する
概要秋に葉を出し、3月に花を開いて、しばらく経つと葉を落として地上部が枯れる。スプリング・エフェメラルと呼ばれるものの一つ
撮影土佐町田井字岡/2022年3月
「雪割」は早春植物を表し、「一華」は1本の茎に1輪の花をつけるという意味です。
葉っぱは汚れたように見える独特の色合いをしており、お世辞にもキレイとは言えないかも知れません。根際から三出複葉(※さんしゅつふくよう)を出し、茎につく葉は3輪生(※さんりんせい)です。
一方、花は可憐です。白くて、淡い紫色を帯びており、日があたると直径3~4㎝に全開します。
萼花弁(※がくかべん)は、12枚前後から20枚を超えるものまで様々です。
学名・Anemone keiskeana
淡い紫色の花に由来してルリイチゲ(瑠璃一華)、葉の裏面の紅紫色からウラベニソウ(裏紅草)の別名があります。
学名はAnemone keiskeana(アネモネ・ケイスケアナ)。アネモネの仲間ということが分かります。
ケイスケアナは幕末から明治時代に活躍した医師で、シーボルトに師事して植物学を学んだ伊藤圭介にちなみます。伊藤は「おしべ」「めしべ」「花粉」などの用語を考案した人で、「日本植物図説」などを著しました。そうした業績が讃えられ、シーボルトらによって「ケイスケ」と命名された学名の植物はマルバスミレやヒカゲツツジなど多くあります。
スプリング・エフェメラル
スプリング・エフェメラルという言葉をご存知でしょうか。
春のはじめに姿を現す短命な花や昆虫たちのことで、日本では植物に対して使われることが多いようです。
春いち早く花を咲かせ、他の植物が生い茂るころには葉を落とし、地下の球根や地下茎などに栄養分を蓄えて休眠してしまう一連の多年草植物のことを指します。その可憐さと早春のつかの間の花という意味で「春の妖精」「春の儚い命」などと呼ばれますが、他の植物たちとの競合を避けるライフサイクルを選んだしたたかな花でもあるのです。
フクジュソウやカタクリがその代表的なものですが、自生種にはなかなか出合えません。イチリンソウは隣の本山町ではあちこちに咲きますが、土佐町ではまだ見つかっていません。ニリンソウは土佐町で数年前に出くわした場所がありますが、その後見ていません。
土佐町でごく身近に咲く花ではアマナ、ジロボウエンゴサク、ムラサキケマンがそうです。これらの開花も間もなく始まることでしょう。
※三出複葉…軸の先端から3個の小葉が出ている葉っぱのこと
※3輪生…茎の1カ所に3枚の葉が輪のようにとりつくもの
※萼花弁…花びら状の萼片のこと(萼はつぼみの時期に花全体を包んで内部を保護する働きがある)