土佐町役場や各所で配布中の「香り袋」。土佐町の障がい者支援施設どんぐりの皆さんが、仕事の合間をぬって、作ってくれています。
木のおがくずと香り袋の説明が書かれた紙を袋に入れる。この一連の作業の工賃が、どんぐりに支払われる仕組みとなっています。
袋に詰めるおがくずは、土佐町の大工さんに分けてもらったものを使用しています。
先日、土佐町上ノ土居地区の大工、森岡忠賢(もりおか・ちゅうけん)さんからヒノキのおがくずを分けていただきました。
忠賢さんは御年89歳。16歳の時から74年間大工として働き、今年9月に引退。74年間の間に、10人のお弟子さんを育て上げました。
最後10人目の弟子が、孫の森岡拓実さん。とさちょうものがたり編集部が今まで大変お世話になっている大工さんです。
忠賢さんは今、これまでお世話になった人へのお礼にと、ヒノキでまな板を作っています。作るまな板は全部で100枚。
忠賢さんの作業場はヒノキのおがくずが山のように積まれ、澄んだ香りで満ちていました。
まな板のない家はない
「70年ばあ、お世話になった人にお礼に配っていくんじゃ。まあ、みんな喜ぶで」
と忠賢さん。
なぜ、まな板を配ろうと思ったのでしょう?
「まな板のない家はないろう。大工は女の人と話すのが根本じゃ。家を建てたり補修したり、大体女の人が先やりをするね。台所、トイレ、お風呂、居間のバランス…。台所の棚にお鍋を入れるにしても、右からなのか?左からなのか?使い勝手がいいように。そういったこんまいことは、男の設計士は頭を使わんぞね」
「女の人が喜ぶことをしちゃったらええなあ、と思って。板切れができたらまな板を作ってや、という人が普段でもおる」
確かに、「まな板のない家はない」。朝昼晩、人は台所に立ち、まな板を使って調理し、食べ、生きている。
大工・森岡忠賢さんは建てる家だけでなく、その家で営まれる暮らしをも見ていたのだと思います。
編集部は大きな袋に3つ分のおがくずをいただきました。これでたくさんの「香り袋」を作ることができます。
そして、大小2枚のまな板もいただきました。小さい方は「パンやまんじゅうを切るのにぼっちり」とのこと。
「木のまな板は、音がえいろう。とんとんとん、って。あたりが柔らかい」
忠賢さん、ありがとうございます。大切に使いたいと思います。
忠賢さんは、自分のご家族の話や大工になった経緯についても話してくれました。それはまた別の記事で紹介したいと思います。