(前編はこちら)
98歳
この日、二軒目のお宅へ。10月末に98歳を迎えた窪内節さんのお家です。窪内さんは90歳まで裏山にハシゴをかけて鎌で草刈りをし、95歳まで畑仕事をしていたそうです。
窪内さんは40年以上毎日書いているという日記を見せてくれました。まずは日付とお天気。その日にしたことや思ったことも丁寧に記してあります。
「新聞を毎日読んで、日記を書く。そしてごはんを食べる。それが私の仕事です」
窪内さんは50代の時、個室に入院している人の付き添いの仕事をしていたそうです。畳一枚分くらいのスペースを与えられ、寝泊まりしながら約10年生活したそう。
「この仕事をして毎月給料をもらえるのがうれしかった」
何度もそう話していました。
パーキンソン病と認知症の方の付き添いでは「歯がない人にはすり鉢ですりつぶして食べさせましたよ。お刺身が好きな人には毎日お刺身を食べさせて。話をよくしてやらないといけないから、よく話もしました」
「それが心の栄養ですものね」と県立大学の小林さん。うんうん、とうなずく窪内さん。
「頑張って100歳まで生きなきゃと思って。晩ごはんを食べたらホッとします」と静かに笑っていました。
同じ敷地内にある隣の家には娘さんが住んでいて、食事を作ったり、畑仕事をしたり。「よくしてもらっています」と話されていました。
娘さんである谷川禮子さんと山下さんは同級生。山下さんは谷川さんに、今日最初に訪れ留守だった家の人の様子を聞いていました。
やはり入院されているとのこと。どうしているのかがわかって少し安心したようでした。地域のつながりとその関係の細やかさが見える一コマでした。
「お医者さんが必要なんです」
かねてから山下さんは、高齢になっても地域で暮らし続け、人生の最後を自宅で迎えられる地域にしたいという思いがあったそうです。
人生の最後を自宅で迎えるためには、まず在宅訪問をする医師がいることが必要です。
在宅医療に対応している医師と連携がとれていれば、自宅で息を引き取った後、速やかに「死亡診断書」を書いてもらうことができるのだそう。(死亡診断書は葬儀や火葬など、さまざまな手続きを進めるために必要なものです)
もし連携が取れておらず自宅で亡くなった場合、警察を呼び、検視を受ける必要が出てきます。検視の目的は、死亡した背景に事件性があるかの確認になるため、自殺や他殺、死亡した経緯に関係なく実施することになります。
「穏やかに人生の最後を迎えるためには、お医者さんが必要なんです」
山下さんがそう話されていたことが印象的でした。
地域で暮らし続けるために
地域で暮らし続け、自宅で人生の最後を迎えたい。それは多くの人が願うことだと思います。
それを実現するために必要なことは何でしょうか。
必要な医療や福祉のサービスにはどのような種類・内容があり、何を利用できるのか。サービスを利用するための相談はどこへ行ったらいいのか。
自宅で人生の最後を迎えるためには、長期的に介護できる家族がいるかどうかも重要だと竜野さんは話していました。そうなると介護する家族のサポートも必要です。
どう生きて、どんな最期を迎えたいのか。それは各個人の自身への問いであり、家族の間での問いでもあるのだと思います。普段から考え、話をしていく必要性を感じました。
自分の人生を生きること。生き抜くこと。それは一体どんなことなのか。答えはひとつではなく、人それぞれにそれぞれの答えがあることなのだと思います。初めて同行させていただいた石原高齢者訪問で、何だか大きな宿題をいただいた気持ちです。
また次回も同行させていただけたらと思っています。
訪問を終え、石原集落活動センターへ戻ると、竜野健司さんが用意してくれたお昼ごはんが。訪問した皆でいただきました。ごちそうさまでした!