伊勢川から溜井へ通じる林道を登りつめたあたりに谷川があって、その少し上の小高く深い茂みの中に、厳島神社がありその前に田が広がっています。
そこは、昔はずっと池じゃったと言います。
いつのころか知らんが松の木を伐って投げ込んでは土を入れて田にしたそうです。
その昔の池にゃ龍神さんが棲んでおいでると言われていました。
そこの近くに杉囲いの家があったそうです。いつのころか、その家の囲いの杉に蛇がやってきて巣をこしらえたそうな。
子をかえしたら困ったことじゃと言いながら、何日かたって、いよいよ明日は除けようと言うことになった晩のこと、もう一日だけ待ってくれえ言うて、夢の中に蛇が出てきて頼んだそうな。
それを聞かずに、明くる日に囲いの木に火をつけて焼き殺してしもうたと言います。
それから、その家は他所に移っていってしもうたが、その人はあついきに水をかけてくれ、水をかけてくれ言うて死んでいったそうな。
えらい熱病じゃったもんじゃが、あの焼き殺した蛇が、厳島の龍神さんじゃって、そんでその人は焼き殺されるように死んでしもうたと言います。
町史(「土佐町の民話」より)