2021年1月から2月にかけて高知県内9市町村の郷土料理を撮影し、製作した動画をご紹介しています。
今回最終回、第10回目は宿毛市で作られている郷土料理「きびなごのほおかぶり」です!
タイトルは、土佐町どんぐりのメンバーさん作
動画タイトルの手描き文字は、おなじみ、土佐町の障がい者施設どんぐりのメンバーさん作。「きびなごのほおかぶり」のイメージとぴったりだと思いませんか?
きびなごのほおかぶりって?
銀色に光る、ころんとしたかわいらしいお寿司。宿毛市の「土佐ひめいち企業組合」の河原多絵さんが作っている「きびなごのほおかぶり」です。横から見ると、ちょうど人がほおかむりをしているように見えることから、この名前がつけられています。
お寿司と聞いたらお米のお寿司を思い浮かべますが、これはおからを使ったお寿司です。一口でパクッと食べられるほどの大きさで、おからはほんのりと甘い味付け。酢と塩でしめられたきびなごとよく合い、いくつでも食べられます。
きびなごのほおかぶりの誕生
「きびなごのほおかぶり」を作り始める前、河原さんは地域のグループで魚のすり身などの加工品を作っていたそうです。しかし、他のグループでも似たものを作っていたため、次第に自分だけのオリジナルなものを作りたいと思うように。そこで注目したのが、漁師であるご主人が捕る「きびなご」でした。
きびなごは、宿毛湾で豊富に捕れる小魚。ご主人が捕った新鮮なきびなごを使って、この地ならではの新しいものを作りたい。そして誰にでも食べてもらえるよう安価で、体に良いものを作りたい。河原さんは知恵を絞りました。
昔から宿毛にはおからを使ったお寿司があったこと、そしてうるめいわしを使った四万十市のおから寿司「ろくやた」からもヒントを得て、「きびなごでおから寿司を作ろう!」と閃いた河原さん。
ボソボソしがちなおからを、どうしたらしっとりと美味しく食べられるか?
広い範囲で販売するために、保存方法はどのような形にしたら良いだろう?
河原さんの幾度にもわたる試行錯誤が始まりました。
手を変え、品を変え、食感や味を確かめる日々。そして、やっと誕生したのが今の「きびなごのほおかぶり」です。
空飛ぶ寿司
この「きびなごのほおかぶり」は、JALのファーストクラスの機内食に採用され、また全国各地のホテルなどでも使われるようになりました。
自分が作るものは、胸を張って「これ、美味しいでしょう!」と言えるものでありたい。河原さんは繰り返しそう話していました。
「正直でありたい」
力強い河原さんの言葉が、今も心に残っています。
そして最近、さらに嬉しいことが。河原さんの跡を継ぐため息子さんが帰ってきたのです。娘さんも一緒にやりたいと話しているとのこと。「きびなごのほおかぶり」がビジネスとして成立しているからこそ、跡を継ごうとする人も出てくる。
郷土料理を守り、引き継いでいく一つのかたちを見せてもらった気がしました。
美しい宿毛湾
河原さんの仕事場は、目の前が海という場所。エメラルドグリーンの海のなか、魚が気持ちよさそうに泳いでいるのが見えました。エイもいるそうです。豊かな宿毛湾のきびなごはピカピカと銀色に光り、透き通るほどの美しさ。
当初、この動画の撮影は2月末を予定していましたが、思うようにきびなごが捕れない日々が続きました。きびなごの旬は4〜6月、無理もありません。3月上旬、「いいきびなごが捕れたよ〜!」と電話をもらったときは心の底からほっとしました。相手は自然。思うようにいかないことだってあります。
河原多絵さんという人
「きびなごのほおかぶり」の撮影のため、打ち合わせの日程を決めたいと、初めて電話をかけた時のこと。
河原さんは「ごはん用意しておくから、お腹ぺこぺこにしてきてね〜!」と言ってくれました。その言葉がどんなに嬉しかったことか!当日、河原さんは、きびなごのほおかぶりはもちろん、「ろくやた」と呼ばれる棒寿司、魚の煮付け、刺身など、海のご馳走を用意して待っていてくれました。
お話するうちに、私(鳥山)は、いつの間にか胸の内をさらけ出していました。河原さんはそれくらい、人間としての魅力に溢れた人でした。
土佐ひめいち・河原多絵さんが作る「きびなごのほおかぶり」は通信販売もしています。
宿毛ならではの郷土料理を味わい方はぜひ!
土佐ひめいち
〒788-0274 高知県宿毛市小筑紫町栄喜566-66 090-5914-9174(河原多絵さん)