ある日、山道を車で走っていると、子狸に遭遇した。
減速しつつ、「タヌキがいるよ」と子どもたちに伝えると、「どこどこ!?」とフロントガラスに顔を寄せてきた。
離れたところに車を止めて、車内から静かに観察する。向こうもこちらに気づいている様子だが、逃げるわけでもない。ぎこちない動きから、怪我か病気をしているかもしれない。周りに親の姿は見えなかった。臆病そうに上目遣いでこちらをうかがっている子狸が少し気の毒になって、できるだけ迂回して、その場を離れた。
あんなに小さな狸は見たことなかったので、僕はとても得した気分になった。
猪や猿、ハクビシンに兎に山鳩など。山で野生動物を見かけるのは珍しいことではないけれど、その出会いのたびに、僕たちと彼らの暮らしがとても近くにあるのだと感じる。確かに、田畑を荒らされたり、野菜を食べられてしまったり、困ったこともある。人間も動物も生きていかなければならないわけで、どうやって共存していくのか、あれこれ考える。
そういえば、小中学生時代の僕のあだ名は「タヌキ」だったことも思い出した。