分類キジカクシ科オモト属の常緑多年草
分布日本、中国原産。日本では宮城県を北限に本州、四国、九州に自生する
概要葉の長さは40㎝前後、左右対称に整然と広がる。先端は尖り、縁は著しく波打つ。花期は5~6月。茎先へ、淡い黄緑色をした小さな花を円筒状に密生させる
撮影土佐町地蔵寺/2022年1月
オモトは日本独自の感性で改良されてきた園芸植物です。
一年中葉を落とさないことから漢字で「万年青」と書き、長寿や開運を象徴する縁起物として古くから大切にされてきたようです。
栽培の歴史は古く、「茶の湯」「生け花」「能・狂言」などの日本の伝統文化が誕生した室町時代に、生け花の花材として使われたことに始まると言われます。
慶長11年(1606)江戸城の本丸が完成した際には、徳川家康が家臣から寄贈された万年青を大変喜んだという逸話が残っています。余談ですが、徳川三代(家康・秀忠・家光)の花好きは有名な話です。
そんなこともあり、江戸時代には主に大名、旗本の間でオモトの大ブームが巻き起こり、寛政年間には一芽100両(今の500万円)を超えるとんでもない値がついた例もあると言われます。
その後も、青々とした葉を観賞する目的で次々と品種改良が行われ、現在では1000種を超える葉の形状や模様が生まれているということです。
と…、ここまでは園芸種の話。
土佐町には野生のオモトが自生する場所があります。
地蔵寺の標高450~500m辺りの広葉樹の森の中。どなたの所有する山林なのかも知らないまま、2022年元日、年始めにそのオモトを見に行ってきました。
常緑樹のアラカシが柔らかな木漏れ日を届けている林床には、コナラやアカシデなどの枯れ落ち葉がふかふかと積もり、赤い実をつけたオモトが間隔よくいっぱいに広がっていました。
オモトの魅力は葉っぱだけではありません。冬になると緑の葉の中心に真っ赤な果実が実るのです。
酔いしれるほどの壮観な光景、今がまさにその時でした。
これまでも野や山でオモトを見てきましたが、どれも道路や林道のそば、人が住まいした形跡を残す山の中などで、一ヶ所にほんの数株しかなく、純粋に野生のものとは思えないものばかりでした。
でもここは違います。原種ならではの素朴な美しさに溢れる野生のオモトです。
予想外の大群生でした。
<注意>オモトは毒性が非常に強い有毒植物です。根だけでなく葉や実にも毒性があります。特に小さな子供が実などを口にしないよう、注意してください。