今年もお米つくりがはじまった。
いや、厳密には、土つくりやら畔や水路の清掃、整備やらで、一年を通してやることがある。けれど、四月も中旬になり、田んぼに水が入りはじめると、いよいよという気持ちが高まる。
高まったところから、行動に移るまで長い時間が掛かる僕。
今回はご近所さんのご好意で畔を付けてもらったので、田んぼに水が入るまでは早かった。しかし、その後はずるずると作業が遅れ、「そろそろ腰を上げないと予定していた田植えに間に合わない」という日を迎えつつあった。この「そろそろ間に合わない、までやらない」は僕の得意技のひとつで、人生におけるかなりの場面でそうであったよなあ、と遠い目で過去を振り返る。
あの植え方が良いらしい、こうすると楽に除草できるらしい、と地域の方々に教えてもらったりネットで調べては毎年やり方を変えている。今回は「ポット苗」を作ることにした。「みのる式」と名がつくこの方法は、土佐町では一番ポピュラーな育苗法。箱にたくさんの穴が開いていて、そこに土と種籾を入れて苗を育てる。専用の田植え機で田植えするが、根を切ることなく苗を箱から外すことができるので、手植えもし易い。
去年育てた直播苗の苗取り作業がものすごく大変で、あっさり音をあげた僕。今年はみのる式でやってみようと思い立ち、納屋で眠っていたいただきものの資材を引っ張り出して、準備をはじめた。
みのる式用播種機というのもあって、箱に培土を入れるのと種まきを同時にしかも半自動で行える。農家の方々はこれを利用して、何百枚とある育苗箱に播種する。僕が用意する苗箱は80枚、手作業でもなんとか行けるだろうと踏んで、やってみることにした。
まずは土を入れる作業。軽トラの荷台にブルーシートを広げ、土と箱を準備する。折角の手作業なのだから、と実験欲がむくむくと湧き、自家製くんたんを一二割混ぜてみることにした。土(専用培土を購入)の節約と軽量化が目的。土が減れば当然そこに含まれる養分も少なくなるので、どう育つか観察してみる。
普段見かけないことをしていると、大抵子どもたちがやってきて、「父ちゃん、なにしゆうが?(なにしてるの?)」。この日やってきたのは「なんでもやりたい時期」真っ最中の次女。お手伝いだか、土遊びだか分からないけれど、楽しそう。しかし、しばらくして母ちゃんの「おやつよー」の声ですっといなくなってしまった。再びひとり、作業を進める。
手作業だと今まで気づかなかったことが見えてくるから、時間や手間が掛かることは分かっていてもついつい手を出してしまう。ああこの専用土はこんな形をしてて、こんな手触りなんだなあとか、これくらいの枚数なら播種機でやったらあっという間なんだからやっぱり機械は便利だよなあとか。
おやつを食べ終わった娘の遊び相手をしていたら、結局この日は土を入れるだけで終了。箱の土が乾燥しないようにシートで包んで、保管する。播種は翌日以降となった。種を播いたら、苗床に据えて発芽を待つ。