「これ」
差し出された袋を受け取った時、思わずよろめいた。袋をのぞくと、中には溢れんばかりの赤、紅、真紅。目が覚めるような色たちは、今年初めてのすももだった。
袋から一つ手に取るとじんわりと温かく、つい先ほどまで太陽を浴びていたのだとわかる。
「ちょっと、すいーけんど」
「すいー」と言った時の顔が本当に酸っぱそうで笑ってしまった。
すももはすぐに傷み始めるので、無傷のものは冷蔵庫へ。日が経つにつれて熟していくので、冷蔵庫を覗き込んでは取り出して、ガブリとするのは最高。少し傷ついているものはそこだけ取って種を除き、冷凍する。ミキサーでガーッとして、はちみつを加えたら即席シャーベット。またはコトコト煮てジャムにして、かき氷にかけるのも、これまた最高だ。
すももは実がなるまでに3〜4年かかるという。「子どもたちが喜ぶように、すももの木を植えた」という話を何人かの人に聞いた。すももを頬張っていた子どもたちは大きくなり、進学や仕事で町を出て行った。それでもすももは、毎年変わらずに実をつける。町を離れたかつての子どもたちは、夢中で食べた紅色のすももを思い出すことがあるのではないだろうか。
いただいたすももは、かぶりつくたびに汁がぽたぽたと滴れ、 Tシャツに赤い染みができるほどみずみずしかった。