11月の最初の日曜日、土佐町の各地区では運動会が開かれます。
その時に盛大に行われる「もちまき」。
土佐町相川地区では、運動会前日に地域の人たちが集まっておもちを作ります。
前日から水に浸けておいた全部で90キロ(一俵半)のもち米を3回に分けて蒸します。このもち米はもちろん相川地区で収穫したもの。相川地区は土佐町の米どころ。美味しいお米が収穫できることで有名です。
大きな蒸し器にもち米を入れ、その真ん中を掘るようにしてくぼみを作っておきます。
「こうしとくと、火が通りやすいきね!富士山みたいな感じよ。」
蒸し器の口に布をかけ、ひもで結びます。
「あとでぷーっと膨らんでくるきね!それから30分よ!」
ぷーっと膨らんだ!
30分後、美味しそうに蒸しあがりました。
もち米をもちつき機に入れ、ガタゴトガタゴト、ガタゴトガタゴト…、もちつき機4台がフル稼働。3升のおもちがつける餅つき機は相川地区の人が自宅から持って来たもの。こんな大きなもちつき機がそれぞれの家にあることが驚きです。この地の人たちにとって自分でもち米を育て、おもちをつくことは「日常」なのでしょう。実はそれは、とてもゆたかなことなのだと思うのです。
おもちがつき上がりました。ぴかぴか、つやつやしながら、ホカホカと湯気をあげています。
もちつき機がまだ動いている時におもちを手ですくい上げるように取り上げ、もち取り粉をふった台の上におきます。
つきたてのおもちはまだ熱く「あちっ、あちっ!」と言いながら転がして粉をまぶし、2つに分けます。
相川地区の上田美和子さんの手さばきは、ほれぼれするほど美しかったです。
美和子さんが、おもちの端を内側へ内側へ小さく折りたたみ、たたんだ先をきゅと握ってできた丸いぷくんとしたおもち。それを「手刀(てがたな)」で切り、ころんと転がす。それを近くの人が受け取って、手のひらの中でなでるようにころころと、まあるいおもちにしていきます。
美和子さんが手刀で切ると、切れ目のないきれいなおもちになるのです。
それはまるで魔法のようでした。
いろんな世代の人たちがおもちを丸めます。きっと昔から大人たちは、子どもたちに働く姿を見せることで、地域との関わりかたやその季節の仕事を伝えて来たのでしょう。
こちらはお土産用のよもぎもちを作っています。このよもぎは春に新芽を摘み、重曹を加えて茹で、細かく切って冷凍しておいたもの。話に花を咲かせながら、手はいつも動いているお母さんたちです。
よもぎもちにあんこを包んでいるのは川田絹子さん。おもちにあんこを包み込み、きゅ、と握ってちぎる。おもちを置くときに上から手のひらで優しく抑えると、その時にはもう、まあるいおもちの形になっている!見事!
丸めたおもちを違う部屋へと運び、時々裏返しながら冷めるまで待ちます。
赤で「祝」と書かれた袋に一つ一つ入れ、口をテープでとめていきます。
そして次の日…。
できたおもちは次の日の「もちまき」で、次から次へと空を飛び、あっちへこっちへ転がります。(ちなみに、飛んで来たお餅がおでこに当たるとめっちゃ痛いです!)
子どもたちも大人たちも夢中になって拾い、持参した袋に入れていきます。
「拾えたかね?」と小さな子の袋をのぞいて、自分のおもちをいくつか入れてあげるおじいちゃんやおばあちゃんがいます。もちまきの時にはいつもどこかで見られるその光景は、なんだかあたたかい気持ちになります。
このおもちはこれからの季節、お鍋にうどんにお味噌汁に入れたりと大活躍。冷凍しておくと長い間楽しめます。
収穫したもち米を蒸し、おもちをつく。みんなと顔を合わせて、つきたてのおもちを頬張ったりしながら笑い合う。
今年の収穫に感謝し、お互いの一年間の農の仕事をねぎらうこのいとなみは、ずっと昔から楽しみのひとつでもあったのだと思います。