こぼれ種が発芽してそのまま育つ野菜を、地域の人たちは「ひとりばえ」と呼ぶ。
人間の力を借りずに、野菜が自力で生えてくるからそんな名前なんだろうと推測するけど、
高知に来る前は聞いた覚えがないので、地域限定の表現かもしれない。
笹のいえでは、その辺で種を選別したり、食べ終わった野菜をポイっとすることがあるので、そのまま種が残り、
意外なところで意外なものが育っていたりする。
草の中で見つけた小さな苗は、何科の野菜かくらいは見当が付くけれど、品種まではわからない。
そういえば、去年この辺で傷んだトマトを捨てたな、とか、スイカの種を飛ばしたな、とか遠い記憶を辿る。
手塩に掛けて育てた野菜たちが虫や病気で元気が無いときでも、
雑草に囲まれる厳しい環境で逞しく育っていくひとりばえは、生命力に溢れ大きく育つことが多い。
この環境に適した遺伝子を持っていそうだから、種を採っておいて翌年に蒔くこともある。
棚に蔓をスルスルと伸ばしたかぼちゃのひとりばえが実をつけはじめた。
形はバターナッツみたいだけど、色はロロン(かぼちゃの品種)みたい。味はどうかな。
交雑が珍しくないひとりばえにはこんな楽しみ方もある。