「君の名は」 新海誠 角川文庫
2016年に大ヒットした映画の小説版。
映画が非常に有名なため、物語についてはここで紹介するまでもないのかもしれませんが… 。
映画でストーリーを知っていても、文字で見ると想像の分だけ表現の幅が広がるので、また違った印象を受けることがあります。まだ映画を観られていない方にはもちろんのこと、映画は観たけど小説はまだ…という方にも是非。
都会に憧れる田舎町の女子高生・三葉と、東京で暮らす男子高校生・瀧。
それぞれが自らの生活に葛藤しながら生きる中、互いに夢の中で入れ替わるという不思議な現象が起こり… 。ただの男女の純愛物語という感じではなく、彼らのまっすぐな強い意志や すれ違いによる切なさを、現実と非現実の狭間で鮮明に描いているのが、僕にとって大好きな物語である理由のひとつです。
物語の中で個人的に注目してほしいのが、舞台として出てくる糸森町(ヒロインの住む町)が土佐町と どことなく似ている点です。 湖のほとりにあり、周囲を山々に囲まれた小さな町。 町全体に防災無線が整備されていたり、唯一のコンビニが24時間営業でなかったり、少し癖のある方言が使われていたり。
また、田舎町ならではの伝統や人間関係など、町の情景が克明に描かれていて、都会に憧れるヒロインの目線でイメージしやすいかなと思います。 男女が入れ替わるという壮大なファンタジーではありますが、この町でもどこかで…、だれかと…。そんな素敵な作品です。
式地涼