「キャベツと白菜、畑にあるけど、持っていく?」
大根の塩漬けが終わったあと、智恵さんと一緒にもうひとつの畑へ向かいました。
わらでできている家のようなものは「わらぐろ」という名前の「冬野菜の囲い」なのだそうです。智恵さんの畑には他にもいくつか「わらぐろ」があり、冬の間、他の人の畑でもよく見られます。
このわらぐろの下には何があるのでしょう?
「里芋を貯蔵しちゅうが。寒さに耐えられるようにここへ囲うちゅうが。埋めてあるの。シビたりせず種芋を貯蔵しておいちょける」
収穫したまま寒い所に置いておくと、確かにシビて(痛んで)くる里芋。もったいないことをしたなあと、今まで何度も思ったことがあります。
「里芋は子どもとひっつけて保存しておく。親と離したらいかんが。離したらいかんぞね。春になったら子が芽を出してね、親は食べる。『ご苦労さん、子どもを守ってくれてありがとう』って言ってね」
畑の奥にはたくさんのにんにくが育っていました。
「種が余ったきね、どこでもまいちょけと思って…。まきすぎたね」と笑いながら収穫する智恵さん。
にんにくの葉は豚肉と一緒に炒め、塩コショウするだけでとっても美味しい。
「収穫したあと、根っこを水につけちょいたら1週間くらいは大丈夫。ネギがわりに使ってもよし!鍋に入れてもよし!」
畑の片隅にあったもみ殻。その中から頭を出しているのは…。
「りゅうきゅうよ。冷やいき、もみ殻であっためてやりゆう。根っこが痛まんように」
ああ、房子さんも、久代さんも、畑のりゅうきゅうに、もみ殻をかけていました。みんな同じです。
「生活の知恵よね。受け継いでいけたらいいけんどね。若い人はどうかね…。仕事で忙しいきねえ」
智恵さんはそう言いながら、キャベツや白菜をひとつずつ、新聞紙でくるりと巻いて持たせてくれました。
「畑に足音を聞かせてあげなさい」
以前、誰かに言われた言葉を思い出しました。
智恵さんの畑が智恵さんの足音を聞き、智恵さんとおしゃべりをし、応えていることが、じんわりと伝わってくるようでした。