「夜を乗り越える」 又吉直樹 小学館
明治・大正・昭和初期の時代の文学、近代文学は人間の苦悩をとことん突き詰め、純粋さや隠された邪悪さにどんどん落ち込んでいくような内容に刺激され、自分もいっぱしの読者になって文学者の深さに共鳴できた気がして、次々と読んでいった高校生の時代がありました。
特に太宰治の本はほとんど読んだと思います。太宰にはまるのは若い頃の“はしか”のようなものらしいですね。
どんな内容だったのかほとんど覚えていないのは「恋に恋する」ように「文学に恋していた」のかなと思います。
直木賞作家でお笑い芸人の又吉直樹さんは、多感な子どもの頃、自分のことが全くわからず、
『明るい/暗い/強い/弱い…、どちらにもふりきれない、そしてそんな話ができる相手もいない、ひとりで考え、頭の中で考えがめぐるばかりで答えが出ません。変な人間に生まれてきてしまった、もうどう生きていっていいのかわからない…。
でも本に出会い、近代文学に出会い、自分と同じ悩みをもつ人間がいることを知りました。それは本当に大きなことでした。本を読むことによって、本と話すことによって、僕はようやく他人と、そして自分との付き合い方を知っていったような気がします』と書いています。
この本を紹介して読んでくださった方は全員「とても共感できた」と喜んで感想を言ってくださいました。
機会があればぜひ!おすすめの一冊です。
藤田純子