うちの軒先にはいろんなものが干される。
日替わりで掛かるのは洗濯物だが、季節によって変化する干物(ほしもの)がある。
特に雨が少なく、空気が乾燥する晩秋から冬の間は、天日干しのベストシーズンだ。
11月。大豆を株ごと収穫してきて、ある程度まとめてから竹竿に吊るす。乾燥してくると、さやがパチパチと音を立て、丸々とした大豆が弾け出る。足元に転がる豆を見て、そろそろだなと脱穀作業をはじめる。
雨の降った次の日、立て掛けてある原木から顔を出す椎茸。
採りたてを調理してももちろん美味しいが、乾燥させたら旨みがギュッとなって、驚くほど美味しくなる。天日である程度乾燥させてから、薪ストーブの近くで仕上げする。どんこは保存が効くし、出汁としても欠かせない食材。食卓には一年中無くてはならない存在だ。
干柿は子どもたちのおやつや料理の甘みとして大活躍する。冷たく乾燥した冬の風にさらして柿を美味しくするのだが、今冬は例年に比べて暖かい日が多く、待てど暮らせど寒くならずに難儀した。気温や湿度が高いと吊るした柿にカビが来たり、虫がたかったりして、傷んでしまう。かと言って、いつまでも木に生らせておくと、鳥や獣たちに食べられたり、実が熟れすぎて干し柿には不向きだ。ギリギリまで待って、少し寒くなってきた時期にそれっと収穫し、皮を剥いて干した。
その後しばらく寒い日が続き美味しい干柿まであと少し、というところで、また暖かくなってしまった。結局途中で干すのを断念し、冷凍庫に保存した。
大根が大量にあるときは、自家製沢庵を作る。二本ひと組になるように葉っぱを縛って、軒先に干す。適度に水分が抜けて全体がしんなりとしてきたら、樽に並べる。塩とぬかを入れ、重石をして、一二ヶ月待つのが一般的な作り方。うちの場合は、自家製の柿酢と砂糖を追加して、「なんちゃってたくあん」にする。これなら一日二日で水が上がり、食べられる。
木で柚子が黄色く熟すころ、収穫したものを使って「ゆべし」を作る。
ゆべしと聞くとクルミなどを使った餅菓子をイメージする方が多いが、うちで作るのは別のもの。
柚子の中身を取り出し、味噌とナッツや胡麻などを混ぜたものを詰めて蒸し、冷めたら和紙などで包んで干す(写真)。二週間後くらいから食べられ、最初は柔らかく柚子の香りもフレッシュな味わいが楽しめる。数ヶ月経つとさらに水分が抜け滋味深い風味になる。スライスすれば、ご飯や日本酒と良く合う珍味だ。
それから、茹でた(蒸した)サツマイモを薄く切って乾燥させた、ほしかも作りたい。寒い間にあれも干したい、これも軒先に、と欲が出る。
今シーズンは、いつ冬が来たの?というくらい暖かい日が続き、そのまま春が来たという印象だ。例年なら一番寒さの厳しい2月になっても気温が高く、過ごしやすい日が多い。それはそれでとてもありがたいことだが、寒い季節には寒いからこそ美味しくなるもの、うまくいくことがある。
*子嶺麻流「なんちゃってたくあん」作り方