土佐町森地区は、ざっくりと説明するならば樫山・南泉山・ワレイ山に囲まれた盆地である。もっとも私の個人的見解であるが…。
私の実家から見える樫山は、扇方をした穏やか極まりない平面的な山である。
この樫山は私にとって天気予報のようなお山であった。夏休みになると川へ泳ぎに行く前に必ず眺める、けぶったように見えれば、1時頃からかなりの確率で雨!用意した浮き輪・バスタオルの登場は今日はなし、明日のお楽しみである。
春と秋は何かというとワレイ山へ登った。(未だにこの山の漢字がわからない、和霊かと勝手に考えている)
急峻なくねくね坂を抜けるとやがてなだらかな尾根沿いの道、広葉樹からこぼれてくる太陽に幸せを感じつつ先を目指す。少し開けた所が目指す山頂のすぐ下、右に一気に駆け上がる。征服感満載で一人前に腰に手をあてて森の集落を見下ろす。心潤す瞬間である。
南泉山へは現在でもトラウマとなっている板の一本橋「はしとこ」を渡らねばならなかった。冬は夕日に美しく照らされ、てっぺん近くの家は神々しいばかりの光に包まれていた。屋号のように呼んでいたのは「そら」。
現在は木々が生い茂りワレイ山を下から望むことはできない。どこがそうだったのかも断言できない。夕日を独り占めしていた「そら」の家にも前ほどは日が当たらないそうだ。
樫山だけは今でもどこに居ても視界に収めることができる。見る角度により全く違った山の雰囲気となるが、安心して眺められる唯一の山かもしれない。
樫山近辺から森中学校に自転車通学していた級友達を時々思い出す。