「ニッポン 最高の手しごと」 テリー・エリス✕北村恵子 光文社
土佐町で織物を織っている友人、上土井恵子ちゃんの作品を見せていただく機会がありました。
今まで織物を織っている友人に出会うのは初めて。タテ糸とヨコ糸を「経糸、緯糸」と表すことも初耳というくらい織物初心者の私にとって、彼女の織物の説明を聞き、交じり合う織り目の面白さにすっかり魅了されました。そこで私が発見したのは、織物の裏側にその作者の「素」の姿を感じられることでした。
実は煎餅も裏側に、いろんな情報が表れます。手焼きなのか、機械焼きなのか。職人がどのようにタネ(生地)を乗せたか、まで…。 表向きのよそゆきの顔から、裏側の「すっぴん」をみせてもらうことで、より一層その作品を身近に感じられます。
手織りならではの不均一な織り目と草木で染めた優しい色合い、紡ぎ糸ならでの太いところと細いところのある、決して機械にはだせないそのリズムに温かみと人間味を感じて愛おしくなります。それは人間の手でつくりだされた民藝や工芸のすべてにいえることだと思いますが、その歪さ(いびつさ)こそ人間そのものの姿であり、そこに心が宿り、美しさを感じます。
著者のテリー・エリスさんと北村恵子さんのお二人が日本各地のものづくり作家の工房を訪ねてゆく著書。作品の裏側にある物語を聞き、時代やその土地の文化やバックグラウンドを調べ、それが生み出される現場に足を運ぶことで、強い「存在感」を放つ本物を見分けるお二人のものを見る目、美しさのものさしには感銘を受けます。