「火垂るの墓」 野坂昭如 徳間書店
はじまりの舞台は昭和二十年の神戸。何年にもわたって戦争を続け、苦境にたたされた日本でひっそりと紡がれた兄妹の物語。有名すぎるほどに有名なこの作品を私はこれまたうすぼんやりとしか知らなかった私は、息子が小学校の図書室から借りてきてやっと今回ちゃんと出逢いました。
戦争なんて、過去の話。どこか遠い国の話で、私には無関係。恥ずかしながら、そんな意識があったのだと思います。けれども、この度この物語を息子と娘に読み聞かせながら途中でぽろぽろ涙が溢れて、ついには読むのも詰まるくらいに苦しくなってしまいました。子供達が困惑するほどに…。(主人公の兄と妹が、わが息子と娘にビジュアルが似すぎていることも感情移入してしまう大きな要因でもある。)
最初から最後まで、どこをとっても悲しくてつらい。お兄ちゃんの清太が、必死に守ろうとした妹の節子。けれどもその願いも虚しく節子を失い、性も根も尽きた清太の死に様は悲しみをこえて戦争を引き起こした大人達に怒りすら覚えます。
実際、今この瞬間も戦争をしている国があるということ。今の自分にできることはなんなんだろうか。夏休み、息子と娘を原爆資料館に連れていくことからはじめようと思います。