分類キク科ヤブタビラコ属 越年草
分布日本では本州、四国、九州に分布
概要花期は3~5月
撮影2024年4月/土佐町田井
コオニタビラコは水田や畔に生育します。
草丈は5~15cm、花の直径が1cmほどの小さな植物ですが、明るい黄色の花が辺り一面で一斉に咲き誇る姿は見応えがあります。
田舎の春の風物詩の一つなのですが、毎年出会える光景というものでもありません。田んぼを耕耘する時期はまちまちで、花が咲く前に耕してしまうところも結構多くあります。
「田平子」というのは田の面にロゼットの葉が平たく張り付いた形を述べたものだそうです。
葉っぱには茎の基部から出る根生葉(根出葉)と茎の途中から出る茎葉の2種があり、コオニタビラコの葉はほぼほぼ根生葉だけです。
この葉が地面からあまり立ち上がらず四方八方へ広がる様子が「田平子」なのです。
さて昔々、奈良時代から今に伝わる春の七草の一つにホトケノザがあります。
ところがそれは今の私たちの周りにあるホトケノザ(仏の座)ではありません。当時のホトケノザは、いわゆる「田平子」を仏様が座る台座に見立ててそう呼ばれていたコオニタビラコのことだったのです。
現在のホトケノザはシソ科オドリコソウ属の、早春から秋ごろまで紫色の花が見られる植物です。
サンガイグサ(三階草)という別名を持ち、段状で階層的につく葉が仏の台座に似ていることに由来する名前です。
七草の時期には、野にあるセリ、ナズナ、ゴギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ(コハコベ)、ホトケノザ(コオニタビラコ)はどれもまだ花が咲いていません。花のない草の名前を同定するのは難しいですが、コオニタビラコの葉っぱには独特の特徴があります。田んぼへ行って目を凝らして探せば意外と見つかるかも知れません。
不思議なことに、タビラコと名のつく植物は他にもあります。
・コオニタビラコと同属のヤブタビラコ(藪田平子)
・コオニタビラコに似た花を咲かせる大形のオニタビラコ(鬼田平子)
・コオニタビラコとは無縁のムラサキ科のキュウリグサの別名がタビラコ(田平子)
・ムラサキ科のミズタビラコ(水田平子)
ややこしいホトケノザとタビラコについてどう解釈したらいいものかと、闇雲にネット検索していたところ「シソ科のホトケノザをサンガイグサ、キク科のホトケノザをタビラコ、ムラサキ科のタビラコをキュウリグサまたはニセタビラコとよぶことにした」という牧野富太郎博士の見解に接することができました。
ホトケノザがコオニタビラコになり、まったく別の植物がホトケノザになったその理由までは分かりませんが、これで一先ず腑に落ちました。