ベンチの天板と脚を組み合わせる最後の工程は、池添篤さんと小笠原啓介さんが担当していました。
ベンチの天板は杉、脚はヒノキを使っているそうです。
「杉は柔らかく、ヒノキは香りがあって色もある。それぞれ良し悪しがあって、だから全部生きてくる。使いようやね」と話します。
「板には板目と柾目があって、板目は、木目がたけのこ状に伸びた感じに見えるきね」
たけのこが伸びていくように木も上へ上へと育つ。木目をよく見てみると、ベンチの脚は全て、たけのこ状に伸びた木目の先が上になっています。
「柱は木が立ってるように使うんで。反対に使ったら逆木といって強度が弱い。人間で言ったら逆立ちしてるみたいなもんよ」
製材された板や材は山で育った一本の木からできている。木が育っていた状態と同じように使うことでその木のよさが最大限に活かせる、とのこと。
なるほど!
*板目と柾目について
池添さんと小笠原さんは続けて教えてくれました。
「例えば机や椅子の表面、触ったりする部分は木表が基本。木裏は木目がめくれる感じ、ちくちくするき」
「木表の方が木目が綺麗やきね。でも木表を上にすると真ん中がへっこむ。そこに水が溜まったりしないようにするのであれば敢えて逆にしたりするけど、怪我の元になるき、やっぱり木表を上にする」
だからベンチの天板には、強度があって木目も綺麗な板目を木表で使うのだと話してくれました。
「木は生きちゅう。これから使っていくうちの木の反り具合やどうすれば長持ちするかを考えて、その木の一番いい使い方を考える」のだそうです。
*木表と木裏について
手際良く、お二人の息もピッタリ!
小笠原さんが教えてくれました。
「木の赤身は腐りにくい。シロアリは白い方を食べるんで」
白い方とは「白太」と呼ばれる辺材。シロアリが食べるのはこの「白太」の部分なのだそう。ここはどんどん成長していく柔らかい部分なので食べやすいのでは?とのこと。
*赤身と白太について
「お宮へ行くと、大工は拝むだけやない。お宮の建て方や木をどうやって組んじゅうんやろう?って思って見てる。見るところが違う」
「本当に面白い。一つ知ると見え方が変わる」
と池添さん。
とにかく驚いたのは、職人の皆さんの手際の良さと無駄のない動き。普段一緒に仕事をすることはなかなかないそうですが、この阿吽の呼吸はどこから生まれるのでしょう。
どのようにしたら効率よくいいものを制作できるのか?この現場の工程と段取りを考えたのは、建具職人である山中晴介さんでした。
「晴介がいたからこそ」と職人の皆さんが話していましたが、建具職人ならではの精密さに加え、木に対する深い理解と知識、今までの経験、プロ意識、熱き職人魂を持ち合わせた職人さんがいてくださったからこそ、現場が成立しているのだとひしひしと感じました。
*ベンチを作ってくれた7人の職人さんです。