笹のいえ

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稲刈り

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集落に続く道に面した五畝ほどの田んぼを、今年から借りている。
もともと田んぼだったが、二年間畑として使われたあと、あとを継ぐ人がおらず、僕に声が掛かった。
もう少し米の作付けを増やしたかったので、やらせてもらうことにした。

一年でも米つくりを止めてしまうと、田んぼを元に戻すのに手間が掛かる。
この田んぼもそこここに穴が空き、水を溜めるのに苦労したが、
その後の田植えや草取りは順調で、実りも良く、いよいよ収穫の時期が近づいていた。

夕方から雨になるというこの日、稲刈りをした。

稲を刈り結束するバインダーという機械で作業していると、地主さんがやって来て「はで」の材を出してくれる。

はでとは稲束を乾燥させる物干しのようなもので、地域によって呼び名や構造が違う。
この地域では、木の支柱を立て、竹で数段の干し竿を縛っていくのが一般的だ。
コンバインと呼ばれる大型の機械で刈って、乾燥機を使う方法が主流の昨今だが、
棚田の多い山間では、はで干しもよく見かける。

道沿いにあるので、前を通る人たちが声を掛けてくれる。

「そこはこうやったほうがえい(良い)ぞ」

「こらよう実った」

「えらい(大変な)のに頑張るねえ」

みなさん、田植えからずっとこの田んぼの様子を見ていてくれたみたいだ。
わざわざ車から降りてきて、話をしてくれる人もいる。
そのうち地域の人同士で世間話がはじまる。僕も手を動かしながら、会話に参加する。

予報通り天気は下り坂。空は暗く、雨雲も増えてきた。
いよいよ降るぞ、というころに、はでが完成。
ほとんど休憩も取らず慣れない作業をしたので、疲れた。が、満足だ。

最後まで付き合ってくださった地主さんにお礼を言い、後片付けをする。
その間にも立ち寄ってくれる人が「よくできたねえ」と目を細めてくれる。
まるで、この田んぼが田んぼとして復活するのを待ちわびてくれていたみたいに。

田畑は、お米や野菜を作るだけの場所じゃない。
人が集う交流の場として存在し、地域の中で生きているのだ。

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チャーテ

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今年もチャーテの季節がやって来た!

一般に「ハヤトウリ」と呼ばれるウリ科の野菜です。

ここ土佐町では、粕漬けにしてお土産として販売されていますが、実は万能選手。

漬物にしても良し、煮ても良し、炒めても良し。
すりおろして団子を揚げたり、チャーテの味噌汁は子どもたちの大好物。
わずかに甘みもあるので、玉ねぎ代わりとしても重宝します。

夏の間に蔓がぐんぐん伸びて、秋の気配がするころ花が咲きはじめ、小さな実がつきます。
小さくてもちゃんとチャーテ型なのがチャーミング。

大きくなりすぎなければ、皮を剥く必要がなく、種も食べられる。捨てるところのない、ありがたい野菜です。

採れはじめると、どんどんできるので、どんどん食べます。最盛期には一日バケツ一杯採れることも。
工夫して調理し毎日毎食食べます。おかげでレシピもずいぶんと増えました。

生りはじめの時期ならお裾分けしても喜んでもらえるので、柔らかい小さめの実をせっせと取っています。

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たねとり

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笹の母屋の前には、田畑合わせて一反くらいある。そこでお米や野菜を育て収穫、季節の恵みをいただいている。

種はなるべく自家採種している。
うまく採れなかったときは知り合いから分けてもらったり、どうしてもというときは購入することもある。
千葉から持ってきた落花生やキュウリなどは五年以上、
高知で出会ったモチキビや里芋などは三シーズンくらい種を採っている。

昔は、育った野菜などを選抜し、種を採り、次の年にまた栽培することが当たり前だった。
同じ場所で何年も種を採っていくと、その地域の気候に適した野菜や米が育つようになる。
また病気などにも強くなると言われる。

しかし種を採るためには長い時間が掛かったり、交雑しないような工夫が必要で、一手間も二手間も掛かる。
稼働率を考えれば、種を購入したほうが効率的だ。

それでも近所にはいまだに自家採種を続ける方々が多い。

種を購入しなくて良いという経済的な理由よりも、
昔から継いできた種を絶やしたくない次に繋げたいという気持ちが大きいのかなと想像する。
いや、もっと本能的な行動なのかもしれない。

土佐町にやって来て最初の年、地元在来の大豆をつくりたくて、近所のおばあちゃんに種を分けてもらった。
「品種はなんですか?」と聞くと、「名前は知らん。大豆は大豆よ」と言う。
その答えに心の底が温かくなったのと、なんだか仲間に入れてもらったような気がして嬉しかったのを覚えてる。

 

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笹のいえ

笹の夏休み(後編)

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僕たちの暮らしで大切に思っているのは、「食」。

イベント中の食材は基本的に、目の前の田畑から採ってきたものや地元産野菜、それと自家製常備菜や発酵調味料だ。
魚が釣れれば、それをさばいていただくこともある。

身体と環境は一体であると考える「身土不二」をベースに、より身近で栽培されたもの採れたものを摂り入れる。
カレールーやそうめんなど、市販の商品を購入するときは、シンプルな原材料で生産された商品を選んでいる。

調理するときは、食材を可能な限り丸ごと利用する。
「一物全体」は、全てのものは全体でバランスが取れている、という考え方だ。
だから、皮も根っこも工夫して食べる。結果、生ゴミはほとんど出ない。

出来上がった料理は自分が食べられる分だけ、食器によそう。
嫌いな野菜は無理に食べなくてもいい。食べたい、美味しい、と感じるものを食べる。
いのちに、作ってくれた人に、感謝していただく。

近くで採れた野菜を料理し、食べて、消化し、それが身体の栄養となる。
トイレで出したものは堆肥として土に還し、それがまた野菜を育てる。
そんな循環を「食べること」で体感していく。

子どもたちは、遊んでいるとき以外ほとんど家事をしている。
そして、食事に費やす時間が一番多い。
準備から調理、片付けまで、一日三食食べることがこんなに大変だなんて!
あれ?普段家では誰がしてるんだっけ?

そんなことも、笹の日々で見えてくるかもしれない。

最終日。笹の暮らしはどうだった?と聞くと、
「川遊びが楽しかった」「食事が美味しかったけど大変だった」「トイレ掃除が嫌だった」
などなど、いろんな答えが返ってくる。
そして、どの顔も笑ってる。その表情を見て、あぁ今年もやって良かったなとホッとする。

あんなことを経験させたい、こんなことさせてあげたい、と僕の足りない頭でいろいろ考えるけど、
その枠を超えて子どもは体験し理解していく。
ごちゃごちゃ言葉を並べるより、彼らの好奇心を思う存分発揮出来る環境を作り見守っていればいい、そう思いはじめてる。

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笹のいえ

笹の夏休み(前編)

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夏休みに合宿型の子ども向けイベントを開催している。

数日間笹のいえに泊まりながら、日中は自然豊かなフィールドで遊び、
調理や掃除洗濯、お風呂焚きなどの家事も子どもたちがこなしていく。

このイベントの約束はひとつ。
「自分たちで決める」こと。

イベント初日。
スケジュール表とアクティビティ名や料理名の書いてある駒を用意し、子どもたちに選んでもらう。
いつ何をして遊ぶのか、何を食べるのかを子どもたちが考え、想像し、決めていく。
スタッフたちは最低限のアドバイスでサポートする。
「朝食にパンを食べるなら、前の日の晩に生地を捏ねておこう」「この日は一日中川遊びだからお昼はお弁当にしようか?」
など、子どもたちの意向を第一に、時間を有効に使えるよう調整する。

二日目以降、日中はひたすら遊ぶ。

泳いだり、釣りをしたり。地元の遊びのプロたちが講師として参加することもある。
ラフティングやSUPは毎年子どもたちに人気のアクティビティだ。またアートワークなど物つくりの時間もある。

遊び以外では、笹の暮らしを実体験する。

釜戸や五右衛門風呂で火を起こしたり、トイレはコンポスト、洗濯機は二層式、、、
自分の家とは違う、笹の「むかし暮らし」だ。

朝夕にはタスクと呼ばれる家事がある。掃除や食事作りなどをグループに分かれて行う。
最初は緊張気味の子どもたちだが、すぐに慣れる。
火起こしは好きな子が多く、お手伝いを頼むとすぐに手が挙がる。
積極的に行動する子、嫌嫌やる子、集中力も子どもによっていろいろ。
スタッフは声掛けはするが、あまりうるさく言わないように気をつけている。

たぶん、家で言われていることだろうから、高知の山奥に来てまで同じこと言われたくはない、
僕が子どもならそう思う。それより、それぞれのやりたいことをやればいい。
もし誰も料理をしなければご飯が食べられない、洗濯をしなければ明日着るものがない、
ただそういうことだ。
でも、みなお腹が空くから包丁を握るし、きれいなトイレを使いたいから掃除をする。

夜は花火や肝試しなど、キャーキャーワイワイ言いながら、あっという間に就寝の時間。

初日は、たいてい興奮していてすぐには寝ない。
夜通し起きている子もいるし、夜明け前から動き出す子も。

そうやって、子どもたちが主役の「笹の夏休み」を過ごしていく。

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今日の保存食

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大好きなきゅうりに続き、

夏の食卓を賑わせてくれたトマトが「もう赤くならないから」と、とうとう撤収された。

赤いトマトは半量になるまで煮詰めて瓶詰め、脱気して保存。

これで寒い冬でもトマトソースのパスタが食べられる幸せ。

でも、いつも困ってるのが撤収と同時にたくさん出てくる青トマト。

もちろん追熟させたら食べられるのですが、追熟は大きくないとあまりおいしくもない。

青トマトは、小さいのも傷つきも虫食いもたくさん出るから、早く料理したいものも多い。

なのに、青いトマトは子どもにもあまり人気がない。

ピクルスやてんぷらはわたしも飽きてしまった。

 

そこで今年は青いトマトソースや、青トマトでチャツネを作ってみた。

トマトソースは赤くないだけでトマトソースの味になったから

もちろん食べてくれるかと思ったけれど、どうも子どもは見た目だけで食べない。

チャツネは香辛料のおかげで食べてもらえた。

でも今度はチャツネを使ったカレーを作ってみなくちゃいけない。

お料理ってエンドレスですね。

まだまだ我が家では夏野菜が楽しめそうです。

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同じ釜の飯

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うちの保温ジャーにはいつもご飯が入ってる。

突然お腹すかせた人がやって来ても、ご飯と漬物くらいはすぐ出せる。
畑から野菜を採ってくれば、温かいお味噌汁も作れる。

笹のいえに興味があるという人に、僕は「ご飯食べにおいで」と誘う。
うちは羽釜でご飯を炊くから、正真正銘「同じ釜の飯」を食べてもらう。
出てくる食事やその雰囲気、一緒に食べ、話をすることで僕らの暮らしを理解してもらえると思うから。

友人知人が来るとき、仕事の打ち合わせのときも、食事の時間に合わせてもらうことが多い。
うちの子どもたちはまだ小さいから、大人だけで落ち着いて話し込んだり、長時間ミーティングすることはまだできない。
でも、いろんな人が来て、子どもたちも一緒にご飯を食べ、おしゃべりすると、笹のいえに気持ちの良い風が吹く。

だから、うちのジャーにはいつもご飯が入ってる。

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今日の保存食

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人生が十人十色なら、梅干しの作り方だって十人十色。

赤紫蘇を入れる人、白梅が好きな人、干さずに梅漬けの人、お塩にこだわる人、

塩分を控える人、カビさせたくないからと塩分を強くする人、消毒をまめにする人、

梅を選別する人、小梅が好きな人、丁寧に大きな梅を漬ける人。

「梅干しを作る」だけでもたくさんのやり方の中から

その人それぞれに合った選択をしていくことになる。

梅干しを自分で作るようになってまだ10年、

たった10回の経験の中から自分に合うやり方を選んできた。

 

初めは母に言われた通り、6月に赤紫蘇を買って一緒に漬けていたけれど、

そのうち自分の家の赤紫蘇を使いたくて買うのをやめた。

9月まで大きくならない野生(?)の赤紫蘇を待つと

梅酢は赤くできても、結局梅は白梅になる。

初めは土用に干さなきゃ!と張り切っていたけど、

晴れた時に干せばいいと、時期は気にしなくなった。

それこそ天気や仕事の関係で9月に入ってから干した年だってある。

 

保存食は作るのに時間がかかるかも知れないけど、焦らなくても

待ってくれる安心感がある。

すごくわたしに向いてるな、と思う。

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笹のいえ

かみとしも

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地元の方々との会話の中で、例えばある場所を説明するのに「東西南北」が登場することが多々有る。

「◯◯さんく(家)はスーパーの南側よ」とか「あこ(あそこ)の北に⬜︎⬜︎があるろ」とか。

僕は自他共に認める方向音痴で、普段どっちが北でどっちが西でなんて意識してないので、上記のように言われると、
空を見上げ、あそこに太陽があるから東はこっちで、、、と頭で考えることになる。
慣れるまでに時間が掛かるけど、そして、方向音痴は治らないけれど、ゲームのようで楽しい。

もうひとつ面白いな、と思うのは、「かみとしも」という表現。

「上と下」つまり、川の「上流と下流」という意味だ。

「今朝△△さんが国道を車で下に行っちょったけど、もう帰ってきたろうか」「上では雨がどっさり降りよった」

その度に僕は川の流れを思い出し、ああ、あの辺か、と想像する。

地元の方にこの話をすると、「へえ〜そんなこと考えたこともなかった」。
当たり前過ぎて、という感じだった。

自然と、そして川と密接に暮らすこの地域ならではの方向感覚が面白い。

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梅干し

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今年の夏は、数日間スカッと晴れ!というタイミングがなかなか見つけられず、
土用のころからずっと頭の片隅で気になっていた梅の天日干しがやっとできた。

梅を網戸の上に並べながら、そうか梅を干すから梅干しと言うんだな、なんて当たり前のことに納得する。

梅に限らず、天日で干すと食材が劇的に美味しくなる、と頑なに信じている妻と僕。大量に採れたものやたくさんいただいたものを干す。

 

例えば、食べきれないスイカを切り、干して水分を飛ばし冷凍すれば甘みを増したスイカアイスになる。

例えば、川魚はヒラキにして塩水に浸した後一日干し、炭火で焼けば最高の酒のアテになる。

大豆や米、小麦も干して乾燥させれば虫やカビが出にくくなり保存性も良くなる。

だから、とにかく干すのだ。

その他にも、柿大根隼人瓜落花生筍小豆若芽布団等等。
以前友人に「笹のいえはいつ来ても何か干してあるね」と言われるくらい、うちでは軒先やシートの上で何かが干されている。

お天道様はこんな素敵な力を毎日惜しみなく僕らに提供してくれてる。

ソーラーパネルがなくとも、自然エネルギーを利用できるのだ。しかもタダ。

さあ干しましょう!

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